メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。

マッツ・オラウソン

Houston / Houston (2010)

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スウェーデンのメロハー/AORシーン期待の新人、ヒューストンのデビュー・アルバムです。新人と言ってもずいぶん年季の入った新人も多い中、ヒューストンはピッカピカの若者ということでうれしくなります。どういう訳か、バンドの形態をとらずフレディ・アレン(ds)とハンプス・ハンク・エリックス(vo)の2人のユニットとなっています。メンツが足りない分、レコーディングにはスウェーデンの名だたるミュージシャン達が参加しているのが注目点です。

主だった参加メンバーを挙げると、ギターにトミー・デナンダー。言うまでもなく、数え切れないほどのグループ、プロジェクトに携わってきた北欧メロハー/AOR界きっての仕事人です。キーボードには、イングヴェイ・マルムスティーンのバンドを皮切りに、これまた数多くのセッションをこなしてきたマッツ・オラウソン。バッキング・ボーカルに、トミー・デナンダーとTalk Of The Town、Speedy Gonzalesで共演してきたトーマス・ヴィクストロム。このアルバムの#8"She's a Mystery"ではハンプス・ハンク・エリックスとのデュエットも聴かせてくれます。そして、プロデュースとキーボード、ソングライティングのほとんどに関わっているリッキー・B・デリン(Ricky B. Delin)、彼がこのプロジェクトの中心人物のようです。ミュージシャン/コンポーザー/プロデューサー/エンジニアーとして、Sayit、Prisonerなど数多くのメロハー/AOR系のアルバムでトミー・デナンダーと一緒に仕事をしてきています。

これだけのバックアップ体制で制作されたアルバムなわけですが、まるで自主制作デモ音源のような印象を受けてしまいました。ラジオのように平板なサウンド・プロダクション、一本調子の楽器アンサンブル、生気のないドラム、これらが重なって、なんだかDTMに毛が生えた程度の音にしか聴こえません。キーボード主体のライトな80年代AORを再現しようとしている意図は窺えますが、それにしてもあまりにもサウンドに勢いがないのです。トミー・デナンダーのギターがいつも以上に歪んでいて、まるでビンテージ物のFuzzでも踏んでいるようにノイジー過ぎるのも気になります。

ただし、楽曲自体は抜群に優れています。そこはかとない哀愁を漂わせたメロディが非常に魅力的ですし、ボーカルのハンプス・ハンク・エリックスのナイーブな歌唱との相乗効果もあり、どの曲も名曲・佳曲と言って差し支えない水準です。この楽曲群を隅々まで気を配ってアレンジしなおし、リズムセクションを強化して、最高の環境で再レコーディングしたら、とんでもない傑作になりそう。そんなことばかり頭に浮かんで、聴くたびに割り切れなくてモヤモヤしてしまうアルバムです。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。 

■Tracks
01. Pride (Allen, Delin)
02. Truth Slips (Allen, Delin)
03. Hold on (Allen, Delin)
04. I'm Alive (Allen, Delin)
05. One Chance (Allen, Delin)
06. Give Me Back My Heart (Kronqvist, Delin, Denander)
07. Misery (Delin, Denander)
08. She's a Mystery (Laroxx,Sandrock)
09. Now (Delin, Kronlund)
10. 1000 Songs (Kronlund, Delin)
Bonustracks
11. Under Your Skin (Erix, Delin)
12. Chasing the Dream (Allen, Delin)

■Personnel
Freddie Allen - drums, keyboards on 3
Hampus Hank Erix - lead & backing vocals

Lasse Falck - bass (except 6)
Kristoffer Hogberg - bass on 6
Mats Olausson - keyboards on 1, 6, 7, 8, 9, 10
Ricky B. Delin - keyboards on 1, 2, 3, 5, 6, 8, 9, 10, syn-drums on 4, acoustic guitars on 9, backing vocals on 3, 4, 10
Jay Cutter - keyboards on 3, 7
Johan Kronlund - keyboards on 10, guitars on 10, backing vocals on 10
Sandrock - FX on 8
Tommy Denander - guitars on 1, 3, 4, 5, 6, 7
Martin Fogelström - guitars on 2
Michael Santunione - guitars on 8
Fabes - guitars on 4, 9
Krille Eriksson - guitars on 10
Kristoffer Langerström - backing vocals on 1, 5, 6, 9
Helena Alsterhed - lead vocals on 2
Tomas Vikström - backing vocals on 2, 4, lead vocals on 8

producer - Ricky B. Delin
executive producer – Dave Laroxx 

 

Wonderland / Kharma (2000)

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スウェーデンのメロハー・グループ、カーマ(Kharma)のデビュー・アルバム。メンバーはヨラン・エドマン(vo)、ドラガン・タナスコヴィック(gt)、アティラ・サーボ(key)、ヨエル・スタランダー(ba)、イムレ・ダウン(dr)。ライナーノーツによれば、Kharmaはエドマン、タナスコヴィック、サーボの3人が1980年代の中ごろに組んでいたVanessaというグループが前身となっています。Vanessaはデモ作りまではいったもののレーベルとの契約には至らず、エドマンがジョン・ノーラム、イングヴェイ・マルムスティーンといった大物に抜擢されて以降は活動が停滞。自然消滅状態だったKharmaですが、ドイツのメロハー・レーベルMTM Musicからタナスコヴィックに声がかかり、エドマン、サーボもKharma再始動に同意、長いブランクを経てついにデビュー・アルバムが完成したという、なんだか泣ける話です。せっかくの初アルバムなのに、アティラ・サーボは個人的事情で中々レコーディングに参加できなかったそうで、ほとんどのキーボード・パートを元インギー・バンドのマッツ・オラウソンが弾いています。ドラムのイムレ・ダウンは最近ミカエル・アーランドソンのSaluteでも叩いていますが、そのミカエル・アーランドソンがこのアルバムにバッキング・ボーカルで2曲参加しています。ヨラン・エドマンは、Kharmaは自分にとってもっとも情熱を傾けるバンドで、他のプロジェクトに参加するのはKharmaに注ぎ込む資金を得るためとまで言っていたそうですが、今のところこのアルバムが唯一の作品となっています。

オープニングの"Free Yourself"は、ホーンの入ったイントロ、ポール・ロジャース風のブルージーなヨラン・エドマンの歌唱、愁いを帯びたメロディ、全て筆者好みで「おおーっ」となりました。しかし。。。サビの転調でガクっと。。。なんでそのまま行かない?アルバム全体がそんな不完全燃焼の繰り返しで、非常に欲求不満に陥ります。明らかにクイーンの影響を感じさせる煌びやかなコーラス、ビートルズ的くすぐり、大げさすぎるキーボード、曲の勢いを殺すキメと転調、いらないものばかりです。良いメロディと良い演奏がそこかしこにあるのに、実にもったいない。ただし、#7"Part Time Lovers"だけは、最後までフリーかバドカンかと思うほど重厚で、オルガンもギター・ソロもそれ風でとことんかっこいい!

ヨラン・エドマンのボーカルは、あるときはポール・ロジャース、またあるときはグレン・ヒューズ、フレディ・マーキュリーみたいに聴こえます。様々な歌い方ができるのは良いことですが、1枚のアルバムの中でコロコロ変わるのはいかがなものか。ドラガン・タナスコヴィックの野太くて歌心のあるギターは1970年代の名ギタリストたちを思い起こさせ、非常に筆者好みなのですが、このKharma以外にはギタリストとしての活動はなく、もっぱらマスタリングやレコーディング・エンジニアとして裏方で働いているようです。もったいないことだらけで悲しくなってしまいます。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Free Yourself
02. Wonderland
03. Knowing You
04. Burn Forever
05. In Chains
06. Standing Alone
07. Part Time Lovers
08. Angel Eyes
09. Ray Of Sunshine
10. Spell on You
11. Don't Close Your Eyes
12. Hold On
13. Wings of History
※日本盤ボーナストラック
14. Cold As Ice

All sogs written by Atilla Szabo, Dragan Tanaskovic, Göran Edman

■Personnel
Göran Edman – lead and backing vocals
Dragan Tanaskovic – guitars
Atilla Szabo – keyboards, piano, organ, backing vocals
Joel Starander – bass
Imre Daun – drums, percussion

Mats Olausson – keyboards, piano, organ
Mikael Erlandsson – backing vocals on 11, 12
Jonas Simonsson – flute on 2, 9
Eleanore Andersson – backing vocals on 6, 13
Jan Anders Bjerger – trumpet on 1, 9
Peter Johansson - trombon on 1, 9
Anders Börjesson - sax on 1, 9
David & Mathias Szabu - vocals on 10

Producer - Dragan Tanaskovic & Kharma

Talisman / Talisman (1990)

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イングヴェイ・マルムスティーンのライジング・フォース時代の同僚である故マルセル・ヤコブとジェフ・スコット・ソートが結成したタリスマンの1st。今回は、新たにリマスターされ、さらにデモ音源とライヴ音源を収録したボーナスCD付き2枚組のご紹介です。

ハードな演奏に切ないメロディが乗る"Break Your Chains"、ポップでキャッチーな"I'll Be Waiting"、AORテイストの哀愁バラード"Just Between Us"、高揚感満点の"Queen"などなど、このアルバムは名曲が目白押しです。ジェフ・スコット・ソートの伸びやかでソウルフルなボーカル、マルセル・ヤコブのテクニカルなベースはパーフェクトとしか言いようがありません。キーボードはやはりインギーとの仕事で知られるマッツ・オラウソン、コンパクトにまとめられた印象的なギター・ソロはクリストファー・シュタール、ドラムは2曲だけ220 Voltのピーター・ハーマンソンが叩いていますがその他は打ち込みのようです。ラスト前の、タリスマンに似合わないロックンロール曲"Women, Whiskey, And Songs"はいらなかったかも。それだけが小さなマイナス・ポイントですが、とにかくこのアルバムはメロディアス・ハードを語るとき欠かすことのできない名盤だと思います。

さて、ボーナスCDですが、デモ音源が8曲、ライブ音源が6曲収められています(なお近年発売されたTalisman: 2012 Deluxe Edition にはライブ音源が8曲収録されています)。デモは、曲のタイトル、メロディ、アレンジなど多少異なっていますが、本編と同じ曲をヨラン・エドマンが歌っています。彼はこの後イングヴェイ・マルムスティーンをはじめ数多くのバンド、プロジェクトで活躍するわけですが、このときはまだ元Madisonという経歴しかない頃です。このデモ音源を聴く限り、繊細でいかにも北欧スウェーデンを感じさせるヨラン・エドマンよりも、豪快なジェフ・スコット・ソートのほうがタリスマンのサウンド、メロディに合っているように思えます。この後マルセル・ヤコブとジェフ・スコット・ソートは長年にわたってコンビを組むので、よほど二人の相性は良かったんでしょう。ライブのボーカルはジェフ・スコット・ソートです。ビデオカメラの音声トラックを音源にしているので音質は悪いです。タリスマンの曲のほか、ジョン・ノーラムのTotal Controlから"Eternal Flame"と"Let Me Love You"、ヨーロッパのWings Of Tomorrowから"Scream of Anger"、シカゴ・ブルースのジョン・ブリムの曲"Ice Cream Man"が聴けます。何を歌わせてもジェフ・スコット・ソートは様になりますね。

最後にプロデュースですが、スウェーデン人のマッツ・リンドフォース(Lindforsをリンドフォルス、リンドフォッシュなどと表記している場合もありますが、スウェーデン語の正確な読みは不明です)が行っています。CandlemassやGloryなどのプロデュース、ミックスを担当したりしている他に、アレンジャー、ギタリスト、ボーカリストとしても仕事をしている才人です。このアルバムでも、"Women, Whiskey, And Songs"でギターを弾いています。また、ジョン・ノーラムのTotal Controlでも、バックボーカル・作曲・ミックスに関わっていますが、同アルバムにはマルセル・ヤコブ、ヨラン・エドマン、ピーター・ハーマンソンも参加しています。スウェーデンHR/HM界の人的交流の一端が窺えます。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

【Disk 1】
■Tracks
01. Break Your Chains (Jacob, Jakobsson)
02. Standin' On Fire (Jacob, Soto)
03. I'll Be Waiting (Jacob, Soto)
04. Dangerous (Jacob)
05. Just Between Us (Jacob, Soto)
06. System Of Power (Lindfors, Lorenz)
07. Queen (Jacob, Soto)
08. Lightning Strikes (Jacob, Soto)
09. Day By Day (Jacob)
10. Women, Whiskey, And Songs (Jacob)
11. Great Sandwich (Jacob)

■Personnel
Marcel Jacob - bass, rhythm guitars, drums and Keyboards
Jeff Scott Soto - lead vocals, backing vocals
Christopher Stahl - lead guitars
Mats Lindfors - lead and rhythm guitars on Track 10

Peter Hermansson – drums on Track 6 And 8
Mats Olausson – keyboards

Producer - Mats Lindfors

【Disk 2 - Bonus Disk】
■Tracks
01. Break Your Chains [demo] (Jacob, Jakobsson)
02. Under Fire [demo] (Jacob) 
03. If You Need Somebody [demo] (Jacob) 
04. Dangerous [demo] (Jacob)
05. Oceans [demo] (Jacob) 
06. Lighening Strikes [demo] (Jacob, Soto)
07. Day By Day [demo] (Jacob)
08. NJBBWD [demo] (Jacob)
09. Just Between Us [live] (Jacob, Soto)
10. Eternal Flame [live] (Norum, Jacob)
11. Scream of Anger [live] (Tempest, Jacob)
12. NJBBWD [live] (Jacob)
13. Let Me Love You [live] (Norum, Jacob)
14. Ice Cream Man [live] (Brim)




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