メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。

ピート・ジャップ

Closer To Heaven / FM (1993)

0262Closer to Heaven










日本のレーベルによって企画されたFMのコンピレーション盤。このアルバムに食指が動くのは相当なファンだと思うので、今回は感想ではなく、やや煩雑になりますが収録曲のバージョンの異同について書きます。(記述に誤りがある可能性はもちろんあります。念のため。)

#01"Closer To Heaven (single version)"
4thAphrodisiac収録曲のシングル・バージョン。一部ギター・ソロがカットされて短くなっています。

#02"Burning My Heart Down ('93 version)"、#03"Don't Stop ('93 version) "
2ndTough It Out収録曲。そのリミックス・バージョン?時代がかったキーボードが抑えられています。

#04"I Heard It Through The Grapevine (live)"
3rdTakin' It to the Streets収録曲のライヴ・バージョン。マーヴィン・ゲイのカバー。Acoustical Intercourseのものとは異なり、こちらは全面エレクトリックです。1992年3月24日パリでの録音。

#05."Frozen Heart ('93 version)"
1stIndiscreet収録曲の別バージョン。#02、#03と同じく'93 versionとなっていますが、こちらはテンポもアレンジもオリジナルと異なり、全く別のバージョンです。1stの時点で録音されていたのか、93年の新録音かは不明。

#06"All Or Nothing (12-inch mix)"
4thAphrodisiac収録曲のダンス用ミックス。しかし、FMで踊る人がいるのか?

#07"Little Bit Of Love"、#08"Primitive Touch"
EPOnly The Strong Surviveに収録されていたもの。オリジナル・アルバム未収録曲。"Little Bit Of Love"はフリーのカバーで、Acoustical Intercourseのものとは異なり、全面エレクトリックのスタジオ録音版です。

#09"Flesh and Blood"
本作のための新曲。当然オリジナル・アルバム未収録。

#10"Need Your Love So Bad (acoustic version)"、#11"Rocky Mountain Way (acoustic version)"
オリジナル・アルバム未収録曲。それぞれフリートウッド・マックとジョー・ウォルシュのカバー。#11のボーカルははアンディ・バーネット。アコースティックですがAcoustical Intercourseのものとは異なり、スタジオ録音されています。

#12"Only The Strong Survive (acoustic version)"
3rdTakin' It to the Streets収録曲のアコースティック・バージョン。

#13"Closer To Heaven (acoustic version)"
4thAphrodisiac収録曲のアコースティック・バージョン。

次に、本作収録曲(同じバージョン)の、他の盤への収録状況について。

Only The Strong Survive(1992)
UK本国でMusic For NationsからリリースされたEP。#07"Little Bit Of Love"、#08"Primitive Touch"の2曲収録。

The Blues & Soul E.P.(1993)
UK本国でMusic For NationsからリリースされたEP。#04"I Heard It Through The Grapevine (live)"、#10"Need Your Love So Bad (acoustic version)"、#11"Rocky Mountain Way (acoustic version)"の3曲収録。

No Electricity Required(1993)
日本盤Acoustical IntercourseのUK2枚組盤。Music For Nationsからのリリース。#02"Burning My Heart Down ('93 version)"、#03"Don't Stop ('93 version) "、#06"All Or Nothing (12-inch mix)"、#09"Flesh and Blood"の4曲をDisc2に収録。

Long Time No See(2003)
ParaphernaliaAphrodisiacLive At The AstoriaのUK3枚組盤。Escape Musicからのリリース。Paraphernaliaのボーナス・トラックとして#02"Burning My Heart Down ('93 version)"、#03"Don't Stop ('93 version) "、#05."Frozen Heart ('93 version)"の3曲収録('93 versionではなく98 versionとなっていますが、同一のものと思われます)。また、Aphrodisiacのボーナス・トラックとして#13"Closer To Heaven (acoustic version)"を収録。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Closer To Heaven (single version) (Overland/Goldsworthy/Jupp/Barnett)
02. Burning My Heart Down ('93 version) (Overland/Child/Overland)
03. Don't Stop ('93 version) (Goldsworthy/Jupp)
04. I Heard It Through The Grapevine (live) (Whitfield/Strong)
05. Frozen Heart ('93 version) (Overland/Overland/Goldsworthy/Digital)
06. All Or Nothing (12-inch mix) (Overland/Goldsworthy/Jupp/Barnett)
07. Little Bit Of Love (Rodgers/Fraser/Kossoff/Kirke)
08. Primitive Touch (S.Overland)
09. Flesh and Blood (S.Overland)
10. Need Your Love So Bad (acoustic version) (M.John)
11. Rocky Mountain Way (acoustic version) (Walsh/Grace/Vitale)
12. Only The Strong Survive (acoustic version) (Goldsworthy/Jupp)
13. Closer To Heaven (acoustic version) (Overland/Goldsworthy/Jupp/Barnett)

■Personnel
Steve Overland - Lead Vocals, Guitar
Merv Goldsworthy - Bass, Vocals
Andy Barnett - Lead Guitar, Vocals
Pete Jupp - Drums, Vocals

Keyboards - Charlie Olins 
Keyboards - Slim Mitman

Producer - FM & Andy Reilly
except tracks-7, 8 produced by FM


Acoustical Intercourse / FM (1992)

0205Acoustical Intercourse









1992年11月14日ロンドンでの公演を収録したFMのアコースティック・ライブ・アルバム。ブックレット記載のピート・ジャップの解説によると、91年から始まったアコースティック・ライブが好評でツアーをやることになり、最終的にライブ・レコーディングにまで至ったとのこと。ブルース、R&Bのカヴァーとオリジナル曲を取り混ぜながら、渋くて熱いパフォーマンスを繰り広げています。アコースティック・ライブとは言うものの、完全生のアンプラグドではないので、ほとんど通常のライブ盤ですね、これは。フリートウッド・マックの"Need Your Love So Bad"、ウィルソン・ピケットの"Midnight Hour"、フリーの"Little Bit Of Love"、Z.Z.トップの"Tush"など大好きな曲をやってくれていてうれしかったなぁ。またメロディアスな初期FMメドレーも、これまたうれしい選曲です。もちろん、名曲"Closer To Heaven"はライブでも抜群に素晴らしく、スティーヴ・オーヴァーランドのしみじみとした歌唱は感動ものです。蛇足ですが、アンディ・バーネットがリード・ボーカルを担当しているのが数曲があって、意外に歌が上手くてびっくりです。

なお本作は当初日本国内のみでのリリースでしたが、後に海外でもNo Electricity Required というタイトルで発売されました。こちらにはダン・リード・ネットワークの"Long Way To Go"が追加収録されています。また、日本企画盤Closer to Heaven に収録されていた"Burning My Heart Down ('93 version)"、"Flesh and Blood"、"Don't Stop ('93 version)"、"All or Nothing (Racket Mix)"の4曲がDisc2としてカップリングされた2枚組仕様のものもあるようです。本作リリース当時、ビデオ・LDも発売されていましたが、残念ながら現時点ではDVD化されていないようです。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Seagull (P. Rodgers, M. Ralphs)
02. Need Your Love So Bad (M. John)
03. Rocky Mountain Way (J. Walsh, R. Grace, K. Passarelli, J. Vitale) / Black Velvet (D. Tyson, C. Ward)
04. Burning My Heart Down (S. Overland, C. Overland, D. Child) /Don't Stop (M. Goldsworthy, P. Jupp, D. Digital) /Get Back (J. Lennon, P. McCartney)
05. Blood And Gasoline (FM)
06. Superstition (S. Wonder)
07. Heard It Through The Grapevine (N. Whitfield, B. Strong) / Stone Fox Chase (C. McCoy, P. Haley, K. Buttrey)
08. Some Kind Of Wonderful (G. Goffin, C. King)
09. Midnight Hour (S. Cropper, W. Pickett) / Dancin' In The Street (I. J. Hunter, W. Stevenson, M. Gaye)
10. Face To Face (S. Overland, C. Overland, P. Jupp) / Enter Sandman (J. Hetfield, L. Ulrich) / American Girls (S. Overland, C. Overland) / Other Side Of Midnight (M. Goldsworthy, P. Jupp)
11. Closer To Heaven (FM)
12. Only The Strong Survive (M. Goldsworthy, P. Jupp, S. Overland, A. Barnett)
13. Little Bit Of Love (P. Rodgers, A. Fraser, P. Kossoff, S. Kirke)
14. Rockin' Me (S. Miller)
15. Tush (B. Gibbons, D. Hill, F. Beard)

■Personnel
Steve Overland - vocals, guitar
Merv Goldsworthy - bass, vocals
Pete Jupp - drums, vocals
Andy Barnett - guitar, vocals

Charlie Olins - keyboards
Mitt - harmonica

Producer - FM/Andy Reilly
Executive Producer - Graham Oakes



Truth or Dare / Change of Heart (2005)

0187Truth or Dare










イギリスのメロハー・バンド、Change of Heartの3枚目のアルバム。前作から5年ぶりのリリースとなっており、バンド・メンバーはアラン・クラーク(vo)、ジョン・フッティット(gt)、デイヴ・チャップマン(key)の3人に減っています。過去2作ではHeartlandとThe Distance絡みのミュージシャンがサポートに入っていましたが、本作ではFMのスティーヴ・オーヴァーランドとピート・ジャップが参加しています。また、1stでも関わっていたスティーヴ・モリスも再登板しています。スティーヴ・モリスはHeartlandのメンバーであると同時にスティーヴ・オーヴァーランドとShadowmanを組んでいるので、その流れで両スティーヴが顔を揃えたのかもしれません。

いかにもイギリスのバンドらしい陰りと湿り気のある曲調、サウンドはこれまで通りです。マイナー調の曲はもちろん、メジャーの曲でも爽快さより哀愁を感じさせるというこのバンドの特徴も健在。ただ、切なさが胸に迫るほどだった前作に比べて、楽曲がやや間延びしておりその点が残念です。前作があまりに良すぎたため、もっと上を期待する心理からそう聴こえるのかもしれません。また、クリス・ウーズィーを聴きやすくしたようなアラン・クラークのボーカルも、心なしか前作より不安定。このChange of Heart、本作からもう10年近く新しいアルバムのリリースがありません。まだ活動しているのかも不明ですが、ぜひ2ndを超えるような作品もう一度作ってもらいたいと切望しています。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Burned
02. Farlands
03. Desperate Heart
04. Hold On
05. Falling From The World
06. Truth Or Dare
07. Don't Cross The Line
08. Taking My Time
09. Keep On Believing
10. I Will Remember You
11. Never Fall
All songs are written by Alan Clark & Dave Chapman

■Personnel
Alan Clark - lead vocals, bass guitar
Dave Chapman - keyboards, backing vocals
John Footit - guitars

Pete Jupp - drums
Steve Overland - backing vocals
Steve Morris - acoustic guitars

Producer - Steve Morris, Steve Overland
Executive Producer - Khalil Turk

Aphrodisiac / FM (1992)

131Aphrodisiac










イギリスのハードロック・グループFMの第4作目。前作同様Music for Nationsレーベルから1992年にリリースされています。前作でR&B色の強いサウンドに路線転換を図ったFMですが、この4thアルバムではより一層その傾向を強め、もはやメロハーという枠では括りきれないところまで来ました。Free、Humble Pie、初期Whitesnake、あるいはThunderといったバンドと同じように、R&B、ブルースを英国風ロックに仕立て上げた伝統的ブリティッシュ・ハードロックの太い流れの中に位置づく音です。前作は路線転換の途中でもあり、わずかに中途半端な印象は拭えませんでしたが、今回は楽曲・歌唱・演奏が非常に高いレベルで一体化し、押しも押されもせぬ名盤の風格をそなえた作品となっています。マーヴ・ゴールズワーシー&ピート・ジャップのリズム隊はまさに鉄壁、アンディ・バーネットのギターも躍動感と渋さを兼ね備え、そしてスティーヴ・オーヴァーランドの歌いまわしはコクがあるのにキレもあるってやつで、もうため息が出るほど。同じレーベルのRomeo's Daughterのメンバーがバックに入っているのは前作同様です。プロデューサーとしてアンディ・ライリーがバンドとならんでクレジットされていますが、この後もFMのプロデュースを何度か手がけており、Romeo's Daughterのプロデュースも行なっています。

#1"Breathe Fire"はオープニングにふさわしくホーン入りの派手でノリのいいナンバー。サビ前のキメが超カッコいい!
#2"Blood And Gasoline"はミドルテンポのアーシーな曲で、シングルもリリースされています。
#3"All Or Nothing"は初期FMのメロディアスさを感じさせる名曲。このアルバムの中では一番メロハーっぽいかな。
#4"Closer To Heaven"はまるでソウルのスタンダード・ナンバーかと思わせるバラード。スティーヴ・オーヴァーランドの歌が上手過ぎ。ギター・ソロまでやってるし。
#5"Ain't Too Proud"は再びアップ・テンポのR&Bでノリノリになります。曲順も良くできてますね。
#6"Take the Money"はスライド・ギターをフューチャーしたブルージーな曲。
#7"Aphrodisia"は次の曲のイントロ的な短いインスト曲。闇夜を切り裂くようなアンディ・バーネットのギターがイイ!
#8"Inside Out"はファンキーでメロディアスな曲。ヴァースのメロディがすごくカッコいいな~。
#9"Run No More"はアコギから始まる渋いスロー・ナンバー。サビなど後期Freeを聴いているのかと錯覚するほど。素晴らしい!
#10"Play Dirty"はHumble PieとBad Companyを足したような70年代風R&R。こりゃシビレますね!この曲のギター・ソロもスティーヴ・オーヴァーランド。
#11"Rivers Run Dry"はハネるリズムとアコギのカッティングが印象的な渋い曲。
#12"Hard Day In Hell"は本編ラストの曲。ピアノとサックス入りで、なんだかレイ・チャールズの持ち歌みたいなソウル・バラード。渋いギター・ソロはスティーヴ・オーヴァーランド。
以下は国内盤ボーナス・トラックです。
#13"Chinese Whispers"もメロディアスで、以前のFMの雰囲気を感じさせる曲。
#14"Some Kind of Wonderful"はライヴ音源で、Grand Funkのカヴァー。オリジナルはキャロル・キングです。
#15"I'll be Creepin'"もライブ。出た、Free!選曲も渋い。この曲カッコよくやるの難しいと思うけど、Freeが乗り移ったみたいな名演です。そして、ポール・ロジャースの後継者はスティーヴ・オーヴァーランドしかいない!

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Breathe Fire (FM)
02. Blood And Gasoline (FM)
03. All Or Nothing (FM)
04. Closer To Heaven (FM)
05. Ain't Too Proud (FM) 
06. Take the Money (FM)
07. Aphrodisia (FM/C. Olins)
08. Inside Out (FM)
09. Run No More (FM)
10. Play Dirty (FM)
11. Rivers Run Dry (FM)
12. Hard Day In Hell (FM)
13. Chinese Whispers [bonus] (FM)
14. Some Kind of Wonderful (live) [bonus] (G. Goffin/C. King)
15. I'll be Creepin' (live) [bonus] (A. Fraser/P. Rodgers)

■Personnel
Steve Overland - Lead vocals, guitar
Merv Goldsworthy - Bass, vocals
Pete Jupp - Drums, vocals
Andy Barnett - Lead guitar, vocals

Keyboards - Tony Mitman 
Piano, Strings - Charlie Olins 
Harmonica - Mitt 
Trumpet - Martin Shaw, Mark Cumberland 
Saxophone - Adrian Revell 
Trombone - Patrick Hartley 
Backing vocals - Leigh Matty, Craig Joiner, Sonia Jones

Producer - FM/Andy Reilly 

Takin' It to the Streets / FM (1991)

0078Takin' It to the Streets
イギリスのハードロック・バンドFMの3rdアルバム。前作がレーベル側の思惑ほどには売れなかったためかメジャー契約を切られ、マイナー・レーベルからのリリースとなっています。前二作のハードAORとも言うべきサウンドから一転して、かなりブルージーでソウルフルなハードロックとなりました。この路線変更に関しては、1stと2ndのキャッチーな曲調はレーベル側から要求されたもので、3rdからは本来自分たちがやりたかった音を出せるようになったから、というように言われています。しかし、マーヴ・ゴールズワーシーとピート・ジャップがSamson解散~FM結成にあたって「コマーシャル色の強いロック」を目指したという事情を考え合わせると、初期FMのサウンドが一方的にメジャー・レーベルから強要されたものとも考えにくいのではないでしょうか。もっとも、バンドの目指した「コマーシャル色」とレーベル側の考えるそれが一致していたのかどうかは分かりませんが。いずれにしても、メジャー・レーベルを離れ、リード・ギターもクリス・オーヴァーランドから最初期に在籍したアンディ・バーネットにチェンジし、セルフ・プロデュースによるストレートなサウンドで心機一転を図った、まさにバンドにとって節目のアルバムとなっています。この手のアーシーで骨太なサウンドだと、1stと2ndで見られた「キラキラ・シンセ」による80年代的装飾は不要となり、ディジ・ディジタルはオルガンを白玉で流すことくらいしか出番がなくなりました。そのせいかどうか、彼はこのアルバムを最後にバンドを脱退することになります。

1曲目の"I'm Ready"からAC/DCを思わせるヘヴィでブルージーなロックン・ロール。新生FMの志向性が明確に示されています。続く2曲目はなんとホーン・セクション入りで、ソウルの名曲「悲しいうわさ」("I Heard It Through the Grapevine")をファンキーかつハードにブチかましてくれます。言わずと知れたグラディス・ナイト&ザ・ピップス(1967)、マーヴィン・ゲイ(1968)の大ヒット・ナンバー、このカッコよすぎるカヴァー曲が本作のハイライトだと思います。それにしても、スティーヴ・オーヴァーランドの歌の上手さには脱帽です。水を得た魚のようにコブシをぐるんぐるん回わしまくりたおしています。スティーヴ・オーヴァーランドは元々ポール・ロジャース系統のボーカリストなので、こういうサウンドがしっくり来るのは当然としても、リズム隊も出戻りギタリストもメタル畑でキャリアを積んできたにも関わらず、昔っからこんな音を演っていたかのような手馴れた演奏振りなのが驚き。曲作りに関しても、前二作より更にリズム隊の二人の重みが増し、マーヴ・ゴールズワーシーに至ってはスティーヴ・オーヴァーランドより関与した曲の数が多くなっています。このアルバム収録曲で比較的前作までの雰囲気を残している2曲、#8"Crack Alley"と#11"The Thrill of It All"を彼単独で書いているというのも興味深いです。

さて、筆者としては前二作のようなメロハーはもちろん好き、本作もまた大好きということで、路線変更そのものに否定的ではありませんが、ポップなメロディを渋く歌うという点にスティーヴ・オーヴァーランドとFMならではの魅力があったと思っているので、若干の寂しさと言うか物足りなさを感じたのも確かです。なお、本作にはゲストとしてクレイグ・ジョイナーというギタリストが参加しています。当時FMと同じMusic for Nationsレーベルに所属していたRomeo's Daughterのメンバーで、このバンドのアルバムDelectable (1993)にはマーヴ・ゴールズワーシーがゲスト参加しているようですが、筆者は未聴ですので詳しいことは分かりません。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作 
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. I'm Ready (S. Overland)
02. I Heard It Through the Grapevine (N. Whitfield/B. Strong)
03. Only the Strong Survive (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland/A. Barnett)
04. Just Can't Leave Her Alone (M. Goldsworthy)
05. She's No Angel (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland/D. Digital)
06. Dangerous Ground (M. Goldsworthy/P. Jupp)
07. Bad Blood (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland)
08. Crack Alley (M. Goldsworthy)
09. If It Feels Good (Do It) (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland)
10. The Girl's Gone Bad (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland/A. Barnett)
11. The Thrill of It All (M. Goldsworthy)
12. Hot Love (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland) [bouns]
13. Fuel to the Fire (S. Overland) [bouns]

■Personnel
Steve Overland - Lead vocals, guitar, acoustic guitar
Merv Goldsworthy - Bass, vocals
Pete Jupp - Drums, vocals
Didge Digital - Keyboards
Andy Barnett - Lead guitar, slide guitar, vocals

Backing vocals - Steve Overland, Andy Barnett, Pete Jupp, Leigh Matty, Craig Joiner, Sonia Jones
Guitar Solos - Andy Barnett, Steve Overland, Craig Joiner

The 'Raging' Horns - Martin Shaw, Dennis Rollins, 'Baps' McMillan, Kenny Wellington
Horn Arrangement - Augustus Gowalski

Producer - FM 

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