メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

梶山章

Live Groovy Nights 2003 / Goldbrick (2003)

0481Live Groovy Nights 2003









梶山章(G)と森川之雄(Vo-Anthem)によるユニットGoldbrickのライブ・アルバム。1stアルバムのリリースと同じ年、2003年6月1日渋谷ON AIR WESTでの公演が収録されています。バックのメンバーはスタジオ盤と同じく、永川敏郎(Key-Gerad)、瞬火(B-陰陽座)、斗羅(Ds-陰陽座)となっています。

まず印象に残るのは、なんと言っても梶山章の圧倒的なギター・プレイ。「ライブでも凄い」のではなく「ライブでこそ凄い、ライブのほうが凄い」ということです。前にも書きましたが、やはりリッチー・ブラックモア流のギタリストとしては世界トップクラスだと痛感します。そういった評価が本人にとって良いことなのかどうかは分かりませんが。ギターの素晴らしさが際立っているのに対して、ライブだとどうしてもボーカル、バックの演奏の弱さが気になります。ここはこう歌ってもらいたい、こう叩いてもらいたいと、歯痒さを感じてしまうのです。それから、楽曲のJ-POP(歌謡曲)っぽさがスタジオ盤ではむしろ好ましかったのに、ライブではややチープ感じられ、これも気になってしまいます。カバーの"Drinking With the Devil"と"Speed King"が一番カッコいいというのは悲しい。なんとも複雑な感慨が浮かぶアルバムでした。

 評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Introduction~Striking My Heart
02. One by One
03. Silver Shine
04. Don't Let Me Down
05. Prelude~Sweet Pain
06. Never Forget
07. Parametric
08. Flame of Love
09. Groovy Night
10. Drinking With the Devil
11. Speed King
12. Believe in Love
All music written by Akira Kajiyama, all lyrics written by Yukio Morikawa
Except #10 by R. Blackmore - J. L. Turner, #11 by R. Blackmore - I. Gillan - R. Glover - J. Lord - I. Paice

■Personnel
梶山章 - Guitar
森川之雄 - Vocals

永川敏郎 - Keyboard (Gerad)
瞬火 - Bass Guitar (陰陽座)
斗羅 - Drums (陰陽座)

Producer - 梶山章、森川之雄

ライヴ!~グルーヴィー・ナイツ2003
ゴールドブリック
ビクターエンタテインメント
2003-11-21


Slam / Joe Lynn Turner (2001)

0444Slam









ジョー・リン・ターナー(JLT)の7枚目のソロ作。カバー企画盤を除くオリジナル・アルバムとしては5thアルバムとなります。ギターは梶山章のみ、楽曲も基本的に2人の共作のみ。念願だったJLTと梶山章の完全コラボレーションが実現した作品です。他のメンバーは、エリック・ツァー(B)、ケニー・クラム(Ds)、ポール・モリス(Key)、そしてプロデュースはボブ・ヘルドとお馴染みのラインナップとなっています。

JLTと梶山章ががっぷり四つに組んだ作品ということで、中身は予想通り全曲がDeep Purple、Rainbowスタイルの伝統的なオルガン入りハードロック。ただ、期待が大きすぎたのか、期待通り以上でなかったということなのか、何故か物足りなさを感じてしまいました。普通にDeep PurpleかRainbowの新作か未発表音源集を聴いているような印象なんです。ミドル・テンポの似通った曲が多いのも気になります。また、梶山章のギターも、本家リッチー・ブラックモアの特徴を抽出したような感じなんですが、バリエーションに乏しい印象です。リッチーはいわゆる「様式美」的なフレーズの他に、意外にブルージーだったり、アラビア風フレーズを入れ込んだり、はたまたボトルネックを使ったりと1枚のアルバムで色々やってるし、音色的にも変化に富んでいます。本作では一聴して分かる典型的なリッチー・スタイルではあるものの、それが逆にカリカチュアっぽい印象さえ感じさせるものになってしまっています。もちろん、歌唱・演奏面でも、楽曲面でも、その水準は非常に高いものがあります。録音も楽器や声が生々しくて好みの音です。JLTの他のアルバムや、梶山章の作品を聴かずに、いきなり本作を聴いたなら「すげー!」としか思わなかったかも知れませんが、なんだか複雑な気持ちです。

なお、日本盤ボーナス・トラックの"Challenge Them All" は、アサヒ・スーパードライのCMソングとして職業的ソングライターによって書かれた曲で、演奏もスタジオ・ミュージシャンによるもの。アルバム本編とは別に制作されたので、サウンドも音質も全く異なりますが、これがまた極上のメロディアスハードで嬉しいオマケです。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Bloodsucker (Turner, Held, Kajiyama)
02. Eye for an Eye (Turner, Held, Kajiyama)
03. Deliver Me (Turner, Kajiyama)
04. Heart of the Night (Turner, Kajiyama)
05. Slam (Turner, Held, Kajiyama)
06. Dark Days (Turner, Kajiyama)
07. Possession (Turner, Kajiyama)
08. Show Yourself (Turner, Kajiyama)
09. Hard Time (Turner, Kajiyama)
10. Evil (Turner, Held, Kajiyama)
11. Always Tomorrow (Turner, Kajiyama)
[Bonus Track]
12. Challenge Them All (Album Version) (Umeno, Himelstein)

■Personnel
Joe Lynn Turner - Vocals
Akira Kajiyama - Guitars
Eric Czar - Bass
Kenny Kramme - Drums
Paul Morris - Keyboards

"Challenge Them All" 
Joe Lynn Turner - Vocals, Background Vocals
Jerry Barnes - Bass
Steve Holley - Drums
G.E. Smith - Guitar
John Allen III - Guitar
Al Fritch - Background Vocals
Vaneese Thomas - Background Vocals

Producer - Bob Held, Joe Lynn Turner
Vocals Produced by Bob Held, Mark Wexler
"Challenge Them All" Produced by Taka Umeno
Executive-Producer - Mark Wexler

Slam
Turner, Joe Lynn
Mtm Music & Publish
2002-12-10

Goldbrick / Goldbrick (2003)

0378Goldbrick









2003年リリースされた梶山章(G)と森川之雄(Vo-Anthem)によるユニットGoldbrickの1stアルバムです。バックを固めるメンバーは、永川敏郎(Key-Gerad)、瞬火(B-陰陽座)、斗羅(Ds-陰陽座)というメンツ。この時期梶山氏はジョー・リン・ターナーに抜擢され曲も書いていましたが、採用されなかった楽曲を自身のソロ作で発表しようということで作られたプロジェクトだそうです。梶山・森川の顔合わせは1998年リリースのRainbowトリビュート・アルバム「虹伝説」以来となります。

楽曲はもちろんDeep PurpleやRainbowの影響下にあるものですが、メロディ・ラインは想像していたよりポップでキャッチーな要素もあり、何とは無しに歌謡曲(J-POP)っぽく感じられるのが面白いところ。お気に入りの曲は#9"Sweet Pain"、メロディに哀愁があって良く出来ていると思います。他の収録曲も概ね佳曲揃いで安心して聴けます。ただ、どこかにも書きましたが、日本人HR/HMボーカリストは上手い人でも苦手に感じてしまうことが多く、本作での森川之雄の歌唱にもやはり若干の違和感を感じてしまいました。一方で、梶山章のギターは相変わらず素晴らしいの一言。フレージングもさることながら、縦横無尽・自由自在に跳ね回るようなリズム感が凄い。それから、ストラトキャスターというギターの素性を知リ抜いているからこそできるのであろう絶妙な音色のコントロール。隅々まで気をつかっていながらも奔放さを感じさせるテクニック。ベタ褒めしたくなりますな。ブラックモア流ギター道というのがあるならば免許皆伝確実でしょう。梶山章のギター・プレイを堪能するだけでも聴く価値のあるアルバムだと思います。

最後に蛇足ながら英詞について。今だに日本のバンドが英語で歌うことに異議があるようですが、これはドメスティックな活動のみを前提とするバンドと、ワールドワイドな市場を意識するバンドを一緒くたにしているのではと思います。結果はともあれ、少なくとも「世界」を志向するなら英詞は必須です。良いか悪いかは別として英語が事実上の国際共通語である以上、また、ロックが英語圏で生まれた音楽であることから、母語・母国語で歌っていたら国際的活動のスタートラインにつくのも難しいでしょう。日本以外の非英語圏でも事情は同じです。Scorpionsがドイツ語で、Europeがスウェーデン語で歌っていたら、あのような世界的な成功が得られたでしょうか。どの国にも、母語・母国語で歌うバンドと、世界に向けて英語で歌うバンドがいる。それは普通のことだと思っています。それよりも、日本人が日本語で歌ってるいるのに、バンド名や芸名が横文字というほうがバカっぽいと昔から思ってるけど。

 評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Introduction
02. Striking My Heart
03. One by One
04. Don't Let Me Down
05. Flame of Love
06. Silver Shin
07. Never Forget
08. Prelude
09. Sweet Pain
10. Piece of Heaven
11. Groovy Night
12. Believe in Love
All music written by Akira Kajiyama, all lyrics written by Yukio Morikawa

■Personnel
梶山章 - Guitar
森川之雄 - Vocals

永川敏郎 - Keyboard (Gerad)
瞬火 - Bass Guitar (陰陽座)
斗羅 - Drums (陰陽座)
黒猫 - Backing Vocals (5, 7) (陰陽座)

Producer - 梶山章、森川之雄

ゴールドブリック
ゴールドブリック
ビクターエンタテインメント
2003-03-21

 

Holy Man / Joe Lynn Turner (2000)

0333Holy Man









ジョー・リン・ターナー(JLT)の6枚目のソロ作。カバー企画盤を除くオリジナル・アルバムとしては4thアルバムということになります。今回はDeep PurpleやRainbowタイプのハードロックをメインとした趣向になっています。参加したギタリストは全部で7人で、それぞれ持ち味の異なるプレイが楽しめます。特に梶山章は全13曲中7曲と、初登板だった前作Under Cover 2 の3曲を上回る大抜擢に応えて素晴らしいプレイを披露しています。また、ギタリストそれぞれが担当曲の作曲にも関与しているのも興味深いポイント。他のギタリストは、ジョー・ボナマッサ、アンディ・ティモンズ、アル・ピトレリ、カール・コクラン、トム・ティーリー、アラン・シュワルツ。リズム隊はベースにエリック・ツァーとグレッグ・スミス、ドラムにケニー・クラム、それからキーボードにはポール・モリスと、JLTのアルバムではお馴染のプレイヤーが主にクレジットされています。

#1"No Salvation"
冒頭3曲は梶山章が参加したRainbowスタイルの曲。オープニングは、リフからオルガンからとにかくRainbowっぽいスピード・チューンで、JLTものっけから飛ばしまくってます。梶山章のギターソロは、トレブリーなトーンと軽やかなフレージングがリッチー・ブラックモアそのまんま。そういう評価が本人にとって本当に良いか悪いかは別にして、素晴らしい演奏であることは間違いありません。

#2"Holy Man"
タイトル・トラックは少しテンポが落ちてヘヴィになります。なんだかRainbowの未発表曲集を聴いていると錯覚してしまいそう。

#3"Anything"
"Can't Let You Go"に似たメロディアスなバラード曲。梶山章のソロが特にエモーショナルで見事だと思います。擦過音などのノイズが聴こえるのも生々しくて逆に強い印象を受けます。

#4"Honest Crime"
#5"Wolves at the Door"
#6"Angel"
ソロ・デビュー間もない頃のジョー・ボナマッサを起用してのヘヴィなブルース・ロックが3曲続きます。考えてみればこれも大抜擢だったのかもしれません。若さに似合わずコクと粘りのあるギターがいい感じです。本作でのセッションが縁となったのか、エリック・ツァーとケニー・クラムはジョー・ボナマッサのバンドのリズム隊に加わることになります。

#7"Something New"
本作の中では異色なファンキーなグルーヴを打ち出した曲。ソロはアンディ・ティモンズ。

#8"Love Is Blind"
#9"Breaking Away"
ここは残念ながら中だるみですね。捨て曲と言われても仕方のない曲が2曲続きます。歌唱・演奏はもちろん文句無しなんですが。

#10"Midnight in Tokyo"
ラスト4曲は再び梶山氏登板です。ヴァース部分でドラムがオカズ叩きまくっているのは"Burn"と同じ趣向。ギター・ソロが無茶苦茶カッコよくて鳥肌立ちます。蛇足ですがこれ、空耳じゃなく完全に「みんなのトーキヨー」って言ってますね。

#11"Babylon"
タイトルから想像がつくように、"Gates of Babylon"を思わせる中近東イメージの曲。期待に違わぬ梶山氏のアラビアン・フレーズに思わず拍手してしまいました!

#12"Closer"
優しく暖かいメロディが印象的なバラード。JLTのボーカルと梶山章のギターが共鳴している感じ。うーん、この二人は最高のコンビだと思わせますね~。

#13"Too Blue to Sing the Blues"
"Fire in the Basement"や"Lazy"を思い出させる超カッコいいシャッフル・ナンバー。ギターはバッキングもソロもとにかく絶品です。梶山章参加曲は全て出来がいいので、いっそ全曲梶山章でいってくれた方が統一感もあってよかったんじゃないかなぁ。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. No Salvation (J. L. Turner, A. Kajiyama)
02. Holy Man (J. L. Turner, B. Held, A. Kajiyama)
03. Anything (J. L. Turner, B. Held, A. Kajiyama)
04. Honest Crime (J. L. Turner, B. Held, J. Bonamassa)
05. Wolves at the Door (J. L. Turner, B. Held, J. Bonamassa)
06. Angel (J. L. Turner, B. Held, J. Bonamassa)
07. Something New (J. L. Turner, K. Cochran)
08. Love Is Blind (B. Held, T. Teeley)
09. Breaking Away (K. Cochran, R. Young)
10. Midnight in Tokyo (J. L. Turner, B. Held, A. Kajiyama)
11. Babylon (J. L. Turner, A. Kajiyama)
12. Closer (J. L. Turner, A. Kajiyama)
13. Too Blue to Sing the Blues (J. L. Turner, A. Kajiyama)

■Personnel
Joe Lynn Turner - vocals, background vocals on 2, 7, 8, 9, 12
Akira Kajiyama - guitars on 1, 2, 3, 10, 11, 12, 13
Joe Bonamassa - guitars on 4, 5, 6
Andy Timmons -  guitar end solo on 4, guitar solo on 7
Al Pitrelli - addt'l guitars on 6, guitar end solo on 13
Alan Schwartz - guitar end solo on 6, 8
Karl Cochran - guitars on 7, 9
Tom Teeley - guitars on 8, keyboards on 8, background vocals on 2, 7, 8
Paul Morris - keyboards on 1, 2, 3, 4, 5, 9, 10, 11, 12, 13
Eric Czar - bass on 1, 2, 3, 10, 11, 12, 13
Greg Smith - bass on 4, 5, 6, 7, 8, 9
Kenny Kramme - drums
Nancy Bender - background vocals on 2, 7, 8, 12
Tabitha Fair - background vocals on 2, 7, 8, 12

Producer - Bob Held, Joe Lynn Turner
Executive-Producer – Mark Wexler

Holy Man
Turner, Joe Lynn
Pony Canyon Japan
2002-12-24

 

Under Cover 2 / Joe Lynn Turner (1999)

0243Undercover 2









ジョー・リン・ターナーの5枚目のソロ作品。第3作Under Cover の続編となるカバー・アルバムです。Under Cover がR&B寄りの選曲が目立ったのと比較して、今回はハードロックど真ん中。スタンダード曲ばかりなので新鮮味は無いものの、ハードロック・ファンとしては嬉しい内容です。しかも、曲ごとに異なるゲスト・ギタリストがソロを弾くという、タマらん企画となってます。ゲスト以外のバンドはトニー・ブルーノ・レイ(Gt)、グレッグ・スミス(B)、ケニー・クラム(Ds)、ポール・モリス(Key)と、前作Hurry Up and Wait のメンツと同じです。

#1"Lady Double Dealer"、パープルのStormbringer (1974)から。JLTの歌唱はデヴィッド・カヴァーデイルと遜色なく、自分の持ち歌のように歌いこなしています。ギター・ソロは梶山章。「虹伝説 - 虹を継ぐ覇者」でJLTをゲストに迎えて共演した翌年に、今度はJLTから呼ばれたということになります。オープニングのこの曲を含め3曲でソロを任されるという大抜擢に応え、リッチーばりの軽やかでアグレッシブなプレイを披露しています。

#2"Wishing Well"、フリーのラスト・アルバムHeartbreaker (1973)から。ブラックフット、ゲイリー・ムーア、日本だとロックン・ロール・スタンダード・クラブ(松本孝弘)など数多くのバンドにカバーされた名曲。ギター・ソロは、ビリー・スクワイアやロッド・スチュワートのバンドでもプレイしていたジェフ・ゴルブで、これがまた粘っこくて結構カッコいいんです。

#3"Helter Skelter"、ビートルズのThe Beatles (1968 通称「ホワイト・アルバム」)から。ビートルズとしては異色のハードな曲でHR/HM系のバンド中心に数え切れないほどカバーされてきました。ギター・ソロはリヴィング・カラーのヴァーノン・リード。

#4"Rock Bottom"、UFOのPhenomenon (1974)から。マイケル・シェンカーが加入して最初のアルバムですね。当時のギター・キッズはマイケル・シェンカーのソロにびっくり仰天したもんです。この曲、リフとギター・ソロがキモで歌メロは大したことないのに、JLTが本作に入れたのが意外。テンポを落としてグッとヘヴィになってます。そしてソロは原曲ほど長くなく、シェンカーとは全く異なるアプローチでバンド・メンバーのトニー・ブルーノが弾いています。

#5"Waiting for a Girl Like You"、フォリナーの4 (1981)からシングルカットされて大ヒットした曲。ルー・グラムとはニュアンスは違うものの、切々とした歌唱にJLTの上手さを感じざるを得ません。

#6"Movin' On"、バッド・カンパニーのBad Company (1974)から。本作2曲目のポール・ロジャースのレパートリー。JLTの得意分野ですな。各パートとも原曲に忠実で、カバーというよりコピーといった感じ。ソロはジョン・エントウィッスル・バンドのゴッドフリー・タウンゼント、ミック・ラルフスの完コピやってます。憎いね!

#7"Rock and Roll, Hoochie Koo"、これも人気のある曲でカバーは数知れず。リック・デリンジャー作ですが、彼自身のアルバムAll American Boy (1973)に収録される以前に、ジョニー・ウィンターのJohnny Winter And (1970)、エドガー・ウィンターのライブ盤Roadwork (1972) でのジョニー・ウィンターの演奏ですでに有名曲になっていました。リック・デリンジャーはどちらにもウィンター・ファミリーの一員として参加していて、All American Boy のバージョンはいわばセルフ・カバーということになります。本作でのJLTの歌唱はジョニー・ウィンター風ですね。そしてギターはなんとご本人リック・デリンジャー!「三連の神様」らしいカッコいいソロを披露しています。

#8"The Boys Are Back in Town"、シン・リジィのJailbreak (1976)からのシングル・ヒット。シン・リジィの曲はフィル・リノットのクセの強い歌唱が特徴ですが、JLTはその雰囲気を壊さずに自分流に歌いこなしているのがさすが。ギターはトニー・ブルーノ。

#9"Born to Be Wild"、ステッペンウルフのデビュー盤Steppenwolf (1968)から。映画「イージー・ライダー」でテーマソング的に使われ世界中で大ヒット、邦題「ワイルドでいこう」で日本でもよく知られています。古今東西カバーも数知れず、永遠のロック・アンセムともいうべき曲を、本作ではオリジナルに近いアンサンブルで聴かせてくれます。ちょっと現代風で流麗なギター・ソロはトニー・ブルーノ。

#10"The Race Is On"、自身の1stソロ作Rescue You (1985)からのセルフ・カバーです。原曲はきらびやかなキーボードが耳につき、ドラムも風呂場で叩いているような音で、いかにも80年代臭かったのが、ギター中心のすっきりしたアレンジで生まれ変わりました。こちらのほうが全ての音が生々しくてロックらしい勢いがあります。改めて聴き比べると、JLTの声がドスのきいたものに変化し、歌唱もより腰が据わっています。ギターは梶山章、緩急のある実に良いソロです。

#11"Fool for Your Loving"、言わずと知れたホワイトスネイクの代表曲で、初出はReady an' Willing (1980)。Slip of the Tongue でのホワイトスネイクのセルフ・カバーを初めとして、これまた多くのバンドに取り上げられてきたスタンダード・ナンバー。オリジナルは渋めのハード・ロック、Slip of the Tongue バージョンはよりメタリックですが、本作ではそのニコイチ的なアレンジでやってます。ギター・ソロは梶山章で、オリジナルのバニー・マースデンのフレーズをリッチーが弾いてるみたいな感じ。カッコいいです。全然関係ないけど、オリジナルのニール・マーレイのベースが良すぎるので、誰のバージョン聴いてもイマイチ感がつきまとうんですよね、筆者としては。

#12"Mississippi Queen"、マウンテンのClimbing! (1970)から。シングル・ヒットもしました。カバーはブラック・ストーン・チェリーとかWASPとか、他にもあるかも。この曲ではまたまたサプライズでご本人登場!レズリー・ウェストが、独特な歌うようなギター・ソロを弾いています。筆者の好きなギタリストのベスト・テンに入る人なので嬉しいです。JLTのボーカルもレズリー・ウェストとはまた違う迫力があっていいなぁ。

#13"Lost in Hollywood"、レインボーのDown to Earth (1979) から。オリジナルはグラハム・ボネットですが、JLTも負けじと青筋立てて熱唱しております。ガナるときはガナるぞと。JLT時代のレインボーがやっても違和感なさそうですね、この曲。ギター・ソロは何故か梶山氏でなくてアル・ピトレリ。

どれもこれも、プロからアマチュアまで色々なバンドのレパートリーとなることも多く、筆者もバンドでカバーした曲がいくつもあります。耳に馴染んだ曲ばかりで大好物なアルバムですが、正直皆が皆同じように楽しめるのかは分からない。。。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Lady Double Dealer (R. Blackmore/D. Coverdale)
02. Wishing Well (P. Rodgers/S. Kirke/T. Yamauchi/J. Bundrick/P. Kossoff)
03. Helter Skelter (J. Lennon/P. McCartney)
04. Rock Bottom (M. Schenker/P. Mogg)
05. Waiting for a Girl Like You (M. Jones/L. Gramm)
06. Movin' On (M. Ralphs)
07. Rock and Roll, Hoochie Koo (R. Derringer)
08. The Boys Are Back in Town (P. Lynott)
09. Born to Be Wild (M. Bonfire)
10. The Race Is On (J. Lynn Turner/A. Greenwood)
11. Fool for Your Loving (D. Coverdale/B. Marsden/M. Moody)
12. Mississippi Queen (L. West/C. Laing/F. Pappalardi/D. Rea)
13. Lost in Hollywood (R. Blackmore/R. Glover/C. Powell)

■Personnel
Joe Lynn Turner - vocals, background vocals on 5, 7, 10
Tony Bruno - guitars, guitar solo on 4, 5, 8, 9
Greg Smith - bass
Paul Morris - keyboards
Kenny Kramme - drums

Akira Kajiyama - guitar solo on 1, 10, 11
Jeff Golub - guitar solo on 2
Vernon Reid - guitar solo on 3
Goodfrey Townsend - guitar solo on 6
Rick Derringer - guitars and guitar solo on 7
Leslie West - guitars and guitar solo on 12
Al Pitrelli - guitar solo on 13
Steve Murphy - background vocals on 3, 5
Evan Slamka - background vocals on 3, 5, 10
Eric Miranda - background vocals on 3, 5, 10
Bill Snodgrass - background vocals on 3
Nancy Bender - background vocals on 7
Dina Miller - background vocals on 7

Producer - Bob Held, Joe Lynn Turner
Executive Producer - Mark Wexler, Kaz Kojima

Under Cover 2
Turner, Joe Lynn
Mascot
2006-11-27

虹伝説 - 虹を継ぐ覇者 (1998)

0193Niji Densetsu









森川之雄(Vo - Anthem, Goldbrick)、梶山章(Gt - Precious, Goldbrick)を中心とする日本人HR/HM系ミュージシャンによる、1998年リリースのレインボー・トリビュート・アルバム。この手のトリビュート盤の中でも屈指のクォリティを誇るアルバムです。森川、梶山以外のバンド・メンバーは、ドラムに工藤義弘(Earthshaker, Gracias)、キーボードに永川敏郎(Gerard, Earthshaker)と岡垣正志(Terra Rosa, Jill's Project)、ベースに加瀬竜哉と内田雄一郎(筋肉少女帯)というラインナップとなっています。またゲストとして、レインボーに在籍したジョー・リン・ターナー、デヴィッド・ローゼンタールが加わっているのもすごいです。

本作ではなんと言っても梶山章のギターの巧みさが際立っています。リッチーのニュアンスを再現しながら、より現代的なテクニックをプラスしてメリハリのあるドラマチックなソロを組み立てています。もちろんバッキングも完璧だし、トーン・コントロールもニヤリとさせるし、全くもって脱帽です。いや~、ストラトってほんとうにいい音だな~って感じさせてくれます。本作をきっかけに、ジョー・リン・ターナーのプロジェクトに度々抜擢されるのも頷ける充実したプレイですね。やはり問題はボーカル。抜群に上手いんですよ、もちろん。しかし、これは森川氏に限った話ではないのですが、自分が日本人だからか、どうしても日本人HR/HMシンガーの声の出し方や歌いまわしに厳しくなってしまう。JLTとのデュエット曲などに顕著ですが、やっぱりなんか違うなぁという感じが拭えないのです。ラストの"Rainbow Eyes"のような静かな歌い方はいいのですが、力んだ歌唱にどうも不自然さとか、気恥ずかしさすら感じてしまいます。これは一種のアレルギーみたいなものかもしれません。その辺に目をつぶれば、全体として演奏の水準も高く、レインボーの曲の良さを改めて認識できる好盤だと思います。え?レインボーの方がいい?それを言っちゃお終いです。
 
評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Over the Rainbow (E.Y. Harburg/Harold Arlen)~Kill the King (R. Blackmore/R. J. Dio/C. Powell)
02. Spotlight Kid (R. Blackmore/R. Glover)
03. Eyes of the World (R. Blackmore/R. Glover)
04. Man on the Silver Mountain (R. Blackmore/R. J. Dio)~Mistreated (R. Blackmore/D. Coverdale)
05 Road to Babylon (D. Rosenthal)~Gates of Babylon (R. Blackmore/R. J. Dio)
06. All Night Long (R. Blackmore/R. Glover)
07. Starstruck (R. Blackmore/R. J. Dio)
08. Street of Dreams (R. Blackmore/J. L. Turner)
09. Drinking With the Devil (R. Blackmore/J. L. Turner)
10. Lost in Hollywood (R. Blackmore/R. Glover/C. Powell)
11. Light in the Black (R. Blackmore/R. J. Dio/R. Padavona)
12. Over the Rainbow (Reprise)
13. Rainbow Eyes (R. Blackmore/R. J. Dio)

■Personnel
森川之雄 - Lead & Backing Vocals
梶山章 - Electric & Accoustic Guitars
工藤義弘 - Drums, Percussion
永川敏郎 - Keyboards (3, 6, 8, 9, 10, 11)
岡垣正志 - Keyboards (1, 4, 7, 11)
加瀬竜哉 - Bass (2, 3, 5, 6, 8, 9, 10, 11), Accoustic Guitar (8)
内田雄一郎 - Bass (1, 4, 7)

Joe Lynn Turner - Lead & Backing Vocals (2, 9)
David Rosenthal - Keyboards (2, 5)

Producer - 梶山章、森川之雄

虹を継ぐ覇者
虹伝説
ポニーキャニオン
1998-09-18

記事検索
カテゴリ別アーカイブ
読者登録
LINE読者登録QRコード
タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ