メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

パトリック・シモンセン

If You Smile Recycled / Hush (2018)

0418If You Smile Recycled









ノルウェーのハードロック・バンドHushの1stアルバムIf You Smileのリレコーディング盤。このバンドは何度か書いているように、超一流のボーカリストと二流のギタリストというなんとも残念なコンビが中核となっており、他のメンバーはその都度入れ替わっていて流動的です。まあ大げさに言うなら、デヴィッド・カヴァーデイルがセミプロ・クラスのバンドでずっと埋もれているようなもの。そんな彼らの1stアルバムは、名盤とまでは言わないまでもかなりの好盤で、今のところこのバンドの代表作だと思います。で、このリレコーディング盤とオリジナル盤を聴き比べてみると、確かに分離が良くなって各パートがクリアに聴こえ、音圧も上がっています。ただ、楽曲のアンサンブルはほとんど同じで、ギター・ソロもオリジナルのフレーズをなぞっているような感じ。これって本当に再録音なの?と思って、インナー・スリーヴの短い解説を読むと、ベースとドラムは全曲新規録音、他のパートは部分的に再録音したと書いてありました。どおりであまり変わり映えしないはずです。音質が良くなっているのは、単純にトラック・ダウンとマスタリングをやり直した結果のようです。どの曲のどのパートが差し替えられているのか詳細は分かりませんが、#10"G & B"に関しては全て録り直しているように聴こえました。オリジナルはピアノとギターが第1期ジェフ・ベック・グループみたいでカッコよかったのに、再録音で逆にスリリングさが減退してしまった印象です。なお、ボーナス・トラックの2曲は近作Department of Faith収録曲のアコースティック・バージョンです。いずれにしても、パトリック・シモンセンは最初から上手く、深い歌声とブルージーな歌いまわしは天下一品。そのことを改めて確認できたのは良かったのですが、このバンドには中途半端なリレコーディング盤ではなく1stアルバムの路線での新作を期待したいと思います。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Talk to Me (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)    
02. Babe (Kenneth Kristiansen, Glenn Kristiansen, Patrick Simonsen)     
03. Believe (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
04. Piece of the Action (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
05. Let It Rain (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
06. This Side of Love (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
07. Heaven Ain't (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
08. Big Times (Kenneth Kristiansen, Glenn Kristiansen, Patrick Simonsen, Rognar Rutle)     
09. Sometimes (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
10. G & B (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)
[Bonus Tracks]
11. She Will Be the One (acoustic) (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)
12. Hold On (acoustic) (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)
 
■Personnel
Patrick Simonsen - lead & backing vocals, guitars
Kenneth E. Kristiansen - lead guitars, bass, backing vocals, percussion, keyboards
Stein Andersen - bass, backing vocals
Jon E. Østerberg - drums

Terje Smevold - additional keyboards, piano on #5, #6, #10
Dorota Anastazja Monroe Mentzoni - additional piano on #5

Producer - Kenneth E. Kristiansen
 

Department of Faith / Hush (2017)

0345Department of Faith









ノルウェーのハードロック・バンドHush、11年ぶりの4thアルバム。Whitesnakeをライトでポップにしたようなサウンドでデビュー、3rdアルバムMirageで「モダン」寄りに転換、そして本作はというと前作のドンヨリ感を引きずりつつも、基本的には初期の路線に戻りました。ただ、メロディ的にもアレンジ的にも楽曲の魅力はイマイチ、特に同じフレーズを繰り返す手法が鼻につき、1stや2ndのワクワク感には程遠い出来です。悪くはないのですが良くもない。うーん、なんとも中途半端な印象で歯がゆい限りです。中心メンバーのパトリック・シモンセン(vo)と相方のケネス"キース"クリスチャンセン(gt)以外のメンツは入れ替わりました。3rdアルバム以降メンバーは流動的になっており、バンドの不安定な状況を反映しているようです。

#8"Last Man Standing"のスローになる中間部分などに顕著ですが、パトリック・シモンセンのボーカリストとしての実力は極めて高いと思っています。深みのある声質、プルージーでソウルフルな歌いまわしは実に魅力的。世が世ならば、「ノルウェーのデヴィッド・カヴァーデイル」なんてキャッチフレーズでもてはやされてもおかしくない。しかし、時代に恵まれず、バンドにも恵まれなかったのがなんとも残念です。ドイツのS.I.N. に呼ばれたときは、そっちでなんとかなるかと思ったら結局ポシャっちゃったし。年齢的にもおそらく50歳前後と思われ、これからブレイクするのは現実的には厳しいでしょう。筆者としては強い思い入れがあるボーカリストだけに、なんだか空しく寂しい感情が残ります。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. I Don't Wanna (Patrick Simonsen / Kenneth E. Kristiansen)
02. Black Ice (Patrick Simonsen / Kenneth E. Kristiansen)
03. She Will Be the One (Patrick Simonsen / Kenneth E. Kristiansen)
04. Hold On (Patrick Simonsen / Kenneth E. Kristiansen)
05. Crazy (Sigsworth Guy / Samuel Henry Olusegun Adeola)
06. Mirrors (Patrick Simonsen / Kenneth E. Kristiansen)
07. Signs (Patrick Simonsen / Kenneth E. Kristiansen)
08. Last Man Standing (Patrick Simonsen / Kenneth E. Kristiansen)
09. Everything (Patrick Simonsen / Kenneth E. Kristiansen)
10. This Is It (Patrick Simonsen / Kenneth E. Kristiansen)
11. This Time (Bonus Track) (Patrick Simonsen / Kenneth E. Kristiansen)

■Personnel
Patrick Simonsen - lead vocals, backing vocals, guitars, keyboards
Kenneth E. Kristiansen - lead guitars, backing vocals, percussion, keyboards
Stein Andersen - bass
Thorleif Østmoe - keyboards
Antonio Torner - drums

Producer - Kenneth E. Kristiansen

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Department of Faith
 

The 13th Apostle / S.I.N. (2007)

0240The 13th Apostle









ドイツのHR/HMグループS.I.N.の3rdアルバム。1st、2ndでボーカルを担当したジェイソン・マークスは喉の不調のために脱退、替わってノルウェーのハードロック・バンドHushのパトリック・シモンセンが参加しています。またベース専任でヤン・エバートが新メンバーとなっています。デディ・アンドラー(Gt、Key)、ウォルフガング・フランク(Gt、Key、Ba)、アレックス・フロウシェク(Ds)の3人はこれまで通りです。さらに、バッキング・ボーカルにカーステン・シュルツ(Domain、Evidence One)、コニー・アンドレスカ(Crystal Ball、Circle of Pain)、ボバン・ミロイェヴィッチ(Snake Eye)などが参加しています。

S.I.N.は、曲はメロハーでサウンドはメタルという一貫したスタイルを保っているバンドです。前作は「ドラマチック・メロハー」と名付けたくなる劇的な曲調で楽しませてくれましたが、本作はより一層メタル寄りの音となり、またコンセプト・アルバムということでナレーションが入ったり組曲風な複雑な曲展開となっており、正直「?」となりました。これは筆者にはダメです。前作までのジェイソン・マークスのボーカルが好みではなかったので、Hushでの渋めの歌唱が気に入っていたパトリック・シモンセン加入にはとても期待したのですが。。。曲の部分部分はカッコいいのに、何度聴いてもメロディが心に残らず、アルバム全体の印象が散漫。大きな会場で、ロック・オペラみたいなライブ・パフォーマンスを体験したら、それはそれで楽しいのかも知れないけれど、CDで聴いてもあんまり面白くない。なんでコンセプト・アルバムとかやりたがるのかなぁ。

S.I.N. はこのアルバムの後、今のところ新作が出ていないし、バンドのサイトも2009年から更新されておらず、もしかしたら自然消滅しちゃってるのかもしれません。2ndの路線でもっとやってくれたらいいんだけどなぁ。もったいないです。ちなみにHushのほうはバンド活動は続いているのようなので、パトリック・シモンセンのファンとしては一安心です。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。 

■Tracks
01. Prelude
02. Signs of Doubt
03. Awakening
04. Junia's Eyes
05. Chosen Are Few
06. In Your Darkest Hour
07. The Faithful Offer
08. Sealed With A Kiss
09. Tears of Gethsemane
10. Failure
11. For Eternity and Beyond
12. His 13th Apostle
13. Circuit
14. Are We Still One? [Bonus Track for Japan]
All music written by Andler, Frank, except 14 written by Andler, Hlousek
All lyrics by Ana Kugli, except 14 by Hlousek

■Personnel
Deddy Andler – guitars, keyboards
Wolfgang Frank – guitars, bass, keyboards, backing vocals
Alex Hlousek – drums, percussions
Patrick Simonsen - vocals, backing vocals
Jan Ebert - bass

Carsten "Lizard" Schulz - backing vocals, narration
Renee Walker - backing vocals
Connie Andreszka - backing vocals, guitar solo on 8
Boban Milojevic - backing vocals

Producer - Deddy Andler, Wolfgang Frank 

Mirage / Hush (2006)

0231Mirage









ノルウェーのハードロック・バンド、ハッシュの3rdアルバム。CDが中々見つけられなくて、仕方なくMP3ダウンロードしました。過去2作ともいわゆる北欧風ではありませんでしたが、ブルージーな味わいのあるハードポップが目いっぱい詰まった好盤だったので、3rdも大いに期待していました。#1"Is This...?"、静かに始まって徐々に盛り上がっていく展開でワクワクさせられます。ところが、2曲目のタイトル曲"Mirage"で衝撃!グランジ的というのか、ガレージ・ロック風というのか、アグレッシブで素っ気無いサウンドになってます。他の曲も同様の趣向のものが多く、ジャケットを見たときから実は嫌な予感はあったのですが、1st、2ndとは全くかけ離れたアルバムと言わざるをえません。1st、2ndは日本盤が出ていましたが、今回は国内盤リリースなし。確かに日本のメロハー・ファンは買わないだろうなぁこれ。本国でもインディーズ・リリースだし、お店でCD見かけないのも無理はないということてすね。

そんなわけで、最初は拒否反応ばかりだったのですが、聴き込むうちに、まあこれはこれでカッコいいと思うようになってきました。特に#9"What Have We Become"などに顕著なパトリック・シモンセンのブルージーで渋いボーカルは、掛け値なしに素晴らしいです。また、1st、2ndの曲を思わせる#10"Lies & Rumours"、2nd収録曲のリメイク#11"Till We Become the Sun"も魅力十分です。メンバーは、ボーカルのパトリック・シモンセン、ギターのケネス"キース"クリスチャンセン以外はチェンジしています。新ベーシストのゴリゴリしたベース、あんまり好きじゃないなぁ。ケネス"キース"クリスチャンセンのギターも相変わらずの力量不足。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Is This...? (Patrick Simonsen)
02. Mirage (Patrick Simonsen)
03. Hell or High Water (Patrick Simonsen)
04. When You Fall (Patrick Simonsen)
05. The Dark Inside the Light (Patrick Simonsen)
06. Walk on Through (Patrick Simonsen)
07. Just Me (Patrick Simonsen)
08. Enemy (Patrick Simonsen)
09. What Have We Become (Patrick Simonsen)
10. Lies & Rumours (Patrick Simonsen)
11. Till We Become the Sun (Patrick Simonsen)

■Personnel
Kenneth Kristiansen - guitars, backing vocals
Patrick Simonsen - vocals, guitars
Raven Alfheim - drums
Knut Dalbakk - bass

Producer - Kenneth E. Kristiansen, Patrick Simonsen

Mirage
HUSH
Raido Music Norway
2008-01-28

 

II / Hush (2001)

0088HushII
ノルウェーのハードロック・バンド、ハッシュの2ndアルバム。1stIf You Smileから3年半後のリリースです。その間バンドをとりまく状況は相変わらず思わしくなく、解散も考えるほどだったらしいのですが、イギリスのメロディック・ロック・レーベルNow and Thenの主催するTHE GODSフェスに出演、その縁もありNow and Thenとの契約を獲得して2ndリリースに至ったようです。前作と同じく中心メンバーであるケネス"キース"クリスチャンセンのプロデュースのもと、彼の自宅スタジオでレコーディングは行われているので、やはり前作と同様の自主制作に近いものと思われます。前作では同郷の先輩TNTのロニー・ル・テクロがミキサー、エグゼクティヴ・プロデューサーとして協力していましたが、本作は同じNow and Thenレーベルに所属するカナダのメロハー・バンド、エメラルド・レインのマーレイ・デイグル(Murray Daigle)がミキシング、マイク・デミトロヴィック(Mike Dmitrovic)がマスタリングを担当しています。バンド・メンバーは、前作と同じケネス"キース"クリスチャンセン(gt)、パトリック・シモンセン(vo)、ラグナー"ロッド"ラトル(ba)、ヤンネ"スティーヴ"ティッツ(ds)の4人に加え、前作ではアディショナル・キーボード扱いだったテリエ・スメフォルトが、今回はテリー・スミスという名前でメンバーとしてクレジットされています。

If You Smileも中々の好盤でしたが、この2ndもメロハー・リスナーにとって魅力溢れる作品となっています。ブルージーでメロディアスな曲調、デヴィッド・カヴァーデイルに似たボーカル・スタイルで、ライトなホワイトスネイクと形容したくなるサウンドは前作と大きく変わりません。ただし、スロー~ミドル・テンポの曲が多く、味わい深いもののやや地味な印象もあった前作と比べ、この作品ではアップ・テンポの曲が増えて、メリハリの利いたよりハードロック色の濃い音になりました。楽曲そのもののレベルも一段と向上しているように感じます。そしてなによりパトリック・シモンセンの力強い上に渋い歌唱は、もう名ボーカリストと呼んで差し支えないほどの水準。こうなってくると、ケネス"キース"クリスチャンセンのギタリストとしての力不足がいやでも目立ってきます。リード・ギターに新メンバーを入れて、ソング・ライティングとサイド・ギターに徹したほうがバンドにとっていいのでは?なんておせっかいを言いたくなるなー。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. The Restless Ones (Patrick Simonsen, Keith Kristiansen)
02. Don't Turn Around (Keith Kristiansen, Patrick Simonsen)
03. Till We Become the Sun (Patrick Simonsen, Keith Kristiansen)
04. Don't Say Goodnight (Patrick Simonsen, Steve Titz, Keith Kristiansen)
05. Is It Good Enough ? (Keith Kristiansen, Patrick Simonsen)
06. Another Girl (Patrick Simonsen, Keith Kristiansen)
07. Forever (Patrick Simonsen, Keith Kristiansen)
08. Like Love (Patrick Simonsen, Keith Kristiansen)
09. The Real Thing (Patrick Simonsen, Keith Kristiansen)
10. In My Dreams (Patrick Simonsen, Keith Kristiansen, Jan Titz)

■Personnel
Kenneth (Keith) Kristiansen - guitars, keyboards, backing vocals
Patrick Simonsen - vocals, guitars
Rognar (Rod) Rutle - drums
Janne (Steve) Titz - bass, backing vocals
Terry Smith (Terje Smevold) - keyboards

Producer - Kenneth (Keith) Kristiansen assisted by Patrick Simonsen 

ハッシュ・セカンド
ハッシュ
日本クラウン
2001-08-08

 

If You Smile / Hush (1998)

0059If You Smile

ノルウェーのメロディアス・ハードロック・グループ、Hushの1stアルバム。メンバーはケネス"キース"クリスチャンセン(gt)を中心に、パトリック・シモンセン(vo)、ラグナー"ロッド"ラトル(ba)、ヤンネ"スティーヴ"ティッツ(ds)の4人。ジャケットのほのぼのしたイメージから、トラディショナルな音楽を取り入れたような穏やかなサウンドをなんとなく想像していましたが、これがまたなんともかっこいいブルージーなメロディアス・ハードでした。喩えるなら、初期のホワイトスネイクをちょっとポップでメロディアスにした感じでしょうか。ボーカルのパトリック・シモンセンは、デビカバほどは濃くはないのですが、まさにあの系統のブルース・ベースの正統派ハードロック・ボーカリストとしての高い実力が感じられます。ソウルフルな歌いまわしもまるでベテランのように堂々としているし、筆者は一発で気に入りました。

曲調はバラエティに富んでいますが、マイナーキーを多用していたずらにベタな泣き路線に走らず、メジャーキーでそこはかとない哀愁を漂わせた曲が多いのも好感が持てます。作曲の中心はケネス"キース"クリスチャンセンだと思いますが、この人のメロディ・メーカーとしての才能を感じさせます。やや技量的に未熟なギターのほうも、もうちょっと頑張ってくれると完璧なんですが。。。ハードポップ的で楽しい#1"Talk to Me"、大人っぽいAORハード風の#2"Babe"、パトリック・シモンセンのソウルフルな歌唱が映えるファンキーなナンバー#4"Piece of the Action"、まるでアメリカのベテランAORグループの曲かと思わせるしっとしりしたバラード#5"Let It Rain"や#6"This Side of Love"等々、名曲・佳曲がぎっしり詰まっています。一部でパクリ説の出ている#7"Heaven Ain't"のイントロとAメロがネルソンの"After the Rain"に激しく似ているのは、筆者が想像するに、おそらくパクリではなくて無意識のうちに耳に残ってるメロディをオリジナルなメロディとして曲にしてしまったのでしょう。あんな有名な大ヒット曲を意図的にパクったらすぐに非難されるのは目に見えてますから。バンドをやっているとどうしてもそういうことはありますよ。まあいずれにしても、褒められた話ではありませんが。

これほどの高水準なアルバムですが、ノルウェーのレコード会社と契約していたにも関わらず、レーベルやマネージメント側の熱意が薄く、レコーディングはケネス"キース"クリスチャンセンの自宅スタジオで行われ、実態としては自主制作に近いのです。デモを世界中に送ってようやく日本のレーベルと契約を交わし、ノルウェーのこのジャンルでの先輩バンドTNTのロニー・ル・テクロのリミックスと監修という助力を得てアルバムを完成させ、まず日本でのリリースにこぎつけました。その後ドイツのレーベルを通じてヨーロッパでもリリースされますが、相変わらずバンドをとりまく環境は厳しく、まともなプロモーションもマネージメントもないまま、雑誌の取材からライブのブッキングまで自分たちで切り盛りしなくてはならない状況だったようです。メロディの秀逸さや歌い手の歌唱力が、当たり前に評価されない悲しむべき時代は今も続いています。メロディック・ロックを愛聴するリスナーの間でさえ「産業ロック」などという時代遅れで的外れなカテゴライズが今でもまかり通っている日本の状況にも、言いようのない悔しさと憤りを感じてしまうのです。メロディック・ロック=「産業ロック」=売れ線の音なら、このバンドだって経済的な苦労なんかしないでウハウハでしょうに。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Talk to Me (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)    
02. Babe (Kenneth Kristiansen, Glenn Kristiansen, Patrick Simonsen)     
03. Believe (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
04. Piece of the Action (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
05. Let It Rain (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
06. This Side of Love (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
07. Heaven Ain't (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
08. Big Times (Kenneth Kristiansen, Glenn Kristiansen, Patrick Simonsen, Rognar Rutle)     
09. Sometimes (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
10. G & B (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)     
11. If (Butterfly) [bonus] (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)   
12. This Side of Love (Acoustic Version) [bonus] (Kenneth Kristiansen, Patrick Simonsen)
 
■Personnel
Kenneth (Keith) Kristiansen - guitars, keyboards, backing vocals
Patrick Simonsen - vocals, guitars
Rognar (Rod) Rutle - drums
Janne (Steve) Titz - bass, backing vocals

Terje Smevold - additional keyboards, piano

Producer - Kenneth (Keith) Kristiansen
Executive Producer - Torgrim Eide, Ronni Le Tekrø
 
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