0216Nostalgia










スウェーデンのHR/HMバンド、フォーチュンのボーカリストだったベニー・セーデルベリが結成したプロジェクト、クロックワイズのデビュー作です。フォーチュンと言えば、その1stアルバムMaking Gold で日本の北欧メロディック・メタル・ファンの心をがっちり掴んだものの、2ndで音楽性をグランジ風に変化させて失速、いつのまにかシーンから消えたバンドでした。ベニー・セーデルベリはこのクロックワイズで、再びMaking Gold のような叙情的でメロディアスな路線に回帰しています。わざわざ別バンドにせずに、フォーチュンのままでやればいいのにと思いますが、フォーチュン名義では意地でも元の音楽性に戻したくなかったのでしょう。バンドのメンバーはベニー・セーデルベリの他、ギターにグローリーのヤン・グランウィック、リズム・セクションはヨーロッパのジョン・レヴィン(ba)、イアン・ホーグランド(ds)と強力な布陣。特に、ヤン・グランウィックのアグレッシヴでテクニカルなギターは、このアルバムに大きな魅力を付け加えています。なおソング・ライティングは全曲ベニー・セーデルベリで、プロデュースも彼自身が行なっています。

Making Gold の路線に戻ったと書きましたが、本作の楽曲・演奏面での充実振りはそれを更に上回ります。マイナー・キーの曲はクサいほど哀愁たっぷりに、メジャー・キーの曲はあくまで清清しく、そしてアルバム全体に清潔感と透明感が満ち満ちています。やればできるじゃん!これを待ってたんだよ、これを!タイトルも麗しいNostalgia 、邦題に至っては『北欧のノスタルジア』と来たもんだ。美しく神秘的なジャケもサウンドにピッタリ。もしかして、日本のレコード会社が「日本人の考える北欧メタルの理想像」を入れ知恵したのかと勘ぐりたくなるほど、一から十まで絵に描いたような北欧的叙情メタルです。少し上手くなっていたベニーさんのボーカルまで元に戻っているのが笑えます。でも、この野暮ったいボーカルこそ値千金なんですよ、好事家には。

■01. Wings of Joy
煌くキーボードに導かれてスタートする哀愁メロハー。モタモタしたボーカルとドラマチックなギター・ソロの対比が堪りません。
■02. This Blue World
クラシカルで気品溢れる北欧美旋律。本作の中でもトップクラスの楽曲です。ここでもヤン・グランウィックの切れ味鋭いギター・ソロが秀逸。
■03. Traveler
#2に続いての名曲連発です。フォーチュン、クロックワイズを通して、ベニー・セーデルベリのベストの作品の一つでしょう。美しくメランコリックなメロディにただただ溜め息です。
■04. Higher Ground
またまた名曲です。ヘヴィなヴァース部分から解き放たれるように、爽快で高揚感に満ちたコーラスへ、この展開が素晴らしい。
■05. Run the Race
本作中ではメタル色の強いスピード・チューン。クラシカルなギターとキーボードとは対照的に、歌メロはほとんど歌謡曲。日本人直撃だな、こりゃ。
■06. Angel Eyes
「ノスタルジー」という言葉がぴったりなクラシカルなバラードです。やけに暑苦しかったり、大げさだったりし過ぎるアメリカン・ロックのバラードとは全く異なる、冷たく透き通った感覚は北欧ならではのものだと思います。
■07. Changes
これは中森明菜か工藤静香のカバーですか?ってくらいに歌謡曲的。いや~堪りません。絶対日本の歌謡曲研究したでしょ、ベニーさん。ギターはジミヘン+リッチー+ジョージ・リンチって感じで凶暴。
■08. Looking for Love
珍しくハネものです。ややアメリカンで一時期のヨーロッパみたいですが、アルバム中のバリエーションとしては効果的です。
■09. Paradize
ロマンチックなインスト・テーマ、哀愁に満ちた歌メロが印象的。噴出するようなギターのパッセージがものすごくカッコいい。
■10. The Tales of King Solitude 1:3
トラッド・ミュージック的な味わいのある旋律が素晴らしい、エンディングにふさわしいバラード。ベニーさん、ほんとうにいいアルバム残しましたね。ありがとう。

★追記2017年2月
これまで国内盤ライナーノーツに従って、Benny Söderbergを「ベニー・スドベリ」と表記してきましたが、スウェーデン人名Söderbergの一般的カタカナ表記にならって「ベニー・セーデルベリ」に改めます。 

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Personnel
Benny Söderberg - vocals, backing vocals, strings, keyboards
Jan Granwick - electric and acoustic guitars
John Levén -  bass
Ian Haugland - drums

Producer – Benny Söderberg