メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。

レイフ・マッケンナ

Spellbound / Ten (1999)

0160Spellbound










イギリスのメロディアス・ハードロック・バンド、Tenの4th(ライブ盤を含めると5th)アルバム。1999年リリースとなっていますが、日本国内盤は先行して1998年に発売されています。メロハー・ファンにとってTenは安心のブランド、このアルバムも期待を裏切らない作品となっています。哀愁を感じさせる適度にウェットなメロディはいつも通り、ゲイリー・ヒューズの落ち着いたボーカルとヴィニー・バーンズの泣きのギターもいつも通りです。他のメンバーも前作のライブ盤Never Say Goodbyeと変わらず、ジョン・ハリウェル(gt)、ジェド・ライランズ(key)、グレッグ・モーガン(dr)、スティーヴ・マッケンナ(ba)の4人。バッキング・ボーカルにはお馴染みのジェイソン・サノスの他、Dante Foxのスー・ウィレッツ、Magnumのボブ・カトレイも加わっています。

ゲイリー・ヒューズは歴史や叙事詩が好きらしく、これまでもそんな趣味を伺わせる曲がありましたが、本作ではその傾向は一層強まっています。勇壮でシンフォニックなオープニングから#2"Fear the Force"への流れがドラマティックで印象的です。また、#5"We Rule the Night"、#6"Remembrance for the Brave"、#7"Red"と、トラッド・ミュージックの旋律を取り入れた曲が挿入されることで、より伝統だとか歴史物語といったテーマが際立ち、あたかもコンセプト・アルバムのような統一感が生まれています。その一方で過去作で垣間見られた過剰な大作志向が抑制され、長いものでも6分程度と楽曲がコンパクト化しているのも好印象。さらに筆者としては、#9"Wonderland"に1stで見られた瑞々しいポップ・フィーリングが戻っているのも嬉しかったです。また、ミックスが1st~3rdのマイク・ストーンから、GiantやFair Warningを手がけてきたレイフ・マッケンナに変わったせいか、奥行きを感じさせるサウンドに仕上がっています。総合的にとても出来の良いアルバムだと思いました。

ただ、トラディショナルなのはいいとして、ファンタジーRPGに夢中になっている中学生みたいな歌詞は興ざめ。正直勘弁してもらいたいなと。ドラゴンが滑ったの転んだの、魔法使いがどうしたこうした、復讐だ!反逆だ!なんてのがHR/HMには何故かよく出てきますけど、もうそれだけでバカっぽく見えちゃうの。

閑話休題。本作で聴けるトラッド風メロディは、アイリッシュっぽいとは思いました。ただ、この方面の知識に乏しいので正確には不明です。同じケルト系のアイルランド、スコットランド、ウェールズ、コーンウォールの音楽にどのような差異があるのか分からないのです。イングランド(アングロサクソン)系とケルト系の違いだって怪しいものです。そもそもゲイリー・ヒューズがイギリス国内のどのようなエスニック・グループに帰属意識を持っているのかさえ分かりません。カトリックかプロテスタントかも知りません。イギリスのトラッド音楽を聴くと、ブリテン島と北アイルランドに住む人々を十把一絡げに、のっぺらぼうな「イギリス人」としてしか理解出来ていないことを痛感してしまいます。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. March of the Argonauts (Instrumental)
02. Fear the Force
03. Inside the Pyramid of Light
04. Spellbound
05. We Rule the Night
06. Remembrance for the Brave (Instrumental)
07. Red
08. The Alchemist
09. Wonderland
10. Eclipse
11. The Phantom
12. Till the End of Time
All songs written by Gary Hughes,
except " Inside the Pyramid of Light" written by Gary Hughes and Vinny Burns

■Personnel
Gary Hughes – vocals
Vinny Burns – guitars
Ged Rylands – keyboards
John Halliwell – guitars
Steve McKenna – bass guitar
Greg Morgan – drums and percussion

Francis Cummings – violin
Fiona Payne – violin
Anne Morrison – viola
Anna Frazer – cello
Mike McGoldric – uilleann pipes, low whistle, bamboo flute​
Jason Thanos – additional backing vocals
Sue Willets – additional backing vocals (Track 5)
Bob Catley – additional backing vocals (Track 5)
Rafe McKenna – additional backing vocals (Track 5)

Producer - Gary Hughes 

 

Fair Warning / Fair Warning (1992)

0001Fair Warning

「メロディアス・ハード」という言葉からまず思い浮かぶバンドは、なんといってもフェア・ウォーニングです。というわけで、レビューの記念すべき第一弾目はフェア・ウォーニングのデビュー盤です。

フェア・ウォーニングは、スコーピオンズの2代目のギタリストだったウリ・ジョン・ロートの弟、ジーノ・ロートのバンド、ジーノのメンバーを中心に結成されたドイツのバンドです。先駆者であるスコーピオンズ、そしてジーノが切り開いた、メロディアスなハードロックをとことんまで追求したバンドだと思います。筆者がメロハーに求める要素の2本柱は、突き抜けるような高揚感と切ない哀愁ですが、フェア・ウォーニングはこの二つを十二分に兼ね備えています。特にこの1stアルバムは、全曲シングルカットしてもおかしくないような良質なメロディーが、これでもかというほどに押し寄せてきます。1コーラスですぐサビにいくのが、60~70年代のヒットチャートをにぎわしたポップス群を髣髴とさせて心憎い限りです。また、バンドの演奏力、ヴォーカルのトミー・ハートの歌唱力も極めて高レベル。ヘルゲ・エンゲルケのスカイギターの飛翔感、アンディ・マレツェクのツボを心得た泣きのギターも聴き所の一つです。C.C.ベーレンス(Dr)、ウレ・リトゲン(Ba)のリズム隊も実に堅実な仕事をしています。なんでこんないいバンドが日本以外では大した人気がなく、「ビッグ・イン・ジャパン」などという不名誉なレッテルを貼られてしまっているのでしょうか。。。

なお、ボーナス・トラックの"In the Ghetto"はエルヴィス・プレスリーのレパートリーで、来日記念盤EPに収録されていたもの、"Hold Me"は初期のデモとして製作されたものです。プロデュースとミックスはレイフ・マッケンナ。1970年代からWishbone Ash、Bad Company、Giant、Foreigner、Teslaなどの数多くのアルバムに、エンジニアやプロデューサーとして関わっているベテランです。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Longing For Love (U. W. Ritgen)
02. When Love Fails (H. Engelke)
03. The Call of the Heart (U. W. Ritgen)
04. Crazy (U. W. Ritgen)
05. One Step Closer (H. Engelke)
06. Hang on (U. W. Ritgen)
07. Out on the Run (U. W. Ritgen)
08. Long Gone (U. W. Ritgen)
09. The Eyes of Rock (U. W. Ritgen)
10. Take a Look at the Future (U. W. Ritgen)
11. The Heat of Emotion (Z. Roth)
12. Take Me Up (U. W. Ritgen)
※日本盤ボーナス・トラック
13. In the Ghetto
14. Hold Me

■Personnel
Tommy Heart – vocals
Helge Engelke – guitars, keyboards and backing vocals
Andy Malecek – guitars
Ule W. Ritgen – bass guitar and backing vocals
C. C. Behrens – drums

Bernd Kluse – backing vocals
Andrew McDermott – backing vocals
Kalle Bosel – backing vocals

Producer – Rafe McKenna

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