メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

マッツ・オラウソン

Second to None / Eclipse (2004)

0404Second To None









エリック・モーテンソン率いるスウェーデンのハードロック・バンドEclipseの2ndアルバム。エリック・モーテンソン(Vo, G)とマグナス・ヘンリクソン(G)は変わりませんが、ベースはフレドリック・フォルケ(Unleashed)、ドラムはマグナス・ウルフステットとなっています。他にサポート・メンバーとして、前作に続いてキーボードのマッツ・オラウソン、バック・ボーカルにヨハン・ファールベリ(Jaded Heart)が参加しています。

いかにもスウェーデンのメロディアスハードらしい音楽性でデビューしたEclipseですが、本作は1stに比べて若干ヘヴィさが増しているようです。それは良いとしても、メロディの魅力がイマイチで、曲の展開もちょっとチグハグかなと感じました。たとえば#1"Always Standing"のサビなんかはどう聴いても素っ頓狂だし、タイトル曲#3"Second to None"もヴァースはいいもののサビはあまりカッコいいとは言えないし、#5"I'll Ask for You"はやや退屈とさえ感じました。先走ってしまいますが、次作Are You Ready to Rockは文句無しの傑作となるわけで、本作はそこに至る試行錯誤の産物ではないかと思います。とは言うもののこのアルバムだって、そんじょそこらのバンドの及ばない高品質なもので、決して駄作・凡作の類ではありません。特に演奏面ではマグナス・ヘンリクソンのギターがますます本領発揮でブッ飛びまくっていて、これには思わずニヤニヤしてしまいます。

 評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Always Standing (Erik Mårtensson/Magnus Henriksson)
02. All I Do (Erik Mårtensson)
03. Second to None (Erik Mårtensson/Magnus Henriksson)
04. Streets of Gold (Erik Mårtensson)
05. I'll Ask for You (Erik Mårtensson/Magnus Henriksson)
06. Nothing Between Us (Erik Mårtensson/Magnus Henriksson)
07. Road to Forever (Erik Mårtensson)
08. Body and Soul (Erik Mårtensson/Magnus Henriksson)
09. Light of Day (Erik Mårtensson/Magnus Henriksson)
10. Season of Life (Erik Mårtensson/Magnus Henriksson)
11. Better World (Erik Mårtensson)
Bonus Track
12. Masterpiece Girl (Erik Mårtensson) 

■Personnel
Erik Mårtensson - Vocals, Guitar
Magnus Henriksson - Lead & Rhythm Guitar
Magnus Ulfstedt - Drums
Fredrik Folkare - Bass

Mats Olausson - Hammond, Mellotron, Synthesizers
Johan Fahlberg - Background Vocals

Producer - Eclipse

セカンド・トゥ・ナン
エクリプス
日本クラウン
2004-04-01

 

The Truth and a Little More / Eclipse (2001)

0323The Truth And A Little More









スウェーデンのメロハー・バンドEclipseの1stアルバム。このところ、ジェフ・スコット・ソート、ロバート・サールとのW.E.T.や、ロニー・アトキンスとのNordic Unionの他、プロデューサー、ソングライターとしても八面六臂の活躍を示し、すっかりシーンのキー・パーソンの一人となったエリック・モーテンソンのリーダー・バンドのデビュー作です。メンバーは、ボーカル、リズム・ギター、ベースを兼任するエリック・モーテンソンの他、リード・ギターのマグナス・ヘンリクソン、ドラムとキーボードのアンダース・ベルリンというトリオ編成。不完全な編成なのでメンバーだけではライブが出来ませんね。Work of Artといい、Houstonといい、近年のスウェーデンのバンドはこういう形態が多いのは何故なのかな。なお、本作は2001年にZ Recordsからリリースされましたが、既に廃盤となっていて再発もされず、長い間非常に入手しづらい状況が続いています。

さて音のほうですが、いかにも北欧風のすっきりしたメロディアス・ハードロック。先行するスウェーデンのバンドのエッセンスをあちこちに感じます。一番近いと思ったのはOut of This WorldPrisoners in ParadiseのころのEuropeで、エリック・モーテンソンの声質と歌唱スタイルもその当時のジョーイ・テンペストを思わせるものがあります。もちろん曲ごとのバラエティは豊富で、様々なタイプの楽曲が楽しめます。特徴的なのは、曲のアレンジが凝っていてスタイリッシュなこと。これがこのバンドを個性的に感じさせるポイントでしょうか。メロディ・ラインよりアレンジ、アンサンブルが耳に残る感じです。その点ではWork of Artにも通じていると思いました。全曲が佳曲以上の出来で、デビュー作にしてこの充実ぶりはさすがはエリック・モーテンソンです。ただ、文句なしの名曲というレベルの楽曲はないのが残念。

リード・ギターのマグナス・ヘンリクソンは、上手い上にちょっとトリッキーなとろもあって中々面白いと感じました。#8"Songs Of Yesterday"ではゲストのキー・マルセロ(ex-Europe)がエモーショナルなギター・ソロを聴かせてくれ、マグナス・ヘンリクソンとの違いが見えて興味深いです。ゲストと言えば、マッツ・オラウソンが一部の曲でキーボードを弾いていますが、この人2015年に亡くなっていたんですね。知りませんでした。

 評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Midnight Train (Erik Mårtensson/Magnus Henriksson)
02. The Truth (Erik Mårtensson)
03. The Only One (Anders Berlin/Erik Mårtensson)
04. Message of Love (Erik Mårtensson)
05. I Believe in You (Magnus Henriksson/Erik Mårtensson/Anders Berlin)
06. I Thought I Had It All (Erik Mårtensson)
07. The Way I Feel (Erik Mårtensson/Anders Berlin)
08. Songs of Yesterday (Erik Mårtensson/Magnus Henriksson)
09. A Little More (Erik Mårtensson)
10. Too Far (Magnus Henriksson/Erik Mårtensson)
11. How Many Times (Erik Mårtensson)
12. I Won´t Hide (Erik Mårtensson)

■Personnel
Erik Mårtensson - Vocals, All Rhythm Guitars, Bass
Anders Berlin - Hammond Organ, Keyboards, Drums, Percussion
Magnus Henriksson - Lead Guitars

Mats Olausson - Lead Keyboards on #11, All Keyboards on #9
Kee Marcello  - Lead Guitar on #8
David "Galen Gotlänning"Wallin - Backing Vocals
Madeleine Johansson - Cello on #8, #12
Anneli Magnusson - Backing Vocals on #10, #12

Producer - Eclipse, Fredrik Folkare

The Truth and a Little More
Eclipse
Z Records UK
2004-01-01

 

Freak / Baltimoore (1990)

0234Freak









「スウェーデンのロバート・プラント」、ビョルン・ローディン率いるBaltimooreの2nd。バンド名義となっていますが、ジャケットから伺えるように実質彼のソロ作品のようです。演奏とプロデュースはほぼ前作と同じメンツですが、Six Feet Underからビョルン・ローディンと活動してきたトーマス・ラーションは本作には参加していません。前作ではトーマス・ラーションがかなりソング・ライティングに関わっていましたが、今回は曲のほとんどをビョルン・ローディン単独で書いており、一部がギターのシュテファン・ベリストロムとの共作となっています。音のほうは前作とやや傾向が変わってハードポップ色は薄れ、AOR風、SSW風、またファンキーなものなどバラエティ豊かになっています。好き勝手にやっている感じはいかにもソロ作です。ただ、やはりツェッペリン風味というか、ロバート・プラントのソロ・アルバム的というか、それが全体を貫いているのは前作と同様です。ソフト目なサウンドなんですが、中々に味わい深いものがあります。もろツェッペリンの#2"Kahlua Confusion"、#6"Straight Line"とか、特にカッコいいです。どことなく"Stairway to Heaven"を思わせる#5"Without You"も、この人の「ツェッペリン愛」が感じられてイイです。ラストのビートルズの#10"Oh Darling"だけはつまらない。一曲だけ浮いちゃってるし、なんで入れたんだろう?選曲ミスじゃないかなぁ。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. Memories Calling (Lodin)
02. Kahlua Confusion (Lodin)
03. Dying Alone (Lodin)
04. Don't Stop Running (Lodin, Bergström)
05. Without You (Lodin)
06. Straight Line (Lodin, Bergström)
07. Day to Come (Lodin)
08. What It Is (Lodin)
09. Fly So Gently (Lodin, Bergström)
10. Oh Darling (Lennon, McCartney)

■Personnel
Bjorn Lodin - lead vocals
Jenny Wikström - bass, backing vocals on 10
Rolf Alex - drums, percussion, backing vocals on 10
Mats Olausson - organ, keyboard
Stefan Bergström - guitar, mandolin
Micke Andersson - backing vocals except on 10
Ulf Wahlberg - strings on 9

Anders Gustavsson - saxophone on 1
Jalle Lorensson - harmonica on 7
Mats Glenngård - violin on 3

Producer - Rolf Alex
Executive Producer - Ulf Wahlberg, Bjorn Lodin

Freak
Baltimoore
Spv Germany
2003-01-01

There's No Danger on the Roof / Baltimoore (1988)

0190There's No Danger on the Roof









スウェーデンのメロディアス・ハードロック・バンド、バルチモア(Baltimoore)の1stアルバム。バンドと言っても、元シックス・フィート・アンダー(Six Feet Under)のボーカリスト、ビョルン・ローディンのソロ・プロジェクトのようです。この人、ロバート・プラントをちょっとハスキーにしたような声で、歌い方もよく似ています。本作の中にはツェッペリンを思わせる楽曲もありますが、基本的にブルース色の強いハード・ポップといった印象です。北欧スウェーデンのキラキラ感より、イギリス的な陰りを感じさせるのが面白いと思います。演奏のほうもしっかりしており、特にギターはテクニカルかつブルージーでカッコいいです。ビョルン・ローディンのクセのある声質と歌唱が苦手な方もいそうですが、筆者はOKだったので結構楽しめました。

主なバンド・メンバーは、ABBA等でプレイしてきたロルフ・アレックス(ds、key)。本作のプロデュースも担当しています。それから、シックス・フィート・アンダーでもビョルン・ローディンと一緒だったトーマス・ラーション(gt)。後にグレン・ヒューズ・バンドに加わる人です。シュテファン・ベリストロム(gt)、この人は後にアルフォンゼッティに参加。ピアノとオルガンでクレジットされているマッツ・オラウソンは、ご存知イングヴェイ・マルムスティーン・バンドで活躍することになる鍵盤奏者。キーボードとストリングス、そしてエグゼクティヴ・プロデューサーのウルフ·ヴァールベリは、スウェーデン音楽界で数多くの仕事をしているプロデューサー、ソングライター。ラスト・オータムズ・ドリームのアルバムでもクレジットされています。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. My Blue Moon (Larsson, Hjalmarsson)
02. Can't Get You Out of My Mind (Larsson, Hjalmarsson)
03. Dance, Dance (Larsson, Hjalmarsson)
04. Hey Bulldog (Lennon, McCartney)
05. Rain (Lodin)
06. Ballerina (Lodin)
07. ...In Love (Lodin)
08. The Blues Is Just the Same (Wahlberg)
09. Little Bye (Lodin)
10. Happy Times (Lodin)

■Personnel
Bjorn Lodin - lead vocals

Rolf Alex - drums, keyboards, machines
Stefan Bergström - acoustic guitar
Thomas Larsson - acoustic and electric guitar
Lasse Jonsson - guitar
Mats Olausson - organ, piano
Ulf Wahlberg - keyboards, strings and string arrangement
Ulf Widlund - bass
Anders Åström - bass
Micke Andersson - backing vocals
Mikael Rickfords - backing vocals
Ronny "Dunderburk" Lahti - backing vocals

Producer - Rolf Alex
Executive Producer - Ulf Wahlberg

There's No Danger on the Roof
Baltimoore
SPV Germany
2009-02-10

Ceremony of Innocence / Radioactive (2001)

0188Ceremony Of Innocence









なんと来年(2015年)にまさかの4作目がリリースされるらしいトミー・デナンダーのメロハー/AORプロジェクト、レディオアクティヴの1stアルバムです。時に賞讃を込めて、時に揶揄を込めて「スウェーデンのルカサー」などと言われるトミー・デナンダーですが、本作ではルカサー以外の新旧TOTOのメンバーを総動員!他にもアメリカ、スウェーデンのミュージシャンが多数参加しています。全て紹介すると大変な字数になるので主なところだけあげておくと、まずボーカルにジェフ・パリス、ボビー・キンボール、ジョセフ・ウィリアムス、ファーギー・フレデリクセン、ジェイソン・シェフ、アレックス・リガートウッド、イエア・ロニング、フィー・ウェイビル、ジム・ジットヘッドetc、キーボードにはデヴィッド・ペイチ、デイヴィッド・フォスター、ランディー・グッドラム、マッツ・オラウソンetc、ギターにはマイケル・トンプソン、ブルース・ガイチetc、ベースはマイク・ポーカロ、デヴィッド・ハンゲイト、ニール・スチューベンハウス、エイブラハム・ラボリエルetc、ドラムはジェフ・ポーカロ、マーカス・リリィクイスト、ヴィニー・カリウタetc。数多くのプロジェクトに関わっているトミー・デナンダーですが、メンツの豪華さではこのレディオアクティヴがダントツなんではないでしょうか。

曲調はAOR寄りのメロディアスなハードロックといったものが多く、トミー・デナンダーお得意の路線だと思います。いや~、それにしても歌も演奏もため息が出るほどみんな上手い。当たり前なんですが。特に、ポーカロ兄弟がリズム・セクションを担当している曲は、ついリズムにばっかり耳が行ってしまいます。楽曲の完成度も高く、これはもう文句の付けようがないアルバムです。リリースは2001年ですが、ジェフ・ポーカロは1992年に亡くなっているので、レコーディング自体は91~92年に行なわれたようです。15ヶ所ものレコーディング場所がクレジットされていることから、顔を合わせてのレコーディング・セッションは行なわれず各地で録ったパートごとのトラックをミックスしていることが分かりますが、これも考えただけで気の遠くなるような作業です。

なお、本作オリジナル盤はドイツのMTMから2003年にリリースされていますが、2013年になってRadioactiveの1st~3rdにそれぞれボーナス・トラック2曲(1曲は日本盤ボーナス・トラックだったもの、1曲は未発表曲)ずつを追加したリイッシュー3枚組Legacy が英国Escape Musicから発売されています。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. The Story of Love (Tommy Denander)
02. Crimes of Passion (Tommy Denander, Bobby Kimball)
03. On My Own (Tommy Denander, Jonna Söderlund, Fergie Frederiksen)
04. Grace (Tommy Denander, Ricky B. Delin)
05. Waiting for a Miracle (Tommy Denander, Ricky B. Delin)
06. L. A. Movies (Tommy Denander, Ricky B. Delin)
07. Ceremony of Innocence (Tommy Denander, Fergie Frederiksen)
08. Liquid (Tommy Denander)
09. Haunt Me Tonight (Richard Marx, Bruce Gaitsch, Fee Waybill)
10. A Case of Right or Wrong (Tommy Denander, Fee Waybill)
11. Silent Cries (Tommy Denander)
12. When You're in Love (Tommy Denander, Bobby Kimball)
※日本盤&Legacyボーナス・トラック
13. Remember My Conscience (Tommy Denander, Jonna Söderlund)
Legacyボーナス・トラック
14. Shooting Stars (Tommy Denander, Robert Hart)

Producer - Tommy Denander

Ceremony of Innocence
Radioactive
Mtm Music
2009-06-01

Relaunch / Houston (2011)

0089Relaunch
スウェーデンのメロハー/AORユニット、ヒューストンの2作目。全9曲中、6曲がカバー、2曲が1st収録曲のアコースティック・バージョンで、新曲は1曲のみですので、実質カバー・アルバムです。カバーされているのは、ダコタ、マイケル・ボルトン、エアレース、タッチ、ニュー・イングランド、ローラ・ブラニガン。もちろん曲が悪いはずはありません。しかし、まだ若い新人なのになんで2作目がカバー・アルバム?それなりのキャリアがあり、ミュージシャンとしての個性がある程度知られていてこそ、その人たちが元曲をどう料理するか興味が湧くのではないでしょうか。その点いささか疑問です。

ヒューストンはフレディ・アレン(ds)、ハンプス・ハンク・エリックス(vo)の二人だけの編成ですので、リッキー・B・デリン、トミー・デナンダー、マッツ・オラウソン、トーマス・ヴィクストロムなどスウェーデンのミュージシャン達が全面的にバックアップしているのは前作と同じ。それに加えて、タッチの"Don't You Know What Love Is"では、マーク・マンゴールド本人までがキーボードとボーカルで参加しています。いや~、これは嬉しかったですね。また、" Brief Encounter"でもエアレースのローリー・マンズワースがギターを弾いています。

前作のレビューでは、楽曲は抜群なのにサウンドが悪すぎるという感想を書きましたが、残念ながら本作も全く同様の印象です。スーパーの店内BGMやローカルTV局のCMを思わせるチープな音、たどたどしいドラム。。。なんでこうなるのかな。YouTubeにアップされているヒューストンのライブ動画をいくつか見ましたが、ホームビデオの音というのを差し引いても、歌唱・演奏とも安心して聴ける水準ではありません。アルバム裏ジャケの写真と同じメンツなので、バンド・メンバーはほぼ固定しているようです。("Don't You Know What Love Is"の動画で、みんな若そうなメンバー中一人だけオジさんが歌っていますが、プロデューサーのリッキー・B・デリンです。)どういう大人の事情で「二人のユニット」という不完全な編成になっているのか知りませんが、やっぱりフル編成のパーマネントなバンドでリハと曲作りに精進してほしい。他力本願のアルバムを粗製乱造するのではなく、バンド一体となって心血を注いだ作品を聴かせてほしい。同郷、同世代のH.E.A.Tのように。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. Runaway (Jerry Hludzic & Bill Kelly ~ originally recorded by Dakota)
02. Carrie (Michael Bolton ~ originally recorded by Michael Bolton)
03. Brief Encounter (Laurie Mansworth ~ originally recorded by Airrace)
04. Don't You Know What Love Is (Mark Mangold ~ originally recorded by Touch)
05. Don't Ever Wanna Lose Ya (John Fannon ~ originally recorded by New England) 
06. Didn't We Almost Win It All (Brian BecVar & Laura Branigan ~ originally recorded by Laura Branigan) 
07. Without Your Love (Ricky B. Delin)
08. Truth Slips [Acoustic] (Ricky B. Delin & Freddie Allen)
09. 1000 Songs [Acoustic] (Ricky B. Delin & Johan Kronlund)

■Personnel
Hampus Erix - lead and backing vocals
Freddie Allen - drums

Ricky B. Delin - keyboards, synth bass, and backing vocals, duet vocal on 4
Jay Cutter - keyboards on 4
Mats Olausson - keyboards on 3
Tommy Denander - guitars
Laurie Mansworth - guitars on 3
Mark Mangold - keyboard solo, backing vocals, and duet vocal on 4
Lasse Falck - bass on 1, 2, 6
Soufian Ma'Aoul - bass on 3, 4, 5
Tomas Vikström - backing vocals on 4, 7
Elize Ryd - backing vocals on 7

Producer - Ricky B. Delin

Tracks 8 & 9
Performed by Hampus Erix, Helena Alsterhed and Jay Cutter
Produced by Houston 

Houston / Houston (2010)

0068Houston
スウェーデンのメロハー/AORシーン期待の新人、ヒューストンのデビュー・アルバムです。新人と言ってもずいぶん年季の入った新人も多い中、ヒューストンはピッカピカの若者ということでうれしくなります。どういう訳か、バンドの形態をとらずフレディ・アレン(ds)とハンプス・ハンク・エリックス(vo)の2人のユニットとなっています。メンツが足りない分、レコーディングにはスウェーデンの名だたるミュージシャン達が参加しているのが注目点です。

主だった参加メンバーを挙げると、ギターにトミー・デナンダー。言うまでもなく、数え切れないほどのグループ、プロジェクトに携わってきた北欧メロハー/AOR界きっての仕事人です。キーボードには、イングヴェイ・マルムスティーンのバンドを皮切りに、これまた数多くのセッションをこなしてきたマッツ・オラウソン。バッキング・ボーカルに、トミー・デナンダーとTalk of The Town、Speedy Gonzalesで共演してきたトーマス・ヴィクストロム。このアルバムの#8"She's a Mystery"ではハンプス・ハンク・エリックスとのデュエットも聴かせてくれます。そして、プロデュースとキーボード、ソングライティングのほとんどに関わっているリッキー・B・デリン(Ricky B. Delin)、彼がこのプロジェクトの中心人物のようです。ミュージシャン/コンポーザー/プロデューサー/エンジニアーとして、Sayit、Prisonerなど数多くのメロハー/AOR系のアルバムでトミー・デナンダーと一緒に仕事をしてきています。

これだけのバックアップ体制で制作されたアルバムなわけですが、まるで自主制作デモ音源のような印象を受けてしまいました。ラジオのように平板なサウンド・プロダクション、一本調子の楽器アンサンブル、生気のないドラム、これらが重なって、なんだかDTMに毛が生えた程度の音にしか聴こえません。キーボード主体のライトな80年代AORを再現しようとしている意図は窺えますが、それにしてもあまりにもサウンドに勢いがないのです。トミー・デナンダーのギターがいつも以上に歪んでいて、まるでビンテージ物のFuzzでも踏んでいるようにノイジー過ぎるのも気になります。

ただし、楽曲自体は抜群に優れています。そこはかとない哀愁を漂わせたメロディが非常に魅力的ですし、ボーカルのハンプス・ハンク・エリックスのナイーブな歌唱との相乗効果もあり、どの曲も名曲・佳曲と言って差し支えない水準です。この楽曲群を隅々まで気を配ってアレンジしなおし、リズムセクションを強化して、最高の環境で再レコーディングしたら、とんでもない傑作になりそう。そんなことばかり頭に浮かんで、聴くたびに割り切れなくてモヤモヤしてしまうアルバムです。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. Pride (Allen, Delin)
02. Truth Slips (Allen, Delin)
03. Hold On (Allen, Delin)
04. I'm Alive (Allen, Delin)
05. One Chance (Allen, Delin)
06. Give Me Back My Heart (Kronqvist, Delin, Denander)
07. Misery (Delin, Denander)
08. She's a Mystery (Laroxx,Sandrock)
09. Now (Delin, Kronlund)
10. 1000 Songs (Kronlund, Delin)
Bonustracks
11. Under Your Skin (Erix, Delin)
12. Chasing the Dream (Allen, Delin)

■Personnel
Freddie Allen - drums, keyboards on 3
Hampus Hank Erix - lead & backing vocals

Lasse Falck - bass (except 6)
Kristoffer Hogberg - bass on 6
Mats Olausson - keyboards on 1, 6, 7, 8, 9, 10
Ricky B. Delin - keyboards on 1, 2, 3, 5, 6, 8, 9, 10, syn-drums on 4, acoustic guitars on 9, backing vocals on 3, 4, 10
Jay Cutter - keyboards on 3, 7
Johan Kronlund - keyboards on 10, guitars on 10, backing vocals on 10
Sandrock - FX on 8
Tommy Denander - guitars on 1, 3, 4, 5, 6, 7
Martin Fogelström - guitars on 2
Michael Santunione - guitars on 8
Fabes - guitars on 4, 9
Krille Eriksson - guitars on 10
Kristoffer Langerström - backing vocals on 1, 5, 6, 9
Helena Alsterhed - lead vocals on 2
Tomas Vikström - backing vocals on 2, 4, lead vocals on 8

producer - Ricky B. Delin
executive producer – Dave Laroxx 

Houston
Houston
Spinefarm
2010-12-13

 

Wonderland / Kharma (2000)

0040Wonderland

スウェーデンのメロハー・グループ、カーマ(Kharma)のデビュー・アルバム。メンバーはヨラン・エドマン(vo)、ドラガン・タナスコヴィック(gt)、アティラ・サーボ(key)、ヨエル・スタランダー(ba)、イムレ・ダウン(ds)。ライナーノーツによれば、Kharmaはエドマン、タナスコヴィック、サーボの3人が1980年代の中ごろに組んでいたVanessaというグループが前身となっています。Vanessaはデモ作りまではいったもののレーベルとの契約には至らず、エドマンがジョン・ノーラム、イングヴェイ・マルムスティーンといった大物に抜擢されて以降は活動が停滞。自然消滅状態だったKharmaですが、ドイツのメロハー・レーベルMTM Musicからタナスコヴィックに声がかかり、エドマン、サーボもKharma再始動に同意、長いブランクを経てついにデビュー・アルバムが完成したという、なんだか泣ける話です。せっかくの初アルバムなのに、アティラ・サーボは個人的事情で中々レコーディングに参加できなかったそうで、ほとんどのキーボード・パートを元インギー・バンドのマッツ・オラウソンが弾いています。ドラムのイムレ・ダウンは最近ミカエル・アーランドソンのSaluteでも叩いていますが、そのミカエル・アーランドソンがこのアルバムにバッキング・ボーカルで2曲参加しています。ヨラン・エドマンは、Kharmaは自分にとってもっとも情熱を傾けるバンドで、他のプロジェクトに参加するのはKharmaに注ぎ込む資金を得るためとまで言っていたそうですが、今のところこのアルバムが唯一の作品となっています。

オープニングの"Free Yourself"は、ホーンの入ったイントロ、ポール・ロジャース風のブルージーなヨラン・エドマンの歌唱、愁いを帯びたメロディ、全て筆者好みで「おおーっ」となりました。しかし。。。サビの転調でガクっと。。。なんでそのまま行かない?アルバム全体がそんな不完全燃焼の繰り返しで、非常に欲求不満に陥ります。明らかにクイーンの影響を感じさせる煌びやかなコーラス、ビートルズ的くすぐり、大げさすぎるキーボード、曲の勢いを殺すキメと転調、いらないものばかりです。良いメロディと良い演奏がそこかしこにあるのに、実にもったいない。ただし、#7"Part Time Lovers"だけは、最後までフリーかバドカンかと思うほど重厚で、オルガンもギター・ソロもそれ風でとことんかっこいい!

ヨラン・エドマンのボーカルは、あるときはポール・ロジャース、またあるときはグレン・ヒューズ、フレディ・マーキュリーみたいに聴こえます。様々な歌い方ができるのは良いことですが、1枚のアルバムの中でコロコロ変わるのはいかがなものか。ドラガン・タナスコヴィックの野太くて歌心のあるギターは1970年代の名ギタリストたちを思い起こさせ、非常に筆者好みなのですが、このKharma以外にはギタリストとしての活動はなく、もっぱらマスタリングやレコーディング・エンジニアとして裏方で働いているようです。もったいないことだらけで悲しくなってしまいます。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Free Yourself
02. Wonderland
03. Knowing You
04. Burn Forever
05. In Chains
06. Standing Alone
07. Part Time Lovers
08. Angel Eyes
09. Ray of Sunshine
10. Spell on You
11. Don't Close Your Eyes
12. Hold On
13. Wings of History
※日本盤ボーナストラック
14. Cold as Ice

All sogs written by Atilla Szabo, Dragan Tanaskovic, Göran Edman

■Personnel
Göran Edman – lead and backing vocals
Dragan Tanaskovic – guitars
Atilla Szabo – keyboards, piano, organ, backing vocals
Joel Starander – bass
Imre Daun – drums, percussion

Mats Olausson – keyboards, piano, organ
Mikael Erlandsson – backing vocals on 11, 12
Jonas Simonsson – flute on 2, 9
Eleanore Andersson – backing vocals on 6, 13
Jan Anders Bjerger – trumpet on 1, 9
Peter Johansson - trombon on 1, 9
Anders Börjesson - sax on 1, 9
David & Mathias Szabu - vocals on 10

Producer - Dragan Tanaskovic & Kharma

Wonderland
Kharma
Steamhammer Europe
2006-11-27

Talisman / Talisman (1990)

0008Talisman

イングヴェイ・マルムスティーンのライジング・フォース時代の同僚である故マルセル・ヤコブとジェフ・スコット・ソートが結成したタリスマンの1st。今回は、新たにリマスターされ、さらにデモ音源とライヴ音源を収録したボーナスCD付き2枚組のご紹介です。

ハードな演奏に切ないメロディが乗る"Break Your Chains"、ポップでキャッチーな"I'll Be Waiting"、AORテイストの哀愁バラード"Just Between Us"、高揚感満点の"Queen"などなど、このアルバムは名曲が目白押しです。ジェフ・スコット・ソートの伸びやかでソウルフルなボーカル、マルセル・ヤコブのテクニカルなベースはパーフェクトとしか言いようがありません。キーボードはやはりインギーとの仕事で知られるマッツ・オラウソン、コンパクトにまとめられた印象的なギター・ソロはクリストファー・シュタール、ドラムは2曲だけ220 Voltのピーター・ハーマンソンが叩いていますがその他は打ち込みのようです。ラスト前の、タリスマンに似合わないロックンロール曲"Women, Whiskey, and Songs"はいらなかったかも。それだけが小さなマイナス・ポイントですが、とにかくこのアルバムはメロディアス・ハードを語るとき欠かすことのできない名盤だと思います。

さて、ボーナスCDですが、デモ音源が8曲、ライブ音源が6曲収められています(なお近年発売されたTalisman: 2012 Deluxe Editionにはライブ音源が8曲収録されています)。デモは、曲のタイトル、メロディ、アレンジなど多少異なっていますが、本編と同じ曲をヨラン・エドマンが歌っています。彼はこの後イングヴェイ・マルムスティーンをはじめ数多くのバンド、プロジェクトで活躍するわけですが、このときはまだ元Madisonという経歴しかない頃です。このデモ音源を聴く限り、繊細でいかにも北欧スウェーデンを感じさせるヨラン・エドマンよりも、豪快なジェフ・スコット・ソートのほうがタリスマンのサウンド、メロディに合っているように思えます。この後マルセル・ヤコブとジェフ・スコット・ソートは長年にわたってコンビを組むので、よほど二人の相性は良かったんでしょう。ライブのボーカルはジェフ・スコット・ソートです。ビデオカメラの音声トラックを音源にしているので音質は悪いです。タリスマンの曲のほか、ジョン・ノーラムのTotal Controlから"Eternal Flame"と"Let Me Love You"、ヨーロッパのWings of Tomorrowから"Scream of Anger"、シカゴ・ブルースのジョン・ブリムの曲"Ice Cream Man"が聴けます。何を歌わせてもジェフ・スコット・ソートは様になりますね。

最後にプロデュースですが、スウェーデン人のマッツ・リンドフォース(Lindforsをリンドフォルス、リンドフォッシュなどと表記している場合もありますが、スウェーデン語の正確な読みは不明です)が行っています。CandlemassやGloryなどのプロデュース、ミックスを担当したりしている他に、アレンジャー、ギタリスト、ボーカリストとしても仕事をしている才人です。このアルバムでも、"Women, Whiskey, and Songs"でギターを弾いています。また、ジョン・ノーラムのTotal Controlでも、バックボーカル・作曲・ミックスに関わっていますが、同アルバムにはマルセル・ヤコブ、ヨラン・エドマン、ピーター・ハーマンソンも参加しています。スウェーデンHR/HM界の人的交流の一端が窺えます。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

【disc1】
■Tracks
01. Break Your Chains (Jacob, Jakobsson)
02. Standin' on Fire (Jacob, Soto)
03. I'll Be Waiting (Jacob, Soto)
04. Dangerous (Jacob)
05. Just Between Us (Jacob, Soto)
06. System of Power (Lindfors, Lorenz)
07. Queen (Jacob, Soto)
08. Lightning Strikes (Jacob, Soto)
09. Day by Day (Jacob)
10. Women, Whiskey, and Songs (Jacob)
11. Great Sandwich (Jacob)

■Personnel
Marcel Jacob - bass, rhythm guitars, drums and Keyboards
Jeff Scott Soto - lead vocals, backing vocals
Christopher Stahl - lead guitars
Mats Lindfors - lead and rhythm guitars on Track 10

Peter Hermansson – drums on Track 6 and 8
Mats Olausson – keyboards

Producer - Mats Lindfors

【disc2 - Bonus Disc】
■Tracks
01. Break Your Chains [demo] (Jacob, Jakobsson)
02. Under Fire [demo] (Jacob) 
03. If You Need Somebody [demo] (Jacob) 
04. Dangerous [demo] (Jacob)
05. Oceans [demo] (Jacob) 
06. Lighening Strikes [demo] (Jacob, Soto)
07. Day by Day [demo] (Jacob)
08. NJBBWD [demo] (Jacob)
09. Just Between Us [live] (Jacob, Soto)
10. Eternal Flame [live] (Norum, Jacob)
11. Scream of Anger [live] (Tempest, Jacob)
12. NJBBWD [live] (Jacob)
13. Let Me Love You [live] (Norum, Jacob)
14. Ice Cream Man [live] (Brim)

タリスマン
タリスマン
ポニーキャニオン
1999-01-20

TALISMAN
TALISMAN
TALISMAN/DELUXE EDITIO
2017-06-16


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