メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

モルディ・ハウザー

Indigo Dying / Indigo Dying (2007)

0270Indigo Dying









チリ出身の女性ボーカリスト、ギザ・ヴァッキーを主役にすえたメロハー・プロジェクトIndigo Dying(インディゴ・ダイング)の、今のところ唯一作。楽曲はオリジナルではなく、オルタナティヴ系からポップ・ソウルまで様々なアーティストの曲をカバーしています。リリースはイタリアのメロハー・レーベルFrontiers Recordsで、同じ頃ミケーレ・ルッピをフィーチャーして制作されたLos Angelesと同様の企画です。プロデュースはFrontiersお抱えのファブリツィオ・グロッシでベースも兼任。その他バックを勤めたプレイヤーは、ジョン・マカルーソ(Ds)、モルディ・ハウザー(Gt)、トミー・デナンダー(Gt)、ジェイミー・テラモ(Key)と、これもLos Angelesとだいぶ重なっています。また、マイケル・キスク(Helloween、Unisonic etc)とマーク・ボールズ(Yngwie Malmsteen、Ring of Fire etc)がゲスト・ボーカルとして動員され、さすがに堂々とした歌いっぷりを披露しているのも注目点。

さてアルバムの中身ですが、筆者には色々と疑問符が付いてしまうものでした。静かなピアノをバックに歌い出して、歪み切ったギターと大音量のドラムとベースがいきなり入ってくるというようなパターンが多く、それが鼻につきます。ゴシック・メタル・バンドやEvanescenceを想起させるようなサウンドで、静と動を対比させるといった狙いがあるのかも知れませんが、果たして成功しているのかどうか。ギザ・ヴァッキーの歌唱自体は表情豊かで好感が持てるものです。しかし、メロディ・ラインも種々雑多なカバー曲を、同じような強烈なサウンドをバックに、それでも有無を言わせず自分の持ち歌のように聴かせるほどの歌唱力や強烈な個性はありません。むしろボーカルがバンドの爆音に埋もれがちになってしまっています。もちろんそれは、主役を振られたギザ・ヴァッキーや、スタジオで指示通り仕事をしたミュージシャンの責任ではないでしょう。選曲・アレンジからサウンド・プロダクションまで、レコーディング一切を取り仕切ったであろうファブリツィオ・グロッシを含め、レーベル側の問題です。ちょっと無理のある企画だったんじゃないかなぁ。ギザさんは以前ユーミンのアルバムにバック・ボーカルで参加したこともあるらしい。ソロ歌手として初めてのアルバムだったのに、オリジナル曲ではなくカバー企画一発でその後音沙汰なくなってしまったギザさんが、なんだか可哀相に感じてしまうのです。

 評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. All I Never Wanted (Kara DioGuardi/John Shanks)
02. Hear Me (Kelly Clarkson/Kara DioGuardi/Clif Magnes)
03. Breathe in Water (Anggun/Jean Fauque/Jean Pierre Taieb)
04. Better (Tiffany Arbuckle Lee/Shaun Shankel/Matt Bronleewe)
05. Taken (Tiffany Arbuckle Lee/Shaun Shankel/Matt Bronleewe)
06. Superman (Sahaj Ticotin)
07. Island (Debby Holiday)
08. Remember (I.O.U.) (Eric Durrance/Rick Jackson)
09. Real Life Fairytale (Matt Bronleewe/Tiffany Arbuckle Lee)
10. Far Enough (Sahaj Ticotin)
11. Shattered Life (Joseph Rojas/Josh Schwartz/Jeremy Holderfield)
12. Go (Anggun/Jean Pierre Taieb)
13. Go ( Remixed )

■Personnel
Gisa Vatcky - Lead & Backing Vocals
John Macaluso - Drums
Mordechai "Mordy" Hauser - Guitars
Jamie Teramo - Keyboards, B3, Piano
Fabrizio Grossi - Bass, Orchestrations Programming, Sitar, Acoustic Guitar
Tommy Denander - Additional Guitars
Joshua Berkowitz - Additional Guitars
Michael Kiske - Vocals on "Breathe In Water"
Mark Boals - Vocals on "Superman" and "Fair Enough"

Producer – Fabrizio Grossi

Indigo Dying
Indigo Dying
Locomotive Spain
2008-04-22

Los Angeles / Los Angeles (2008)

0012Los Angeles

ロサンゼルス(Los Angeles)は、Vision DivineやKilling Touchでの活動で注目されるイタリア出身のボーカリスト、ミケーレ・ルッピ(Michele Luppi)と、スウェーデン出身のメロハー/AOR界の仕事師トミー・デナンダー(Tommy Denander)が組んだAORプロジェクトです。このアルバムで初めてルッピの歌を聴いたのですが、その驚異的な声と歌唱力に一発で参りました!ベルベットのように柔らかで力強い声質、圧倒的な声量、細くならずにどこまでも伸びるハイトーンは、HR/HMの世界で文句なく最高クラスのものだと思います。このアルバムはリチャード・マークス(Richard Marx)をはじめとしたAORのカバーという企画物ですので、バラード中心で曲調やテンポのバリエーションが乏しいのはいたし方ありません。それが苦にならない方であれば、表現力豊かな歌い手が心地良い旋律を歌うのを聴くという、当たり前の音楽の快楽を、心行くまで味わうことができると思います。

トミー・デナンダー以外の参加ミュージシャンでは、Angel、Giuffria、House of Lordsのグレッグ・ジェフリア(Gregg Giuffria)が目を引きます。プロデューサー兼ベースのファブリツィオ・グロッシ(Fabrizio Grossi)、この人もメロハー/AOR界隈ではよく見かける仕事人です。たとえばIndigo Dyingの1stアルバムではベースを担当。このアルバムには、本作に参加しているトミー・デナンダー、ジェイミー・テラモ(Jamie Teramo)、モルディ・ハウザー(Mordi Hauser)もクレジットされています。また、Ambitionの1stアルバムにもトミー・デナンダーと共に関わっています。ジョン・サイクスと間違えそうなジョーイ・サイクス(Joey Sykes)ですが、この人はHugoのTime on Earthでもギターを弾いています。

ライナーを見ると、レコーディングはアメリカ、スウェーデン、イタリア三ヶ国(ニューヨーク、ストックホルム、ロサンゼルス、モデナ)で行われています。おそらくこういったプロジェクトは、ミュージシャンがそろってセッションを行うのではなく、パートごとに録音されたものをミックスしているのでしょうね。マスターはDennis Wardとクレジットされていますが、おそらくPink Cream 69のあのデニス・ワードだと思われます。リリースはイタリアのメロハー/AOR専門レーベルFrontiers Recordsで、このアルバムのエグゼクティブ・プロデューサーのセラフィーノ・ペルジーノ(Serafino Perugino)はFrontiersの社長さんです。この人の仕掛けで、ファブリツィオ・グロッシがレコーディング実務を取り仕切ってオケを作り、ミケーレ・ルッピに歌わせるという、Frontiersお得意の企画ものの一つということになります。

以下、自分自身の備忘録を兼ねて、カバー曲の概要をまとめて記しておきます。雰囲気がそれぞれ違うオリジナル曲が、本作では見事にルッピのレパートリーとして統一感ある仕上がりになっているのにはつくづく感心します。

01. I Will Carry You
TV番組「アメリカン・アイドル」出身の歌手Clay Aikenのデビュー・アルバム、Measure of a Man (2003)より。プロの作家チームの手による曲。なお、このアルバムはビルボードのチャート1位、トリプル・プラチナを獲得している。
 youtubeのClay Aikenオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=AJVvnQXhHpI&feature=related
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=Afy9fbfQYhU
02. I Must Be Blind
その筋では有名なセッション・ドラマーJohn RobinsonとAOR系ボーカリストMark Williamsonによるユニット、Bridge 2 FarのアルバムBridge 2 Far (1989)より。
 youtubeのBridge 2 Farオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=8fzWe1oeWHM
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=ELSWDIYwu5Q&feature=related
03. Thanks to You
AOR系シンガー・ソングライターとして著名なRichard Marxの作品。1999年に日本向けに再編集されたGreatest Hits にのみ収録されている曲。
 youtubeのRichard Marxオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=-1F2_YyoEpY
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=mMPTiQM4WYE
04. Edge of Forever
Richard MarxのアルバムDays in Avalon (2000)より。オリジナルは共作者のRichell "Chely" Wrightとのデュエット。
 youtubeのRichard Marxオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=KPZLTu6brHc
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=CcWXCQc_oEs
05. Last Chance
Night RangerのアルバムFeeding off the Mojo (1995)より。
 youtubeのNight Rangerオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=5rXWAEsnFNM
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=jJQ5ontz1jc
06. Run
クリスチャン・ロック・グループSelahのボーカリストTodd Smithのソロ・アルバムAlive (2004)より。
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=k5KHj3q5U8g
07. When You Think of Me
カントリー・シンガーMark Willsのシングル曲(2003)。
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=p7ulPGItAbQ
08. One More Try
Richard MarxのアルバムPaid Vacation (1994)より。
 youtubeのRichard Marxオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=ZvFUKkuuMEM
09. The Other Side
Richard MarxのアルバムMy Own Best Enemy (2004)より。
 youtubeのRichard Marxオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=6mm8imUgwYs
10. Caroline
クリスチャン・ロック・グループSeventh Day SlumberのアルバムOnce Upon a Shattered Life (2005)より。
 youtubeのSeventh Day Slumberオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=mCMgUtE56dw
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=WgoH7asfbVo&feature=related
11. Measure of Man
1曲目と同じくClay AikenのMeasure of a Man (2003)より。イギリスのシンガー・ソングライターCathy Dennisの作品。
 youtubeのClay Aikenオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=DSzQIOSnUtA&feature=related
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=2n8NjsaRPxY

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. I Will Carry You (Lindy Robbins, Dennis Matkosky, Jess Cates)
02. I Must Be Blind (Mark Williamson, Chris Eaton)
03. Thanks to You (Richard Marx)
04. Edge of Forever (Richard Marx, Richell Wright)
05. Last Chance (Brad Gillis, Kelly Keagy, Gary Moon, Jeff Paris)
06. Run (Chris Eaton, Todd Smith)
07. When You Think of Me (Brett James, Thomas Verges)
08. One More Try (Richard Marx, Bruce Gaitsch)
09. The Other Side (Richard Marx)
10. Caroline (Joseph Rojas)
11. Measure of Man (Steve Morales, Cathy Dennis, David Siege)

■Personnel
Michele Luppi – vocals
Frankie De Grasso – drums
Fabrizio Grossi – bass
Tommy Denander – guitars
Gregg Giuffria – keyboards
Jamie Teramo – keyboards

Mordi Hauser – Additional guitars
Joey Sykes – Additional guitars

Producer - Fabrizio Grossi
Executive Producer - Serafino Perugino
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