イギリスのハードロック・グループFMの第4作目。前作同様Music for Nationsレーベルから1992年にリリースされています。前作でR&B色の強いサウンドに路線転換を図ったFMですが、この4thアルバムではより一層その傾向を強め、もはやメロハーという枠では括りきれないところまで来ました。Free、Humble Pie、初期Whitesnake、あるいはThunderといったバンドと同じように、R&B、ブルースを英国風ロックに仕立て上げた伝統的ブリティッシュ・ハードロックの太い流れの中に位置づく音です。前作は路線転換の途中でもあり、わずかに中途半端な印象は拭えませんでしたが、今回は楽曲・歌唱・演奏が非常に高いレベルで一体化し、押しも押されもせぬ名盤の風格をそなえた作品となっています。マーヴ・ゴールズワーシー&ピート・ジャップのリズム隊はまさに鉄壁、アンディ・バーネットのギターも躍動感と渋さを兼ね備え、そしてスティーヴ・オーヴァーランドの歌いまわしはコクがあるのにキレもあるってやつで、もうため息が出るほど。同じレーベルのRomeo's Daughterのメンバーがバックに入っているのは前作同様です。プロデューサーとしてアンディ・ライリーがバンドとならんでクレジットされていますが、この後もFMのプロデュースを何度か手がけており、Romeo's Daughterのプロデュースも行なっています。
#1"Breathe Fire"はオープニングにふさわしくホーン入りの派手でノリのいいナンバー。サビ前のキメが超カッコいい!
#2"Blood and Gasoline"はミドルテンポのアーシーな曲で、シングルもリリースされています。
#3"All or Nothing"は初期FMのメロディアスさを感じさせる名曲。このアルバムの中では一番メロハーっぽいかな。
#4"Closer to Heaven"はまるでソウルのスタンダード・ナンバーかと思わせるバラード。スティーヴ・オーヴァーランドの歌が上手過ぎ。ギター・ソロまでやってるし。
#5"Ain't Too Proud"は再びアップ・テンポのR&Bでノリノリになります。曲順も良くできてますね。
#6"Take the Money"はスライド・ギターをフューチャーしたブルージーな曲。
#7"Aphrodisia"は次の曲のイントロ的な短いインスト曲。闇夜を切り裂くようなアンディ・バーネットのギターがイイ!
#8"Inside Out"はファンキーでメロディアスな曲。ヴァースのメロディがすごくカッコいいな~。
#9"Run No More"はアコギから始まる渋いスロー・ナンバー。サビなど後期Freeを聴いているのかと錯覚するほど。素晴らしい!
#10"Play Dirty"はHumble PieとBad Companyを足したような70年代風R&R。こりゃシビレますね!この曲のギター・ソロもスティーヴ・オーヴァーランド。
#11"Rivers Run Dry"はハネるリズムとアコギのカッティングが印象的な渋い曲。
#12"Hard Day in Hell"は本編ラストの曲。ピアノとサックス入りで、なんだかレイ・チャールズの持ち歌みたいなソウル・バラード。渋いギター・ソロはスティーヴ・オーヴァーランド。
以下は国内盤ボーナス・トラックです。
#13"Chinese Whispers"もメロディアスで、以前のFMの雰囲気を感じさせる曲。
#14"Some Kind of Wonderful"はライヴ音源で、Grand Funkのカヴァー。オリジナルはキャロル・キングです。
#15"I'll Be Creepin'"もライブ。出た、Free!選曲も渋い。この曲カッコよくやるの難しいと思うけど、Freeが乗り移ったみたいな名演です。そして、ポール・ロジャースの後継者はスティーヴ・オーヴァーランドしかいない!
評価 ★★★★★
★★★★★ 傑作
★★★★☆ 秀作
★★★☆☆ 佳作
★★☆☆☆ 凡作
★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。■Tracks
01. Breathe Fire (FM)
02. Blood and Gasoline (FM)
03. All or Nothing (FM)
04. Closer to Heaven (FM)
05. Ain't Too Proud (FM)
06. Take the Money (FM)
07. Aphrodisia (FM/C. Olins)
08. Inside Out (FM)
09. Run No More (FM)
10. Play Dirty (FM)
11. Rivers Run Dry (FM)
12. Hard Day in Hell (FM)
13. Chinese Whispers [bonus] (FM)
14. Some Kind of Wonderful (live) [bonus] (G. Goffin/C. King)
15. I'll Be Creepin' (live) [bonus] (A. Fraser/P. Rodgers)
■Personnel
Steve Overland - Lead vocals, guitar
Merv Goldsworthy - Bass, vocals
Pete Jupp - Drums, vocals
Andy Barnett - Lead guitar, vocals
Keyboards - Tony Mitman
Piano, Strings - Charlie Olins
Harmonica - Mitt
Trumpet - Martin Shaw, Mark Cumberland
Saxophone - Adrian Revell
Trombone - Patrick Hartley
Backing vocals - Leigh Matty, Craig Joiner, Sonia Jones
Producer - FM/Andy Reilly