ポーランド出身のギタリストSayit(セイイット)ことSayit Dölenの名を冠したプロジェクトの第一作です。とは言うもののこのSayitは、実際にはRadioactive、Prisoner、Deacon Streetなど山ほどあるトミー・デナンダーのプロジェクトの一つで、作曲、プロデュース、ほとんどのパートの演奏をトミー・デナンダーが担当。主役であるはずのセイイットさん自身はいくつかの曲でリズム・ギターを弾いているだけで、なぜ彼の名前がプロジェクト名になっているのかは謎です。(もっとも、ブックレットにリード・ギターのクレジットが無いため確定的なことは言えないのですが、トミー・デナンダーっぽくないソロが何曲かあるので、セイイットもリード・ギターを担当しているのかも知れません。)それはともかく、中身はトミー・デナンダーらしいハイクォリティな北欧AORとなっており、聴き逃せないアルバムであることは間違いありません。
トミー・デナンダー作品でも一作ごとに特徴的な傾向というのがありますが、本作はフュージョン寄りAORというか、歌入りフュージョンというか、そんな感じ。曲も良く出来ているし、イエア・ロニングやピエール・ウェンスベリといった、デナンダーのプロジェクトの常連ボーカリストの歌唱がこれまた極上でため息が出るほどです。バック・ボーカルにも、トーマス・ヴィクストロム、ミカエル・アーランドソンなど一流ボーカリストが動員されており、なんとも贅沢。ただ、リズムが打ち込みで単調に感じること、後半になると曲の出来が若干落ちてくることが気になります。特にジャーニーのカバー#11"Once You Love Somebody"は曲もイマイチ、打ち込み臭さが鼻に付き聴いているのが苦痛でした。ボーナス・トラックの#12"Talk to Me"も同様にいただけません。所詮はアウトテイクということでしょうか。なお、共同プロデューサーのリッキー・B・デリンも、トミー・デナンダーのプロジェクトではお馴染みの人物。作曲のクレジットにあるBjörn Lindbomというのは彼の本名らしいです。
本作のオリジナル・リリースは1999年ですが、わずか2000枚しかプレスされておらず、市場には2009年に再発されたボーナス・トラック入りリマスター盤が出回っているようです。また、今年(2023年)になって、Sayitの1stと2ndをカップリングした ONE & AGAIN が500枚限定で発売されています。
以下、お気に入りの曲をいくつかご紹介してみます。
01. A Second Start
中低域が魅力的なイエア・ロニング、高域に張りのあるピエール・ウェンスベリ、二人のツイン・ボーカルで聴かせる極上AOR。幕開けから名曲・名唱です。高いところでイエア・ロニングが若干苦しそうですが、二人ともまあ歌のうまいことと言ったらありません!
中低域が魅力的なイエア・ロニング、高域に張りのあるピエール・ウェンスベリ、二人のツイン・ボーカルで聴かせる極上AOR。幕開けから名曲・名唱です。高いところでイエア・ロニングが若干苦しそうですが、二人ともまあ歌のうまいことと言ったらありません!
02. House of Glass
ゆったりとしてライトなAORです。リード・ボーカルはピエール・ウェンスベリ。これも良い曲です。
ゆったりとしてライトなAORです。リード・ボーカルはピエール・ウェンスベリ。これも良い曲です。
03. Standing on the Outside
これも軽い感じのAORですが、イエア・ロニングの渋いボーカルが曲に深い味わいをもたらしていると思います。
これも軽い感じのAORですが、イエア・ロニングの渋いボーカルが曲に深い味わいをもたらしていると思います。
04. One Unguarded Moment
イエア・ロニングが歌う少しブルージーなAOR。彼のボーカル・スタイルによく合っていて大好きな曲です。
イエア・ロニングが歌う少しブルージーなAOR。彼のボーカル・スタイルによく合っていて大好きな曲です。
05. Could You Love Me Again
ボーカルは再びピエール・ウェンスベリです。いわゆるハネ系リズムが心地良いフュージョン寄りのAOR。
ボーカルは再びピエール・ウェンスベリです。いわゆるハネ系リズムが心地良いフュージョン寄りのAOR。
06. Garden of Eden
これは更にフュージョンっぽい曲。ボーカルはイエア・ロニングです。何を歌わせても上手いわ、この人!
これは更にフュージョンっぽい曲。ボーカルはイエア・ロニングです。何を歌わせても上手いわ、この人!
10. You
イエア・ロニングと女性ボーカリストのアニカ・ブルマンのデュエット。日本で言うところのシティ・ポップのようなちょっとオシャレな曲です。
イエア・ロニングと女性ボーカリストのアニカ・ブルマンのデュエット。日本で言うところのシティ・ポップのようなちょっとオシャレな曲です。
■Tracks
01. A Second Start (Tommy Denander, Björn Lindbom)
02. House of Glass (Tommy Denander)
03. Standing on the Outside (Tommy Denander, Björn Lindbom)
04. One Unguarded Moment (Tommy Denander, Björn Lindbom)
05. Could You Love Me Again (Tommy Denander)
06. Garden of Eden (Tommy Denander, Björn Lindbom)
07. You're My Inspiration (Tommy Denander, Björn Lindbom)
08. She's the One (Tommy Denander, Björn Lindbom)
09. Hear Me Heaven (Tommy Denander, Björn Lindbom)
10. You (Tommy Denander, Björn Lindbom)
11. Once You Love Somebody (Steve Perry, Jonathan Cain)
[Unreleased Bonus Track]
12. Talk to Me (Tommy Denander)
評価 ★★★★☆
★★★★★ 傑作
★★★★☆ 秀作
★★★☆☆ 佳作
★★☆☆☆ 凡作
★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。■Personnel
Tommy Denander - Programming, Keyboards, Bass, Rhyhm Guitars (all except 4), Backing Vocals (5)
Sayit - Rhyhm Guitars (1, 2, 3)
Bruce Gaitsch - Rhyhm Guitars (acoustic on 5)
Geir Rønning - Lead Vocals (1, 3, 4, 6, 8, 10)
Pierre Wensberg - Lead Vocals (1, 2, 5)
Andy Eklund - Lead & Backing Vocals (7, 9, 11)
Annika Burman - Lead & Backing Vocals (10)
Thomas Vikström - Backing Vocals (1, 3, 6, 8)
Mikael Erlandsson - Backing Vocals (9)
Mikael Eriksson - Backing Vocals (9)
Kristoffer Lagerström - Backing Vocals (2)
Producer - Tommy Denander, Ricky B. Delin