メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

トミー・ハート

Zenology / Zeno (1995)

0063Zenology
1stアルバムZenoから9年経ってリリースされたジーノのアルバム。ただし、ジーノというバンドは1stリリース後の1989年に解散しており、Zenologyと名づけられたこのアルバムは、解散以前にレコーディングしたもの、解散後に仲間を集めてレコーディングしたもの、このアルバム製作過程で新たにレコーディングしたものを収録した、録音時期がバラバラな未発表音源集という性格のものです。そういう意味でジーノの2ndアルバムは、バンド復活後に録音されたListen to the Light(1998)まで待たなければなりません。

1stのレビューでは「神々し過ぎて疲れる」的なことを書きましたが、本作では賛美歌みたいな曲やおかしな中華風メロディもなく、オーソドックスなメロディアス・ハードロックを聴くことができ、またサウンド・プロダクションの違いのせいか、ギターやボーカルがキンキンうるさくなくて好感度はぐっとアップしました。音を隙間なく詰め込んだような印象のある1stに比較して全体的にザックリしたサウンドで、メロディの良さとジーノ・ロートのギターのエモーショナルさが素直に伝わってきて筆者としては非常に聴きやすかったです。

録音時期がバラバラなため、曲によってジーノ・ロート以外のメンバーも微妙に異なりますが、ほとんどがジーノのオリジナル・メンバーと、後継バンドであるフェア・ウォーニングのメンバーで占められています。ボーカル・パートは、1stで歌っていたマイケル・フレクシグ、フェア・ウォーニングのボーカリストのトミー・ハート、ギタリストのヘルゲ・エンゲルケの3人が担当しています。マイケル・フレクシグのボーカルは、前述したように1stよりずっと聴きやすく、そのクリスタルボイスを十分堪能できました。トミー・ハートはもちろん大好きなボーカリストなので大満足です。心なしかフェア・ウォーニングよりテンションが高いように感じるほどの熱唱です。問題はヘルゲ・エンゲルケ。リード・ボーカルやるほどの歌唱力ないでしょ、どう考えても。明らかにアルバムのクォリティを下げてますよ。なんでマイケル・フレクシグかトミー・ハートに歌わせなかったのか。謎ですね。。。ドラムは全曲C.C.ベーレンス、ベースはウレ・リトゲン、ヘルゲ・エンゲルケ、ジーノ・ロートが担当しています。一部の曲でキーボードを弾いているライナー・プシュヴァーラは、ジーノの兄ウリ・ジョン・ロート率いるエレクトリック・サンのアルバムBeyond the Astral Skies(1985)に参加していたミュージシャンです。なお、同アルバムにはジーノ・ロート、マイケル・フレクシグ、ウレ・リトゲンも参加していました。

収録されている曲のうち、#1"Heat of Emotion"は、フェア・ウォーニングのレパートリーとしておなじみだし、分派のラスト・オータムズ・ドリームの2ndにも収録されています。ただ、このアルバムとフェア・ウォーニングの1stではジーノ・ロート作曲となっているのに、ラスト・オータムズ・ドリームのアルバムではウレ・リトゲン作とされています。どっちが正しいのでしょうか??また、#7"Man on the Run"と#9"You Got Me Down"は、ドイツのバンドVictoryがアルバムで取り上げています。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Heat of Emotion
02. Is It Love
03. Together
04. Surviving the Night
05. In the Dark
06. Let There Be Heaven
07. Man on the Run
08. Out in the Night
09. You Got Me Down
10. Ticket to Nowhere
11. In Love With an Angel
12. Crystal Dreams
All songs were written by Zeno Roth, except "In Love With an Angel"(Zeno Roth, Michael Flexig)


■Personnel
Zeno Roth - guitars, bass (8, 10), keyboards (5, 11, 12), backing vocals
Tommy Heart – vocals (2, 4, 8), backing vocals
Michael Flexig - vocals (1, 3, 5, 6, 11), backing vocals
Helge Engelke – vocals (7, 9, 10), backing vocals, guitars (6, 7, 9, 11), bass (5, 6, 7, 9, 11, 12), keyboards (5, 11, 12)
Ule Winsomie Ritgen - bass (1, 2, 3, 4), backing vocals
C. C. Behrens – drums
Rainer Przywara – keyboards (1, 2, 3, 4), backing vocals
Susanne Schätzle – backing vocals
Joal – backing vocals
Susann Ohlendolf – backing vocals
 

Producer - Zeno Roth, Helge Engelke

ジーノロジー
ジーノ
EMIミュージック・ジャパン
2005-07-21

 

Live at Home / Fair Warning (1995)

0055Live at Home

フェア・ウォーニングの2ndアルバムRainmakerリリースに合わせて行われた、1995年6月母国ドイツでのアコースティック・ライブ・ツアーから6曲、Rainmaker収録曲の別バージョンを2曲、計8曲が収められたミニ・アルバム。ライブの曲目は、1曲目の"Hang On"は1stのFair Warning収録曲、それ以外はRainmaker収録曲です。元バージョンがヘヴィな#4"Desert Song"もなんだかあっさりしていて、トミー・ハートがロバート・プラント風なのが意外。アコースティック・バージョンというのは曲メロの良さがよく分かって、これはこれでいいのですが、フェア・ウォーニングの場合やはり元曲が聴きたくなってしまいます。筆者は、続けてオリジナル・アルバムを聴いてしまうというパターンが毎度です。レコーディングのメンバーは、トミー・ハート(Vo)、ヘルゲ・エンゲルケ(Gt)、アンディ・マレツェク(Gt)、C.C.ベーレンス(Ds)、ウレ・リトゲン(Ba)の5人に加え、4thアルバム4 でドラムを担当することになるフィリップ・カンダスがパーカッションでクレジットされています。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Hang On (U. W. Ritgen)
02. Angel of Dawn (U. W. Ritgen)
03. Don't Give Up (H. Engelke)
04. Desert Song (U. W. Ritgen)
05. Burning Heart (U. W. Ritgen)
06. Rain Song (U. W. Ritgen)
07. What Did You Find [acoustic studio mix] (H. Engelke)
08. Rain Song [rain dance mix] (U. W. Ritgen)

■Personnel
Tommy Heart – lead vocals
Helge Engelke – guitars
Andy Malecek – guitars
Ule W. Ritgen – bass
C. C. Behrens – drums

Philip Candas – percussion

Producer – Fair Warning

ライヴ・アット・ホーム
フェア・ウォーニング
ダブリューイーエー・ジャパン
1995-10-25

 

Rainmaker / Fair Warning (1995)

0021Rainmaker

ドイツのメロディアス・ハードロック・バンド、フェア・ウォーニングの1995年発表の2ndスタジオ・アルバム。ファンからは、1stに比べてダークになった、へヴィになった、あるいは試行錯誤の産物だ、そのように言われることも少なからずあるようです。そんな意見にも一理あると筆者も思います。1stのような高揚感が前面に出ていないという印象は確かにあります。しかし、だからといってこのアルバムが彼らの作品の中で特に劣っているものだとは思っていません。ダーク、へヴィという評価は、おそらくこのアルバムの収録曲"Desert Song"の印象が大きいのではないかと想像しています。「哀愁」というより「陰鬱」という言葉がふさわしいような"Desert Song"は、筆者も最初はフェア・ウォーニングのスタイルと違う、とっつきづらい曲だと感じました。しかし、何度も聴くうちに、表面的な暗さとは逆に、人間の「祈り」とか「希求」とか、そういうポジティブなイメージが湧いてくるようになりました。この曲のエモーショナルなギター・ソロには毎度ゾクゾクするし。そう思ってアルバム全体を聴くと、装飾的なキーボード音を控え気味にし、即効的な高揚感も抑えたサウンドが次第に耳に馴染んできました。バンドのセルフ・プロデュースということからも、彼らは実はこういうサウンドを作りたかったんだなと改めて思うのです。日向の明るさをイメージさせる1stに比べて、陰影があり、奥行きを感じさせるこのアルバムも、このバンドの力量を遺憾なく示した傑作だと今は思っています。"Desert Song"以外では、前作の高揚感をさらに強化した"Burning Heart"、アンディ・マレツェクがフェア・ウォーニング脱退後にラスト・オータムズ・ドリームでカバーした"Pictures of Love"などもこのバンドの名に恥じない名曲です。レコーディング・メンバーは1stと変化はなく、トミー・ハート(Vo)、ヘルゲ・エンゲルケ(Gt)、アンディ・マレツェク(Gt)、C.C.ベーレンス(Ds)、ウレ・リトゲン(Ba)の5人です。

ところで、Rainmakerというのはネイティブ・アメリカン(いわゆるインディアン)の雨乞いの呪術に使う楽器だそうで、このアルバムはそこらへんをテーマにしているらしいです。前から思っていたのですが、トミー・ハートの容貌が金髪碧眼の生粋のドイツ人ではなく、どことなくインディアン風なのは何か関係があるのでしょうか。また、ヘルゲ・エンゲルケのドリーム・タイドでも繰り返しネイティブ・アメリカン的なメロディが出てくるのも気になるところです。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Stars and the Moon (H. Engelke)
02. One Way Up (U. W. Ritgen)
03. Too Late for Love (U. W. Ritgen)
04. The Heart of Summer (U. W. Ritgen)
05. Don't Give Up (H. Engelke)
06. Lonely Rooms (H. Engelke)
07. Desert Song (U. W. Ritgen)
08. Pictures of Love (U. W. Ritgen)
09. Desolation Angels (U. W. Ritgen)
10. Angel of Dawn (U. W. Ritgen)
11. Burning Heart (U. W. Ritgen)
12. What Did You Find (H. Engelke)
13. Get a Little Closer (U. W. Ritgen)
14. Rain Song (U. W. Ritgen)
※日本盤ボーナス・トラック
15. The Call of the Wild (U. W. Ritgen)
16. Children's Eyes(Live) (U. W. Ritgen)
17. Over You (U. W. Ritgen)

■Personnel
Tommy Heart – lead vocals
Helge Engelke – guitars
Andy Malecek – guitars
Ule W. Ritgen – bass
C. C. Behrens – drums

Producer – Fair Warning

RAINMAKER
フェア・ウォーニング
ワーナーミュージック・ジャパン
2006-10-11

 

Fair Warning / Fair Warning (1992)

0001Fair Warning

「メロディアス・ハード」という言葉からまず思い浮かぶバンドは、なんといってもフェア・ウォーニングです。というわけで、レビューの記念すべき第一弾目はフェア・ウォーニングのデビュー盤です。

フェア・ウォーニングは、スコーピオンズの2代目のギタリストだったウリ・ジョン・ロートの弟、ジーノ・ロートのバンド、ジーノのメンバーを中心に結成されたドイツのバンドです。先駆者であるスコーピオンズ、そしてジーノが切り開いた、メロディアスなハードロックをとことんまで追求したバンドだと思います。筆者がメロハーに求める要素の2本柱は、突き抜けるような高揚感と切ない哀愁ですが、フェア・ウォーニングはこの二つを十二分に兼ね備えています。特にこの1stアルバムは、全曲シングルカットしてもおかしくないような良質なメロディーが、これでもかというほどに押し寄せてきます。1コーラスですぐサビにいくのが、60~70年代のヒットチャートをにぎわしたポップス群を髣髴とさせて心憎い限りです。また、バンドの演奏力、ヴォーカルのトミー・ハートの歌唱力も極めて高レベル。ヘルゲ・エンゲルケのスカイギターの飛翔感、アンディ・マレツェクのツボを心得た泣きのギターも聴き所の一つです。C.C.ベーレンス(Dr)、ウレ・リトゲン(Ba)のリズム隊も実に堅実な仕事をしています。なんでこんないいバンドが日本以外では大した人気がなく、「ビッグ・イン・ジャパン」などという不名誉なレッテルを貼られてしまっているのでしょうか。。。

なお、ボーナス・トラックの"In the Ghetto"はエルヴィス・プレスリーのレパートリーで、来日記念盤EPに収録されていたもの、"Hold Me"は初期のデモとして製作されたものです。プロデュースとミックスはレイフ・マッケンナ。1970年代からWishbone Ash、Bad Company、Giant、Foreigner、Teslaなどの数多くのアルバムに、エンジニアやプロデューサーとして関わっているベテランです。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Longing for Love (U. W. Ritgen)
02. When Love Fails (H. Engelke)
03. The Call of the Heart (U. W. Ritgen)
04. Crazy (U. W. Ritgen)
05. One Step Closer (H. Engelke)
06. Hang On (U. W. Ritgen)
07. Out on the Run (U. W. Ritgen)
08. Long Gone (U. W. Ritgen)
09. The Eyes of Rock (U. W. Ritgen)
10. Take a Look at the Future (U. W. Ritgen)
11. The Heat of Emotion (Z. Roth)
12. Take Me Up (U. W. Ritgen)
※日本盤ボーナス・トラック
13. In the Ghetto
14. Hold Me

■Personnel
Tommy Heart – vocals
Helge Engelke – guitars, keyboards and backing vocals
Andy Malecek – guitars
Ule W. Ritgen – bass guitar and backing vocals
C. C. Behrens – drums

Bernd Kluse – backing vocals
Andrew McDermott – backing vocals
Kalle Bosel – backing vocals

Producer – Rafe McKenna

フェア・ウォーニング
フェア・ウォーニング
ワーナーミュージック・ジャパン
2006-10-11

記事検索
カテゴリ別アーカイブ
読者登録
LINE読者登録QRコード
タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ