メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。

ブルース・ビスランド

Forever In Time / Praying Mantis (1998)

0273Forever In Time









1998年リリースされたPraying Mantis(プレイング・マンティス)の5thアルバム。前作To The Power Of Ten は、ダミ声で歌い回しも個性的なゲイリー・バーデンを起用し、楽曲もこれまでのマンティスからするとやや異色で、ちょっと冒険的要素のあるアルバムでしたが、本作はいかにもマンティスらしい作品となっています。新ボーカルのトニー・オホーラは、癖のない伸びやかな歌唱でA Cry for the New World のコリン・ピールと同タイプ、楽曲も叙情的で哀愁に満ちた完全マンティス路線で、ファンには堪えられません。流麗なツイン・リード・ギター、分厚いハーモニー・ボーカルは、伝説の1stTime Tells No Lies を思わせ、メロディ・ラインの美しさ、クサさはA Cry for the New World に匹敵。これはもうマンティス史上屈指の名作と断言できます。ただ、あまりにプレマン度が高く、期待通りの楽曲が揃っているため、マンティス愛の深すぎる筆者としては「予定調和」という言葉が脳裏に浮かびました。マンティスらしさを保ちつつも、期待を裏切って欲しい、過去の名盤を凌駕して欲しい、このアンビバレンツな思いを共有していただける方はいるかなぁ。。。まあそんなわけで、以下はどうしてもマンティスだと力が入ってしまう各曲レビューです。

#1"Wasted Years"
柔らかなキーボードに導かれてスタートする、典型的マンティス流叙情メロハー。いいメロディだなぁ。しかし全曲そうなんですが、ドラムの音が軽く、スネアに至ってはデンデン太鼓のようで情けないことこの上ない。対照的にベースはゴリゴリし過ぎ。本作唯一の欠点です。プロデューサーのクリス・タンガリーディス、責任取れ!

#2"The Messiah"
うっとりするようなツインリードに続いて、中近東風な音階を使った暗めの歌い出し、そして明るい雰囲気のブリッジから美しく力強いコーラスへというドラマチックな展開が秀逸。終盤のギター・ソロもリリカルで美しい。作詞はゲイリー・バーデンなので、彼が在籍時に出来ていた曲と思われます。ゲイリー・バージョンがもしあるのなら、それも聴いてみたいような、みたくないような。。。

#3"Best Years"
イントロのツインリード・ギター・フレーズからしてこれでもかというくらい感傷的で、ヴァースもコーラスもメロディはあまりにクサく、あまりに歌謡曲的。これは褒め言葉です。80年代にチェッカーズとかが日本語でカバーしたら、ザ・ベストテン連続4週1位間違いなしでしょう。本作のハイライト曲であり、マンティスの数多い名曲の中でも1、2を争う出来。マジにうっすら涙ぐんでしまうことがある曲です。クレジットを見ると、デニス・ストラットンが作曲のイニシアチブをとっているんですね。過ぎ去った青春を追想するほろ苦い歌詞も彼の書いたもの。ライオンハートやPredator in Disguise の良くないイメージがあったけど、見直したぜ、デニス!!
「この曲を聴け!」というサイトで、筆者と同じようにマンティス病に罹患した人達が色々書いていますが、一々納得で思わず笑ってしまいました。

#4"Blood Of An Angels"
この曲もメロディが素晴らしいです。ブリッジ部分や、コーラスが特に印象的で、一度聴いたら忘れられません。ライブでみんなで大合唱したくなる名曲です。

#5"Valley Of The Kings"
歌詞の壮大なテーマにふさわしいスケールの大きな曲。後半テンポ・アップしてからのツイン・リード・ギターと、"ride on warrior~"と繰り返すコーラスは、曲調は違うもののツイン・リードの先輩格Wishbone Ashの"Warrior"を思い出させます。

#6"Changes"
これもジャパニーズ歌謡曲的で、耳にしっくり馴染みます。サビがちょっと弱いけれど、ヴァース部分のメロディはかなり良いです。曲の最後のほうで、ボーカルとギターが絡み合うところが哀愁も高揚感も最高潮でグッと来るなぁ。

#7"Man Behind The Mask"
#2"The Messiah"と同様、作詞がゲイリー・バーデンなので、彼が歌うのを前提に作られたのでしょう。そのせいか、なんとなくTo The Power Of Ten の作風に近いものを感じます。この曲はなんと言ってもサビの"あーい、あーい"が最高。やはりライブで大合唱したくなる曲です。リード・ギターも壮絶なプレイを聴かせるというより、楽曲のアンサンブルに組み込まれていて、そこがマンティスらしくて好ましいです。

#8"Remember My Name"
このアルバム唯一のスローなバラード曲。ここまでずっと名曲の目白押しで息もつけない展開でしたが、ちょっと一段落です。書いたのはトニー・オホーラで、やはりトロイ兄弟の楽曲とは違う感じがしますね。このアルバムは6分、7分の長尺の曲が多く、この曲も6分以上あります。悪くないメロディですが、この曲に限っては長尺ゆえの冗長感が否めないのが惜しい。

#9"The Day The Sun Turned Cold"
ムード歌謡ですかっていう甘いイントロから一気に加速して、マンティスには珍しいケルティックなメロディへ、そしてフラメンコ風のギター・パートへと、目まぐるしくドラマチックに変化する曲展開が素晴らしい。

#10"Forever In Time"
怒涛のように名曲・佳曲が続いた本作を締めくくるのはタイトル・トラックで、これまたマンティス史上に残る名曲。トロイ兄弟が亡くしたばかりの父親に捧げた曲で、美しく、哀しく、劇的で、しかもスケールが大きい。最後のサビで一度だけ歌われる、"forever, forever, forever, forever in time"というフレーズに込められた万感の思いに、魂を揺さぶられてしまいます。一生の宝物になる歌に出会えて良かった。 

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Wasted Years (music : C. Troy/T. Troy lyrics : C. Troy)
02. The Messiah (music : C. Troy/T. Troy lyrics : G. Barden)
03. Best Years (music : D. Stratton/T. Troy/C. Troy lyrics : D. Stratton)
04. Blood Of An Angels (music : C. Troy lyrics : C. Troy)
05. Valley Of The Kings (music : C. Troy/T. Troy lyrics : C. Troy)
06. Changes (music : T. Troy/C. Troy lyrics : C. Troy)
07. Man Behind The Mask (music : C. Troy/T. Troy lyrics : G. Barden)
08. Remember My Name (music : T. O'Hora lyrics : T. O'Hora)
09. The Day The Sun Turned Cold (music : C. Troy lyrics : C. Troy)
10. Forever In Time (music : C. Troy lyrics : C. Troy)

■Personnel
Tony O'Hora - Lead and Backing Vocals
Chris Troy - Bass Guitar, Backing Vocals, Keyboards
Bruce Bisland - Drums, Percussion
Dennis Stratton - Guitars, Backing Vocals
Tino Troy - Guitars, Backing Vocals, Keyboards

Jazz O'Hora - Additional Backing Vocals
Jan Parker - Additional Backing Vocals
Paul Heeren - Additional Backing Vocals

Producer - Chris Tsangarides, Praying Mantis

 

To The Power Of Ten / Praying Mantis (1995)

0110To The Power Of Ten
1995年にリリースされたプレイング・マンティスの4枚目のフルレンス・アルバム。3rdアルバムA Cry For The New World で歌ったコリン・ピールも、前作のミニ・アルバムOnly The Children Cry に起用されたマーク・トンプソン・スミスも立て続けに脱退、本作ではマイケル・シェンカー・グループのゲイリー・バーデンがボーカルを担当しています。マンティスの面々とゲイリー・バーデンは共に、ブリティッシュHR/HM系ミュージシャンが顔を揃えたTrue Brits企画に参加していること、80年代の一時期ブルース・ビスランドとゲイリー・バーデンがStatetrooperのバンド・メイトだったこと、この辺りが接点なのかなと想像します。いずれにしても、当時はゲイリー・バーデンのマンティス加入は意外に受け止められたようですが、意外に意外ではなかったのかもしれません。

さて、ゲイリー・バーデンのボーカリストとしての技量は、MSG時代から常にある種の侮蔑を伴って語られるのが当然という風潮があります。要するに下手糞だと。しかし筆者は、少なくともスタジオ録音盤で彼が並以下のボーカリストだと感じたことはありません。むしろそのねちっこい歌い回しには妙味があるし、特に叙情的な楽曲を歌わせたとき歌メロをより魅力的にする力は並以上だと思っています。なんだかんだ言ってマイケル・シェンカーが彼を度々起用するのは、マイケル・シェンカーの叙情性とゲイリー・バーデンの歌い回しの相性が良いからでしょう。ということは、叙情性がウリのトロイ兄弟とゲイリー・バーデンの組み合わせもまた良好ということ。今回も全曲レビューでいきたいと思います。

1曲目の"Don't Be Afraid Of The Dark"から哀愁と高揚感がいきなり最高潮の名曲。サビでリズムの刻みが1/2になるところが前作A Cry For The New World のオープニングを飾った名曲"Rise Up Again"を思わせます。クライマックスでまた刻みが倍になるのもたまらなくカッコいい。自然な転調で曲の表情を変える技も相変わらず見事です。本作のハイライト曲の一つでしょう。

2曲目"Bring On The Night"も哀愁メロディが秀逸。ところどころにゲイリー・バーデンならではの歌い回しが感じられて、つい初期MSGを思い出してしまいます。サビのドラマチックなメロディと呼応する力強いバッキング・ボーカルに鳥肌が立つということで、これも名曲決定。

3曲目はテンプテーションズのカバー"Ball Of Confusion"。なんでマンティスがソウルのカバー?誰でも抱く疑問だと思いますが、国内盤ライナーによると、日本市場以外では鳴かず飛ばずのバンドが新たな活路を見出そうとした試行錯誤の産物らしい。元曲そのものがロック調なのでそれほど違和感はありませんが、上出来とはやはり言い辛いかな。

4曲目"Welcome To My Hollywood"で再びマンティス節炸裂。イントロがアースシェイカー(筆者の評価ではジャパメタ随一のメロディアスハード・グループ)の誇る名曲"More"みたいです。とにかくリードギターのメロディも歌メロもただただ切なく美しい。歌詞もとても内省的で、それが哀愁のメロディに乗ることでプレイング・マンティスの際立った個性となっていると思います。

5曲目"Another Time, Another Place"はティノ・トロイお得意のスパニッシュ風ギターがフィーチャーされたスロー・テンポの佳曲。

6曲目はタイトル・ナンバー"To The Power Of Ten"。ヘヴィなリフに導かれるウォーキング・テンポのロックン・ロール曲です。なんと言ってもサビのカッコよさがピカイチ。おそらく全員でのコーラスだと思いますが、横一線に並んだメンバーがのしのし歩いてくるような迫力があります。これも間違いなく名曲。

7曲目"Little Angel"は、最初期(1981年)のボーカリストだったトム・ジャクソンがライティングに関わっている曲。悪くないのですがあまりにあっけらかんとし過ぎていて、マンティスのイメージとはちょっと違うかなと感じました。

8曲目"Victory"はトロイ兄弟のみで書かれた曲。同じメジャー・キーでも7曲目とはずいぶん違います。歌詞もそうなのですが、爽やかさや明るさの中にも消しがたい哀しみの色が混じり込んでいるのがプレイング・マンティスというバンドの持ち味なのだと思うのです。

9曲目は前作ミニ・アルバムのタイトル曲だった"Only The Children Cry"。まさにこのバンドの真骨頂の哀愁チューンです。前任ボーカルのマーク・トンプソン・スミスがバッキング・ボーカルにクレジットされているのは、リード・ボーカルのトラックのみゲイリー・バーデンに差し替えられているからでしょうか。とにかく、マンティスの名曲の一つであることは間違いありません。

10曲目"Night And Day"はトロイ兄弟が作曲に関与しておらず、おそらくデニス・ストラットンとゲイリー・バーデン主導で書かれた曲です。筆者はデニス・ストラットンの作曲センスには否定的な意見を持っているのですが、この曲に関しては全く文句無しです。本作全体を貫く特色である「哀愁メロディ+力強く分厚いバッキング・ボーカル」が鮮明に示されている曲です。

11曲目"Angry Man"は再びトム・ジャクソンとの共作曲。新しい境地を模索するバンドの意向は理解できますが、何もかも中途半端な曲です。アルバムの締めくくりを飾る曲としてはいかにもそぐわないと感じざるを得ません。

さて。。。筆者はこのブログで星をいくつにするかは割と気軽に決めているのですが、このアルバムに関してはちょっと悩みました。良い曲も多いけれど、全曲名曲と言って過言ではない最高傑作A Cry For The New World に比べれば明らかに落ちます。ん~。。。ん~。。。よし、もう贔屓の引き倒しということで星5つで勘弁してください!!

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Don't Be Afraid Of The Dark (Troy, Troy)
02. Bring On The Night (Troy, Troy, Barden, Bisland, Stratton)
03. Ball Of Confusion (Norman Whitfield, Barrett Strong)
04. Welcome To My Hollywood (Troy, Troy)
05. Another Time, Another Place (Troy, Troy)
06. To The Power Of Ten (Goodman, Troy, Troy, Barden, Bisland, Stratton)
07. Little Angel (Jackson, Troy, Troy, Barden, Bisland, Stratton)
08. Victory (Troy, Troy)
09. Only The Children Cry (Troy, Troy, Stratton)
10. Night And Day (Stratton, Bisland, Barden)
11. Angry Man (Jackson, Troy, Troy, Barden, Bisland, Stratton)

■Personnel
Gary Barden - Lead and Background Vocals
Tino Troy - Lead, Rhythm and Acoustic Guitars, Keyboards, Background Vocals
Dennis Stratton - Lead, Rhythm and Slide Guitars, Background Vocals
Chris Troy - Bass Guitar, Background Vocals
Bruce Bisland - Drums, Percussion, Background Vocals 

Ian Gibbons - Additional Keyboards
David Brant - Additional Background Vocals on 6
Mark Thompson-Smith - Additional Background Vocals on 9

Producer - Norman Goodman 

 

Only the Children Cry / Praying Mantis (1993)

0081Only the Children Cry
1993年、2度目の来日公演に合わせてリースされたプレイング・マンティスのミニ・アルバム。前作A Cry for the New World で見事にマンティスの専任ボーカリストを務めたコリン・ピールは、ミュージカルの仕事のために脱退、本作では新ボーカリストとしてマーク・トンプソン・スミスが録音に参加しています。彼はイギリスのマイナーなHR/HMバンドを転々としてきたボーカリストで、後にLionsheart(デニス・ストラットンのLionheartではない)を結成するOwers兄弟のいたFuryに在籍したこともあったようです。本作でも悪くない歌唱を披露していますが、結局来日公演後に脱退、ボーカリストが定着しないというプレイング・マンティスの歴史が繰り返されることになります。

このミニ・アルバムに収録されているのは全4曲。"Only The Children Cry"は新曲で、モロに日本人好みの甘く美しいイントロが印象的です。実質的に日本での人気がこのバンドを支えているわけですが、それにしてもチェッカーズや中森明菜が歌い出してもおかしくないような曲で、ほんとに80年代の日本の歌謡曲を研究してるのか?などと考えてしまいます。この曲はボーカルにゲイリー・バーデンを迎えた次作To The Power Of Ten でも再演されています。"Who's Life Is It Anyway"も新曲で、イントロはジューダス・プリーストの"Breaking the Law"のリフと同じメロディですが、マンティスらしい高揚感を味わえる佳曲です。"A Moment In Life"は前作にも収録されていた名曲。コリン・ピールの素直な歌唱に馴染んでしまっているせいか、このマーク・トンプソン・スミスのバージョンはやや感情表現が過剰に感じてしまいました。"Turn The Tables"は、バーニー・ショウがボーカルを担当していた1982年にリリースしたシングル曲のリメイク。マンティス・サウンドど真ん中の哀愁メロハー曲です。

全体として前作の流れをくむプレイング・マンティスならではのメロディアスさ、高揚感、哀愁がたっぷりで、ミニアルバムとはいえ彼らのファンなら外すことのできない傑作だと思います。なお、プロデュースに関わったノーマン・グッドマンは、80年代のマンティス解散後のストレイタス名義のアルバム、次作 To The Power Of Ten  のプロデューサーでもあります。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Only The Children Cry (Troy, Troy, Stratton)
02. Who's Life Is It Anyway (Troy, Troy, Stratton, Bisland, Thompson-Smith)
03. A Moment In Life (Troy, Troy, Peel)
04. Turn The Tables (Troy, Troy)

■Personnel
Chris Troy - Bass Guitar, Background Vocals
Dennis Stratton - Lead Guitar, Background Vocals
Mark Thompson-Smith - Lead & Background Vocals
Tino Troy - Lead Guitar, Acoustic Guitar, Keyboards, Background Vocals
Bruce Bisland - Drums, Background Vocals

Gary Flounders - Additional Keyboards

Producer - Norman Goodman & Praying Mantis

A Cry for the New World / Praying Mantis (1993)

0035A Cry for the New World

NWOBHM時代から叙情的サウンドで異彩を放っていたプレイング・マンティスの通算3作目、復活後2作目のスタジオ・オリジナル・アルバム。筆者は、このアルバムからメロハーにのめり込みました。メロハーではいまだにこれを超えるアルバムにめぐり合っていません。とにかく好き過ぎて冷静ではいられない。プレイング・マンティスとしての大傑作であると同時に、メロディアス・ハードロックという分野の中でも名盤中の名盤だと思っています。「メロハーとはメロディなり」。不肖筆者の格言です。失礼。

前作Predator in Disguiseでの失敗をバンド自身も感じたのか、デニス・ストラットン主導のアメリカン・ハードもどきの曲が一掃され、クリス・トロイとティノ・トロイのメロディ、つまりあの伝説のTime Tells No Liesと同じプレイング・マンティス本来のメロディの輝きが甦っています。そしてこのアルバムでは、初めてコリン・ピールという専任ボーカリストがレコーディングに参加しているのが大きな変化でしょう。この人は特別に上手いボーカリストではありませんが、声に透明感・清潔感があり、歌唱にもおかしなクセがないため、マンティスの楽曲にはうってつけです。

1曲目の"Rise Up Again"からいきなり名曲。疾走するメロディに急ブレーキがかかって、サビの"One day, I will rise up again~"というコーラスとともに青空に向かって飛び出す感じが最高です!ブルース・ビスランドのドラムがイマイチな気はしますが、そんなのは小さな こと。歌詞もサウンドもポジティブで、どんなときでも気持ちを明るくしてくれます。マンティスの曲の中で筆者が最も好きな曲です。

2曲目はタイトル曲"A Cry For The New World"、社会的なメッセージが込められた曲ですね。メロディは哀しみを湛えていますが、その底流に希望を感じる。これも名曲です。

3曲目"A Moment In Life"、憂いを帯びたヒラウタと、対照的にポジティブなサビ。コリン・ピールの切ない歌唱がメロディの美しさを際立たせます。今までのようにトロイ兄弟やデニス・ストラットンが歌ったら、こうはいかなかったでしょう。うーん、名曲!

4 曲目"Letting Go"、印象的なツイン・リードによるオープニング、続くヒラウタもいいのですが、いやがうえにも高揚感を盛り上げるブリッジとサビのメロディが特に素晴らしい。トロイ兄弟はコーラスを組み立てるのがほんとに上手いです。ギターソロも極上。曲の中で浮かず、曲を活かすギター・アンサンブル。マンティスには曲芸的ソロはいらないのです。これまた名曲です。

5曲目"One Chance"、この曲も転調がありますが、これがまた上手い。ヘタなバンドは転調が多いと違和感を感じさせることもありますが、マンティスのメロディは流れるように自然です。またまた名曲。

6曲目"Dangerous"、曲を引っ張るギターのリード・メロディが堪りません。サビはメロハー的哀愁を通り越して、「歌謡曲」的ですらありますが、マンティスにかかると名曲と化してしまいます。

7 曲目"Fight To Be Free"、オープニングと中間での、天空に駆け上がっていくようなギター・メロディが素晴らしい!この曲もヒラウタとサビの対比が利いています。とにかくサビのメロディが美し過ぎます。どうしてこんなに魅力的なメロディが書けるんでしょう。間違いなく名曲。

8曲目"Open Your Heart"、哀愁系メロディアス・ハードロック最高峰の一曲。コリン・ピールのボーカルとティノ・トロイのギターが切なく絡み合う終盤は何度聴いても鳥肌が立ってしまいます。これが名曲でなくて何が名曲か。

9 曲目"Dream On"、冒頭のスペイシーなキーボードに続くティノ・トロイ得意のスパニッシュ風ギター、そして憂愁の歌メロが始まり、一気に曲の世界に導かれます。歌詞 はおそらくクリス・トロイが書いているのでしょうが、彼は物語を感じさせる詞を書く才能に長けていますね。詞の世界とメロディがピタリと一致して見事です。名曲決定!

10曲目"Journeyman"。アウトロのインスト曲"The Final Eclipse"と一体化しているので、実質この曲が最終曲。これもクリスの詞で、何十万光年も旅をして来た男が瀕死の地球に帰りつくというSF的テーマ。ドラマチックな歌メロとツイン・ギターが、これぞプレイング・マンティスと納得させてくれる締めくくりの曲です。もちろん名曲。

というわけで、初めてアルバム全曲について書いてしまいましたが、結論として全曲名曲でした!メロハー好きな方で、もしこのアルバムを聴いたことのない方がいらっしゃったら、それはとんでもなく不幸なことです。ぜひ一度聴いてみてください。

な お、"One Chance"にはバーニー・ショウがバッキング・ボーカルでクレジットされています。バーニー・ショウというとユーライア・ヒープでの活動が有名ですが、実は1981年にマンティスに参加していたという経歴があるんですね。また、マンティス解散後の83~84年にかけては、トロイ兄弟と一緒に元アイア ン・メイデンのクライヴ・バーが組んだストレイタスのボーカルも務めていました。そんな縁でこのアルバムに「友情出演」したのでしょう。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Rise Up Again (Jackson, Dangschat, Praying Mantis)
02. A Cry For The New World (Praying Mantis)
03. A Moment In Life (Troy, Troy, Peel)
04. Letting Go (Troy, Troy)
05. One Chance (Troy, Troy, Bisland)
06. Dangerous (Praying Mantis)
07. Fight To Be Free (Troy, Troy)
08. Open Your Heart (Praying Mantis)
09. Dream On (Jackson, Dangschat, Praying Mantis)
10. Journeyman (Troy, Troy, Peel)
11. The Final Eclipse (Troy, Fflounders)

■Personnel
Chris Troy - Bass, Backing Vocals
Dennis Stratton - Lead Guitar, Backing Vocals
Colin Peel - Lead & Backing Vocals
Tino Troy - Lead Guitar, Acoustic Guitar, Keyboards, Backing Vocals
Bruce Bisland - Drums, Backing Vocals

Gary Flounders - Keyboards, Brass Arrangements
Valerie Lee Cowell - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Derek Jeffrey - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Jeff Brown - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Peter Bullick - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Bernie Shaw - Backing Vocals on "One Chance"

Producer - Tino Troy & Gary Flounders
Co-Producer - Praying Mantis
Executive Producer - Neal Kay

Predator in Disguise / Praying Mantis (1991)

0014Predator in Disguise

1990年のNWOBHM10周年記念来日公演を契機に、ティノ・トロイ、クリス・トロイ、デニス・ストラットン(元アイアン・メイデン)、ブルース・ビスランド(元ウェポン)で再結成されたプレイング・マンティスの10年ぶりの2ndアルバム。カヴァー・アートは、あの1stと同じくロドニー・マシューズ (Rodney Matthews)の手によるもの。1曲目の"Can’t See The Angels"の、美しいギターハーモニー、哀愁を帯びたメロディ、ドラマティックなコーラス、そして相変わらずのっぺりしたクリス・トロイのボーカル、まぎれもない「プレイング・マンティスの音」が甦ったことにに大きな喜びを感じます。しかし、2曲目"She’s Hot"で「???・・・」と絶句。下品過ぎます。2曲目にくだらない曲をもってきてガクっとさせるところまで1stと同じです。"She’s Hot"をはじめデニス・ストラットンの書いた曲が5曲、トロイ兄弟の書いた曲が6曲、それぞれの個性が溶け合いもせずにただ配置されています。ライオンハート以来のストラットンの中途半端なアメリカン・ロック志向もいただけませんが、トロイ兄弟の曲も、ところどころに「らしさ」は感じられるものの往年の輝きを取り戻しているとは言い難い。まともに歌えるリードボーカルも相変わらず不在。伝説とまで言われた前作Time Tells No Lies 、最高傑作との呼び声も高い次作A Cry for the New World 、間に挟まれたこのアルバムとの落差はあまりにも大きいものがあります。

評価 ★★☆☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Can’t See The Angels (T.Troy, C.Troy)
02. She’s Hot (Stratton, Hart, O’shaughnessy)
03. Can’t Wait Forever (T.Troy)
04. This Time Girl (Stratton, Pearce, Hart)
05. Time Slipping Away (C.Troy, T.Troy, Bisland)
06. Listen To What Your Heart Says (Stratton, Thomas, White, Hart)
07. Still Want You (Stratton, Hart, O’shaughnessy)
08. The Horn (C.Troy, T.Troy)
09. Battle Royal (C.Troy, T.Troy)
10. Only You(Stratton, Hart, O’shaughnessy)
11. Borderline (C.Troy, T.Troy)

■Personnel
Chris Troy - Lead Vocals on 01, 03, 05, 09, 11, Bass
Dennis Stratton - Lead Vocals on 02, 04, 06, 07, 10, Guitars
Tino Troy - Guitar, Vocals, piano
Bruce Bisland - Drums, Vocals

Producer - Tino Troy & Dennis Stratton
Executive Producer - Masa Itoh, Tom Sassa

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