メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

トミー・ハート

For a Fistful of Dollars / Soul Doctor (2005)

0497For A Fistful Of Dollars









Fair Warningのトミー・ハート(Vo)と、そのHeartlyne時代の仲間クリス・ライン(G)によるドイツのハードロック・バンドSoul Doctorの3年ぶりの3rdアルバム。ベースのヨルグ・ダイジンガーが脱退し、かわりに元Heartlyne、Skew Siskinのヨギー・ラウテンベルクが加入しています。また、ドラムのザッキーことアタナシオス・ツォウカスも録音途中に脱退、急遽オーストリア人ドラマーのマリオ・B(元Blind Petition、Skew Siskin)がサポートでドラムを叩いています。というわけで結果的にHeartlyne、Skew Siskinの人脈でバンドが固められることになりました。

前作では若干メロディアスな方向性も見せていましたが、本作では1stの線に戻ってロックン・ロールとブルースをベースにしたハードロックが全面展開です。ZEP、AC/DC、初期Gotthardといったところの影響が顕著なサウンドです。演奏はシンプルでタイトだし、トミー・ハートの高揚感は健在だし、気持ちの良いことこの上ないのですが、この路線も3作目となるとやはりマンネリという言葉が頭に浮かんでしまいます。AC/DCのようにマンネリの美学とも言うべき境地に達することができればまた話は別ですが、このまま真っ直ぐ行くのはちょっと苦しいかな。

最後に、ボーナス・トラックのZEPのメドレー、これは辛い。。。ちっとも面白くない。逆にLed Zeppelinというバンドの物凄さを思い知らされた感じです。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Eatin' on Me
02. Best Way to Fade
03. Under Your Skin
04. Remember
05. Where Do We Go
06. Ten Seconds of Love
07. She's Mine
08. The Trigger (Goin' Downhill)
09. Give Me a Ride (The Ride)
10. Cheap, Down 'N Nasty
[Bonus Track]
11. Rock and Roll / Heartbreaker
All songs written by Heart & Lyne except #11 written by Page, Plant, Jones & Bonham

■Personnel
Tommy Heart - Vocals
Chris Lyne - Guitar
Jogy Rautenberg - Bass
Mario B. - Drums on #1, 2, 3, 8
Zacky - Drums on #4, 5, 6, 7, 9, 10

Igor Flach - Blues Harp on #2, 10
Martin Zitzmann - Hammond on #4
Alex Kraut - Piano on #4, Hammond on #5, 8
Rollo Volter - Tenor Saxophone on #6, 7, 8
Christian Fischer - Trombone on #6, 7, 8
Lars Mensching - Trumpet on #6, 7, 8

Producer - Tommy Heart, Chris Lyne

For A Fistful Of Dollars
ソウル・ドクター
マーキー・インコーポレイティド
2005-07-21


Aura / Fair Warning (2009)

0416Aura









Fair Warningの再結成後2作目、通算6枚目のオリジナル・アルバムです。前作Brother's Keeperもまあまあの出来だったわけですが、今回は前作はもちろん解散前の傑作を凌ぐような作品を期待していました。そして#1"Fighting for Your Love"も、#2"Here Comes the Heartache"も、ドラマチックで高揚感溢れるメロディが素晴らしく、Fair Warningにまた新たな名曲が加わったと大喜びしました。「これはいける!」と思ったのに、ところがどっこい3曲目でもうバラード?しかもクサさばかりが鼻につきます。ほめ言葉ではなく悪い意味で臭いのです。この後もやけにバラードが多く、なんと全12曲中6曲がバラード。悪くない曲もあるけれど、いくらなんでもアルバム半分バラードってのはないでしょう。バラード以外の曲は佳曲だと思いますが冒頭の2曲ほどではありません。前作と同じく既発曲と似たようなフレーズやメロディ展開が散見されるのも気になります。また、ヘルゲのハイ・フレットからの高音を活かしたギター・ソロはこのバンドに無くてはならない要素であることは確かですが、そろそろやり過ぎ感が出てきました。なんでもかんでもハイ・フレットに持っていかなくてもいいんじゃない?フレーズもマンネリ気味だし。まあ、そうは言っても全体として見れば、凡百のバンドには作り出すことの出来ない高品質なアルバムであることに間違いはないのです。筆者にとってFair Warningはメロハーに目覚めさせてくれたバンドの一つであり、思い入れが深いだけに求めるものが大きいのかもしれません。

なお、本作は通常盤の他に、6曲入り(4曲は収録曲の別バージョン)ボーナス・ディスク付の2枚組限定盤も発売されており、筆者はそちらを聴いています。ボーナスの"Station to Station"、"Just as She Smiles"は割りといい曲なので、本編のバラードを3曲くらい削ってこの2曲を入れたらもっと印象が良かったのになあ。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Fighting for Your Love (Ule W. Ritgen)
02. Here Comes the Heartache (Ule W. Ritgen)
03. Hey Girl (Ule W. Ritgen)
04. Don't Count on Me (Helge Engelke)
05. Falling (Ule W. Ritgen)
06. Holding On (Ule W. Ritgen)
07. Walking on Smiles (Helge Engelke)
08. Someday (Ule W. Ritgen)
09. It Takes More (Ule W. Ritgen)
10. As Snow White Found Out (Helge Engelke)
11. Just Another Perfect Day (Ule W. Ritgen)
12. Falling Reprise (Ule W. Ritgen)
[Bonus Disc]
01. Station to Station
02. Just as She Smiles
03. Hey Girl (Alternative Version)
04. Fighting for Your Love (Alternative Version)
05. Station to Station (Alternative Version)
06. Falling Reprise (Alternative Version)

■Personnel
Tommy Heart – vocals
Helge Engelke – guitars
Ule W. Ritgen – bass
C. C. Behrens – drums

Producer – Fair Warning

オーラ
フェア・ウォーニング
キングレコード
2016-08-31

AURA(初回限定盤)
フェア・ウォーニング
マーキー・インコーポレイティド
2009-06-24

Systems Go Wild! / Soul Doctor (2002)

0381Systems Go Wild









Fair Warning脱退後トミー・ハートが結成したドイツのハードロック・バンドSoul Doctorの2ndアルバム。バンド・メンバーは前作と変わらず、クリス・ライン(G)、J.D.ことヨルグ・ダイジンガー(B)、ザッキーことアタナシオス・ツォウカス(Ds)。音の方もやはり前作同様の路線で、ロックン・ロールをベースにしたオーソドックスでソリッドなハードロックです。収録曲は全てバンドとスティーヴ・プランケット(Autograph)によって書かれており、この点も前作と同じです。

バンドにとって2作目となるこのアルバムは、シンプルな楽曲、高い演奏力、装飾を排したプロダクションが相まって、前作以上にタイトな印象を受けます。加えて、若干ですがメロディに叙情味が増しているので、更にGotthardやShakraといったスイス勢の音に近くなったように感じます。再結成後のややまったりし過ぎたFair Warningより、このSoul Doctorの方がむしろいいかなぁ。聴いていてとても気持ちがいいんですよね。楽曲は全曲素晴らしいのですが、特にお気に入りなのは、突進するリフがカッコいい#1"Livin' the Life"、リフがJudas Priestっぽい#3"Get It On"、ブルージーでメロディアスなバラード#4" See You In Heaven"、高揚感溢れるロックンロール#6"Cheap Talk"といったところ。Led Zeppelinの影響が顕著ですがメロディアスな要素もある、#8"Our Time"、#9"Good Time's Slippin' Away"、#10"Just Can't Get Over You"の3連発もカッコいいです。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. Livin' the Life (Steve Plunkett, Peter Beckett)
02. Wrong or Right (Tommy Heart, Chris Lyne, Steve Plunkett)
03. Get It On (Tommy Heart, Chris Lyne, Steve Plunkett)
04. See You In Heaven (Tommy Heart, Chris Lyne, Steve Plunkett)
05. All Systems Go! (Tommy Heart, Chris Lyne, Zacky, Steve Plunkett)
06. Cheap Talk [Japanese bonus track] (Tommy Heart, Chris Lyne, Steve Plunkett)
07. Somebody (Tommy Heart, Chris Lyne, Steve Plunkett)
08. Our Time (Tommy Heart, Chris Lyne, Steve Plunkett)
09. Good Time's Slippin' Away (Tommy Heart, Chris Lyne, Zacky, Steve Plunkett)
10. Just Can't Get Over You (Tommy Heart, Chris Lyne, Steve Plunkett)
11. Waitin' (Sinisha Licanin, Tommy Heart, Chris Lyne, Zacky)

■Personnel
Tommy Heart - Vocals
Chris Lyne - Guitar
J.D. - Bass
Zacky - Drums

Sinisha Licanin - Keyboards

Producer - Tommy Heart, Chris Lyne

Systems Go Wild
Soul Doctor
Point
2002-10-27

 

Brother's Keeper / Fair Warning (2006)

0322Brother's Keeper









解散状態だったFair Warningの復活第一作。残念ながらアンディ・マレツェク(Gt)は再結成に加わっていませんが、トミー・ハート(Vo)、ヘルゲ・エンゲルケ(Gt)、ウレ・リトゲン(Ba)、C.C.ベーレンス(Ds)とオリジナル・メンバー4人が顔を揃えました。

久しぶりのFair Warningの新作ということで、期待は大きく膨らんでいましたが、#1"Don't Keep Me Waiting"を聴いた途端、その期待が裏切られなかったことを確信して嬉しかったです。今まで通りの分厚いサウンド、ドラマチックなメロディ、そして天空から降りそそぐギターの音色、全てにうっとりしてしまいます。これは文句なく名曲ですね。残りの楽曲も概ね出来が良く、アルバムを通してFair Warningらしさを十分に堪能できます。しかしながら、「あれ?なんか前に聴いたことがあるような」と感じる場面が少なからずあり、その点はちょっと失望を禁じえません。このバンドはメロディやフレーズの使い回しが以前からありました。本作ではそれがさらに増えています。過去作からか、DreamtideかはたまたZenoからか、一々確認はしていませんがあまり印象は良くありません。マンネリという声も聞かれますが、マンネリとはちょっと違うような気がします。作風や路線を大きく変えないという意味では、マンネリが必ずしも悪いとは言えないけれど、過去の楽曲のパーツのつぎはぎで曲を仕立てるのはミュージシャン・シップのレベルが低いことの表れだと思うのです。うーむ、この作品で初めてFair Warningを聴いたのなら間違いなく名盤と認定しただろうなぁ。。。なんとも複雑な感想を抱いてしまいました。

なお、本作の国内盤CDは、2006年オリジナル盤(13曲収録)が2種(ドキュメンタリー映像を収録したDVD付き初回限定盤とCDのみの通常盤)、2009年紙ジャケSHM-CD仕様(15曲収録で曲順も異なる)、2016年リマスター盤(12曲収録)が流通しています。毎度のことながら、あー、めんどくさ。。。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Don't Keep Me Waiting (Ule W. Ritgen)
02. Tell Me Lies (Helge Engelke)
03. In the Dark (Ule W. Ritgen)
04. Wasted Time (Ule W. Ritgen)
05. No Limit (Ule W. Ritgen)
06. Generation Jedi (Helge Engelke)
07. The Way (Ule W. Ritgen)
08. All of My Love (Ule W. Ritgen)
09. Once Bitten Twice Shy (Ule W. Ritgen)
10. The Cry (Ule W. Ritgen)
11. All I Wanna Do (Ule W. Ritgen)
12. Rainbow Eyes (Ule W. Ritgen)
13. Push Me On (Ule W. Ritgen)

■Personnel
Tommy Heart – vocals
Helge Engelke – guitars
Ule W. Ritgen – bass
C. C. Behrens – drums

Producer – Fair Warning

ブラザーズ・キーパー
フェア・ウォーニング
マーキー・インコーポレイティド
2006-07-26

 

Live in Japan / Fair Warning (1993)

0268Live In Japan









なんか忘れていると思ったら、Fair Warning(フェア・ウォーニング)の1993年初来日ライブ盤がまだでした。リリース順のレビューという形は崩れますが、取り上げておきたいと思います。

彼らの初来日は93年4月で、14日名古屋、16日大阪、17、18日川崎と4回の公演が行なわれており、アルバムには最終日18日クラブチッタ川崎でのライブが収録されています。また映像収録も行なわれ、VHSビデオ(後にDVD化)が発売されました。1stアルバムをリリースしたばかりで初来日公演、そしてライブ盤収録となったわけで、当初からこのバンドがいかに日本のファンに支持されていたかがよく分かります。あらためてこのライブ盤を聴いてみると、まだ若々しく溌剌としたFair Warningのライブ・パフォーマンスと、心からライブを楽しんでいる日本の観客の反応が感じ取れます。ライブDVDは更にこちらに訴えかけるものがあって、ちょっと感動的ですらあります。もう四半世紀も前のライブなんですが、良いものは何年経っても良いですね。

収録曲は当然1stアルバムからのものが大半ですが、前身バンドとも言えるZenoのレパートリーから#5"Eastern Sun"、#16"A Little More Love"、更にプレスリーの#11"In the Ghetto"、坂本九の#12"Sukiyaki"(上を向いて歩こう)、スモーキー・ロビンソンとミラクルズの#17"Mickey's Monkey"なんていうのまで演っていて楽しませてくれます。全17曲(DVDは19曲)というボリュームで、デビュー間もないFair Warningの圧巻のパフォーマンスを再体験できる貴重なライブ盤だと思います。特にまだ元気なアンディ・マレツェクの情感溢れるプレイはファンにとって涙モノです。

 評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Sunset (Intro) (U. W. Ritgen) 
02. Out on the Run (U. W. Ritgen) 
03. Longing for Love (U. W. Ritgen) 
04. When Love Fails (H. Engelke)
05. Eastern Sun (Z. Roth)
06. Take Me Up (U. W. Ritgen) 
07. Long Gone (U. W. Ritgen) 
08. The Heat of Emotion (Z. Roth)
09. Take a Look at the Future (U. W. Ritgen) 
10. The Call of the Heart (U. W. Ritgen) 
11. In fhe Ghetto (M. Davis)
12. Sukiyaki (H. Nakamura/R. Ei)
13. Hang On (U. W. Ritgen) 
14. The Eyes of Rock (U. W. Ritgen) 
15. One Step Closer (H. Engelke)
16. A Little More Love (U. W. Ritgen) 
17. Mickey's Monkey (E. Holland/L. Dozier/B. Holland)

■Personnel
Tommy Heart – Lead Vocals
Helge Engelke – Guitars, Backing Vocals
Andy Malecek – Guitars
Ule W. Ritgen – Bass, Backing Vocals
C. C. Behrens – Drums

Torsten Lüderwald - Keyboards

Producer – Fair Warning

ライヴ・イン・ジャパン
フェア・ウォーニング
WEAミュージック
1993-12-21

 

Soul Doctor / Soul Doctor (2001)

0256Soul Doctor









Fair Warning脱退後トミー・ハートが結成したSoul Doctor(ソウル・ドクター)の1stアルバム。トミーのFair Warning脱退の経緯については本作ライナーノーツに詳述されていますが、簡単に言ってスタジオ録音がメインでライブに消極的なバンドの姿勢が不満だったということらしいです。Fair Warningの主導権はウレ・リトゲンとヘルゲ・エンゲルケが握っており、曲作りも独占されていることにもフラストレーションが溜まっていたのでしょう。2000年の来日公演を前にアンディ・マレツェクが一足先に脱退しており、公演後にトミーが抜けFair Warningは解散状態に陥ることになります。

さて、このトミー・ハートの新バンドSoul Doctor、トミー以外のメンバーですが、まずギターにクリス・ライン。トミーの幼馴染だそうで、1980年代にトミーと共にHeartlyneというバンドを組んでいました。ハートとラインでハートラインなわけですね。ベースはJ.D.ことBonfireのヨルグ・ダイジンガー。ドラムはザッキーことアタナシオス・ツォウカス(Athanasios Tsoukas)、なんだかビザンツ皇帝のようなスゴイ名前のこの人はドイツのメタル・バンドAttackの出身です。そして、プロデューサーのジム・ヴォックスはドイツのHRバンドSkew Siskinのギタリスト。ついでにAdditional musiciansですが、クラッシュ・クリックはSkew Siskinのドラマー、アレクサンダー・ストローチは元Heartlyneのキーボード奏者。イゴール・フラッハは故人ですがドイツのブルース・ハープ奏者。ちなみに、Skew Siskinのベーシストであるヨギー・ラウテンベルクは元Heartlyneのメンバーで、後にSoul Doctorにも参加します。こうして見てくると、Soul Doctor、Heartlyne、Skew Siskinは相互に関係が深く、Zeno~Fair Warning系のつながりとは別のトミーの人脈が伺えます。

そういう人脈を反映して本作のサウンドも、Zeno~Fair Warningに共通した叙情的なメロディアス・ハードロックとは異なり、ロックン・ロールとブルースをベースにした、オーソドックスなハードロックとなっています。Fair Warningにはその要素が全くなかった泥臭ささえ感じられるものの、乾いた感じは受けない音、たとえて言うなら初期Gotthardに類似しているかな。そんなわけで、Soul DoctorにFair Warningの面影を見出すのは難しいでしょう。もちろん、高揚感に満ちたトミー・ハートの声と歌いまわしは変わらないので、その点ではFair Warning同様に不安なく楽しめます。ロックン・ロール調の曲だとロバート・プラントを思わせるような歌いっぷりで、これはこれでまたカッコいいです。なお、Foreignerのカバー#1"Soul Doctor"以外は、収録曲は全てバンドとスティーヴ・プランケット(Autograph)によって書かれたもの。ストレートかつシンプルですが、ライブ映えしそうな曲ぞろいです。なるほどトミーはこういう音楽がやりたかったのかと納得できます。しかしまあ、これだけのテンションとパワー感を、スタジオ録音に詰め込んだこのバンドとプロデューサーの力量は大したもんだなぁと感心しました。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Soul Doctor
02. Shake 'Em on Down
03. Goodbye
04. Before the Night Is Over
05. Unspoken Words
06. What Do U Want
07. Who Will Be There
08. You're All That I Want
09. Down the Blvd.
10. Emotion in Motion
11. Does It Feel Like Love
12. Wild and on the Run [bonus track]
All songs written by T. Heart, C. Lyne, J. Deisinger, Zacky and Steve Plunkett
except "Soul Doctor" written by M. Jones/L. Gramm

■Personnel
Tommy Heart - Vocals
Chris Lyne - Guitar
J.D. - Bass
Zacky - Drums

Additional musicians - Crash Klick, Alexander Strauch, Andreas Kemper, Igor Flach

Producer - Soul Doctor
Co-producer - Jim Voxx

ソウル・ドクター
ソウル・ドクター
マーキー・インコーポレイティド
2001-04-25

 

4 / Fair Warning (2000)

0221Four









ドイツのメロハー・バンド、フェア・ウォーニングの4thアルバム。世間一般的に評価の高い前作Go! は筆者にとってはモヤモヤの残る作品でしたが、本作に関しては1stに並ぶ傑作だと思っています。どんだけトラック重ねて録ったんだって言いたくなるほど緻密でブ厚いボトム、そこから立ち昇り空を駆け巡るかのようなヘルゲ・エンゲルケのギター(正確にはスカイ・ギターじゃないらしい)、そのハイ・ポジションから繰り出される音色は、もう鈴虫か小鳥の鳴き声か、はたまたオカリナかと錯覚するくらいですが、とにかく心に響きます。そして、どこまでも高く、天に届かんばかりのトミー・ハートのボーカル。やはりこのバンドのサウンドとメロディがもたらす高揚感は半端じゃないです。中でも筆者のお気に入りは#1"Heart on the Run"、#2"Through the Fire"、#4"Forever"、#7"I Fight"、#10"Find My Way"、#12"Wait"。テンション上がりまくりますね。ただ、このアルバムにも瑕疵がないわけではなく、まずスネアがポコポコ軽いのが気になります。それから、またもやウレ・リトゲンが#11"Night Falls"で2ndRainmaker 収録曲"Rain Song"のメロディを使い回しています。本作の楽曲も平均点ではヘルゲ・エンゲルケのほうが上回っていると感じるし、無理してウレ・リトゲンの曲を入れなくてもいいんじゃないかなぁ。

原因不明の全身麻痺という病で、次第に存在感希薄となったアンディ・マレツェクは、本作をもってバンドを脱退、アンディと仲の良かったトミー・ハートもバンドを離れることになります。残ったウレ・リトゲンとヘルゲ・エンゲルケはバンドの活動休止を決断、実質的にここでフェア・ウォーニングは解散状態となるわけで、本作は第一期フェア・ウォーニングの最期を飾るアルバムとなってしまいます。なお、C.C.ベーレンスは既に脱退しているため、#7を除いてドラムはサポート・メンバーだったフィリップ・カンダスが叩いています。また、バック・ボーカルのアンドリュー・マクデルモット、この人はSargant FuryやThresholdのボーカリストで、1stでもクレジットされていましたが、2011年に亡くなっています。

本作の国内盤CDは、2000年オリジナル盤の他、2009年に紙ジャケSHM-CD仕様でリリースされた再発盤が存在します。こちらは2枚組みとなっており、Disc.2には、EPHeart on the RunStill I Believe に収録されていた10曲のうち、"Still I Believe"を除く9曲が収められています。その9曲中7曲はアルバム収録曲のバージョン違いで、"For the Lonely"、"Close Your Eyes"の2曲は未収録曲と、相変わらずの面倒臭さです。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Heart on the Run (Helge Engelke)
02. Through the Fire (Ule W. Ritgen)
03. Break Free (Ule W. Ritgen)
04. Forever (Helge Engelke)
05. Tell Me I'm Wrong (Ule W. Ritgen)
06. Dream (Ule W. Ritgen)
07. I Fight (Ule W. Ritgen)
08. Time Will Tell (Ule W. Ritgen)
09. Eyes of Love (Ule W. Ritgen)
10. Find My Way (Helge Engelke)
11. Night Falls (Ule W. Ritgen)
12. Wait (Ule W. Ritgen)
13. Still I Believe [bonus track] (Helge Engelke)
14. For the Young [bonus track] (Helge Engelke)

■Personnel
Tommy Heart – vocals
Helge Engelke – guitars
Andy Malecek – guitars
Ule W. Ritgen – bass
Philip Candas – drums, percussion
C. C. Behrens – drums (Track 7)

Andrew McDermott - additional backing vocals
Anke Hansen - additional backing vocals
Jürgen Wulfes -  - additional backing vocals

Producer – Fair Warning

フォー
フェア・ウォーニング
キングレコード
2016-08-31

 

Zenology II / Zeno (2005)

0182Zenology II









ドイツのメロディアス・ハードロック・グループ、Zenoの4枚目のアルバム。タイトルを見ても分かるようにZenology の続編で、やはり過去のマテリアルに手を加えて収録した未発表曲集です。録音時期は1983~89年、ボーカルはマイケル・フレクシグ9曲、トミー・ハート2曲となっています。元V2のトミー・ハートはZenoに参加したことでウレ・リトゲンやC.C.ベーレンスと知り合い、Fair Warning結成につながったわけですが、この当時は声がまだ若くて初々しいですね。キーボードのライナー・プシュヴァーラ、バック・ボーカルのリズ・ヴァンダルは、ウレ・リトゲンらと同じくジーノ・ロートの兄ウリ・ジョン・ロートと活動してきたミュージシャン。Fair WarningやDreamtideを含めて、この辺の人たちはファミリーのように関係が深い。と思ってたら、リズ・ヴァンダルとウリの間には娘さんまでいるんですね。ほんとのファミリーだったのかと。。

さて、音のほうですが、やっぱりマイケル・フレクシグの声がトレブリーで苦手。ギターもキーボードも高い音が多い上にボーカルまでキンキンして聴き疲れします。Zenology が少し聴きやすかったのに残念です。ジーノ・ロートのギターは素晴らしいし、本作収録曲も好みなんですが、どうにも歯がゆいです。この未発表曲集のリリースに関してマイケル・フレクシグとの間でトラブルがあったらしく、ちょっと先走りますが新作Runway to the Gods のボーカルはマイケル・ボーマンにチェンジしています。多くのZenoファンとは逆に筆者は思わずニンマリした次第です。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. Call of the Heart
02. Tonight
03. Hard Beat
04. Dreaming the Night Away
05. Good Game Bad Game
06. Victoria
07. On My Way
08. Keep Your Love
09. Troubled Love
10. Time
11. Free Again (Eagle of Love)
All songs written by Zeno Roth

■Personnel
Zeno Roth - guitars, keyboards
Michael Flexig - vocals, backing vocals
Tommy Heart – vocals (3, 4), backing vocals
Ule Winsomie Ritgen - bass
C. C. Behrens – drums
Rainer Przywara – keyboards, backing vocals
Karl Heinz Boesel - backing vocals
Liz Vandall - backing vocals

Producer - Zeno 

Zenology 2
Zeno
Mtm
2005-05-23

 

Live and More / Fair Warning (1998)

0151Live & More









フェア・ウォーニングの1998年の来日公演(渋谷公会堂)を収録したライヴ・アルバムに、未発表曲3曲(再発盤は7曲)入りディスクをカップリングした作品。当時C・C・ベーレンスは脱退しており、Live at Home Go! でバンドをサポートしていたフィリップ・カンダスが代わりにドラムを叩いています。また、アンディ・マレツェクが病気でフルにステージをこなせないため、ショウの後半から登場するという変則的な形となり、代役としてヘニー・ウォルター(Thunderhead/Primal Fear)がサイド・ギターで参加しています。

ライブ盤収録曲は2ndアルバムRainmaker と3rdGo! からそれぞれ5曲ずつ。それから、シングルSave Meに収められていた"Come On"、新曲のギター・インスト"We Used to Be Friends"、計12曲となっています。1st収録曲は93年初来日公演を収録したLive in Japanに入っているので、本作では採られていないということです。こういうライブ盤を聴いて思うのは、やはり安定した演奏力・歌唱力にプラスして、ショウを盛り上げるパフォーマンスができるバンドは強いということ。いわゆるライブ・バンドってやつです。ライブ録音ならではの魅力がなければライブ盤を出す意味がない。その点このバンドはさすがに凄いです。特にラスト近くにアンディ・マレツェクが登場して会場を沸かせ、"Burning Heart"から"Get a Little Closer"へ怒涛のようになだれ込んでいく流れが素晴らしい。ただ、正直なところ1stの名曲を取り混ぜたほうが、このアルバム単体としてはもっと良くなったんじゃないかとは思いました。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
Disc 1
01. Angels of Heaven (Helge Engelke)
02. I'll Be There (Ule W. Ritgen)
03. Man on the Moon (Helge Engelke)
04. Don't Give Up (Helge Engelke)
05. Desert Song (Ule W. Ritgen)
06. We Used to Be Friends (Helge Engelke)
07. Follow My Heart (Ule W. Ritgen)
08. Intro Bach for More ~ Come On (Ule W. Ritgen)
09. Keyboard Solo ~ Save Me (Helge Engelke)
10. Burning Heart (Ule W. Ritgen)
11. Get a Little Closer (Ule W. Ritgen)
12. Stars and the Moon (Helge Engelke)
Disc 2
01. Like a Rock (Ule W. Ritgen)
02. Meant to Be (Ule W. Ritgen)
03. Out of the Night (Helge Engelke)
以上はオリジナルZero盤収録曲
以下は再発Avalon盤収録曲
04. All on Your Own (Different Version)  (Ule W. Ritgen)
05. Give in to Love  (Ule W. Ritgen)
06. Come On  (Ule W. Ritgen)
07. Rivers of Love (Diffrent Version)  (Ule W. Ritgen)

■Personnel
Tommy Heart – vocals
Ule W. Ritgen – bass
Helge Engelke – guitars
Andy Malecek – guitars

Philip Candas – drums
Torsten Lüderwaldt – keyboards
Henny Wolter - guitar, vocals

Producer – Fair Warning 

ライヴ・アンド・モア
フェア・ウォーニング
キングレコード
2016-08-31


Go! / Fair Warning (1997)

0093Go!
ドイツのメロハー・バンド、フェア・ウォーニングの3rdアルバム。日本では押しも押されぬメロディアスハードの第一人者であり、本作も名盤の誉れ高い作品です。しかしながら、世間での高評価とは異なり筆者のこのアルバムに対する印象は前2作より良くありません。1stや2ndで感じられた狂おしいまでの高揚感が薄れ、全体的にテンポもゆったりとして妙に落ち着いた感じになってしまっています。メイン・ソングライターで、本作でも全13曲中9曲を書いているウレ・リトゲンの曲は特にテンションが低くなっているように思います。1stの"Out on the Run"や2ndの"Burning Heart"といった彼の超名曲に匹敵するような曲がこのアルバムには1曲もありません。そして最悪なのは、#10"Eyes of a Stranger"と#13"The Love Song"、この2曲の歌いだしのメロディが過去作"Children's Eyes"(2ndRainmaker ボーナス・トラック)とあまりにも似通っていること。こんな露骨にメロディ使い回すってあんた、アルバム3枚でもう才能が枯渇したんかい!と、ツッコミ入れたくなってしまいます。一方、もう一人のソングライターであるヘルゲ・エンゲルケの曲作りはむしろ充実傾向にあるようで、シングル・カットされたのもヘルゲの書いた2曲、#1"Angels of Heaven"と#2"Save Me"となっています。#11"Sailing Home"も彼の曲ですが、いずれも後年のドリームタイドを思わせるドラマチックなメロディが冴え渡っています。

なお、このアルバムの日本国内盤は3種類のバージョンが出回っていますので、購入には注意が必要です。

(1)1997年にZero Corporationから発売されたもの。13曲入り。

(2)Zeroレーベル閉鎖後、契約の移ったAvalonから2000年に再発されたもの。オリジナル13曲に、以下の4曲のボーナス・トラックが追加されています。
Without You (Different version)
Light in the Dark (For EP only)
Angels of Heaven (Karaoke version)
Follow My Heart (Different version)

(3)2009年、同じくAvalonから紙ジャケット&SHM-CD仕様の2枚組で再発されたもの。2000年盤の4曲を含む全9曲のボーナス・トラックが収録されています。追加された5曲は以下の通りです。
Angels of Heaven (EP version)
I'll Be There (EP version)
All on Your Own (EP version)
Give in to Love (For EP only)
Come On (For EP only) 

これらのボーナス・トラックのうち、"Angels of Heaven"の2バージョン、"I'll Be There"、"Without You"、"Light in the Dark"計5曲はEPAngels of Heaven に収録されています。また、"All on Your Own"、"Give in to Love"、"Come On"の3曲はEPSave Me に収録されています。この3曲はLive and More のAvalon再発盤にも追加ボーナスとして収録されていますが、そこにはGo! の2種類の再発盤には入っていない"Rivers of Love (Different version)"も収録されています。"Follow My Heart (Different version)"は Go! の2種類の再発盤にのみ収録されています。

このグチャグチャぶりはリスナーには全くもって迷惑です。Zeroレーベルの事業撤退という事情もあるのですが、これ以降のアルバム全て同じような複雑な状況となっています。ハーレム・スキャーレムなどもそうですが、フェア・ウォーニングは特にオリジナル盤、再発盤、企画盤、ベスト盤、EPが入り乱れ、どの曲がどのディスクに収録されているかチェックするのが一苦労です。おそらくバンドのメンバーでさえ、全貌は分からないのではないでしょうか。。。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Angels of Heaven (Helge Engelke)
02. Save Me (Helge Engelke)
03. All on Your Own (Ule W. Ritgen)
04. I'll Be There (Ule W. Ritgen)
05. Man on the Moon (Helge Engelke)
06. Without You (Ule W. Ritgen)
07. Follow My Heart (Ule W. Ritgen)
08. Rivers of Love (Ule W. Ritgen)
09. Somewhere (Ule W. Ritgen)
10. Eyes of a Stranger (Ule W. Ritgen)
11. Sailing Home (Helge Engelke)
12. The Way You Want It (Ule W. Ritgen)
13. The Love Song (Ule W. Ritgen)

■Personnel
Tommy Heart – vocals
Ule W. Ritgen – bass
Helge Engelke – guitars
Andy Malecek – guitars
C. C. Behrens – drums

Philip Candas – percussion, additional drum inspiration 

Producer – Fair Warning 

ゴー!
フェア・ウォーニング
キングレコード
2016-08-31

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