0201I Am I









キューバ、ドミニカからの移民で結成されたというマイアミのロックバンド、ニュークリア・バルデスの1stアルバム。メンバーは、フロイラン・ソサ(vo)、ホアン・ルイス・ディアス(ba)、 ロバート・スレイド・ルモン(ds)、ホルヘ・バルカラ(gt)の4人。ヒスパニック系移民ということで想像がつくように、やはりラテン・ロックの範疇に入る音です。といっても、サンタナやトライブ・オブ・ジプシーズのような、パーカッションがバシバシ入った濃厚なそれとは趣を異にして、割とオーソドックスなロックをやってます。そして上記2バンドと大きく違うのは、荒削りでアマチュアっぽさすら感じさせる点。移民の若者たちが楽器を手にして、自分たちの日常や内なる思いを歌った、そんな素朴さを漂わせています。だからなおのこと聴き手の心に音楽がストレートに入ってきて、感情を揺さぶるのです。もちろん、プロデューサーは百戦錬磨の超大物リチャード・ゴッテラーとトム・パヌンツィオなわけで、バンドの素朴さシロウトっぽさに着目してそれを際立たせ、プリミティヴな情動に訴えかける念の入った仕事をしているはずです。

1989年当時、#1"Summer"がシングル・カットされて結構ヒットしたらしいのですが、筆者の記憶にはありません。この曲に顕著なように、フロイラン・ソサのボーカルは決して上手いとは言えないと思いますが、歌声になんとも言えない物悲しい情感が込められている。その声でやるせないメロディを歌われると、胸が締め付けられるようです。また、ホルヘ・バルカラのギター、これがまた素晴らしい。パキパキしたトーン、深いリバーブ、すすり泣くようなフレーズが堪りません。"Summer"一発で完全にやられてしまいました。ラテン風味が強い#2"Hope"、ちょっとU2っぽい#3"Trace the Thunder"、悲しみに満ちた必殺のバラード#4"If I Knew Then"等々、どの曲もエモーショナルで強い印象を残すものばかりです。ハードロックの文脈では語れないバンドですが、本作に関しては哀愁メロハー・ファンならいけるアルバムだと思います。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. Summer
02. Hope
03. Trace the Thunder
04. If I Knew Then
05. Unsung Hero (Song for Lenny Bruce)
06. Strength
07. Eve
08. Apache
09. Run Through the Fields
10. Where Do We Go From Here
11. Rising Sun [bonus track]
All songs written by Nuclear Valdez
except "Apache", "Rising Sun", "Strength" written by Froilan Sosa

■Personnel
Froilan Sosa -Lead vocals, Electric & Acoustic guitars
Juan Diaz - Bass guitar, Vocals
Jorge Barcala - Lead & Rhythm guitars
Robert Slade LeMont - Drums, Vocals

Producer - Richard Gottehrer, Thom Panunzio
Executive Producer - Dan Rubin, Michael Caplan

I Am I
Nuclear Valdez
Sony
1989-10-10