メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。

デニス・ストラットン

A Cry for the New World / Praying Mantis (1993)

0035A Cry for the New World

NWOBHM時代から叙情的サウンドで異彩を放っていたプレイング・マンティスの通算3作目、復活後2作目のスタジオ・オリジナル・アルバム。筆者は、このアルバムからメロハーにのめり込みました。メロハーではいまだにこれを超えるアルバムにめぐり合っていません。とにかく好き過ぎて冷静ではいられない。プレイング・マンティスとしての大傑作であると同時に、メロディアス・ハードロックという分野の中でも名盤中の名盤だと思っています。「メロハーとはメロディなり」。不肖筆者の格言です。失礼。

前作Predator in Disguiseでの失敗をバンド自身も感じたのか、デニス・ストラットン主導のアメリカン・ハードもどきの曲が一掃され、クリス・トロイとティノ・トロイのメロディ、つまりあの伝説のTime Tells No Liesと同じプレイング・マンティス本来のメロディの輝きが甦っています。そしてこのアルバムでは、初めてコリン・ピールという専任ボーカリストがレコーディングに参加しているのが大きな変化でしょう。この人は特別に上手いボーカリストではありませんが、声に透明感・清潔感があり、歌唱にもおかしなクセがないため、マンティスの楽曲にはうってつけです。

1曲目の"Rise Up Again"からいきなり名曲。疾走するメロディに急ブレーキがかかって、サビの"One day, I will rise up again~"というコーラスとともに青空に向かって飛び出す感じが最高です!ブルース・ビスランドのドラムがイマイチな気はしますが、そんなのは小さな こと。歌詞もサウンドもポジティブで、どんなときでも気持ちを明るくしてくれます。マンティスの曲の中で筆者が最も好きな曲です。

2曲目はタイトル曲"A Cry For The New World"、社会的なメッセージが込められた曲ですね。メロディは哀しみを湛えていますが、その底流に希望を感じる。これも名曲です。

3曲目"A Moment In Life"、憂いを帯びたヒラウタと、対照的にポジティブなサビ。コリン・ピールの切ない歌唱がメロディの美しさを際立たせます。今までのようにトロイ兄弟やデニス・ストラットンが歌ったら、こうはいかなかったでしょう。うーん、名曲!

4 曲目"Letting Go"、印象的なツイン・リードによるオープニング、続くヒラウタもいいのですが、いやがうえにも高揚感を盛り上げるブリッジとサビのメロディが特に素晴らしい。トロイ兄弟はコーラスを組み立てるのがほんとに上手いです。ギターソロも極上。曲の中で浮かず、曲を活かすギター・アンサンブル。マンティスには曲芸的ソロはいらないのです。これまた名曲です。

5曲目"One Chance"、この曲も転調がありますが、これがまた上手い。ヘタなバンドは転調が多いと違和感を感じさせることもありますが、マンティスのメロディは流れるように自然です。またまた名曲。

6曲目"Dangerous"、曲を引っ張るギターのリード・メロディが堪りません。サビはメロハー的哀愁を通り越して、「歌謡曲」的ですらありますが、マンティスにかかると名曲と化してしまいます。

7 曲目"Fight To Be Free"、オープニングと中間での、天空に駆け上がっていくようなギター・メロディが素晴らしい!この曲もヒラウタとサビの対比が利いています。とにかくサビのメロディが美し過ぎます。どうしてこんなに魅力的なメロディが書けるんでしょう。間違いなく名曲。

8曲目"Open Your Heart"、哀愁系メロディアス・ハードロック最高峰の一曲。コリン・ピールのボーカルとティノ・トロイのギターが切なく絡み合う終盤は何度聴いても鳥肌が立ってしまいます。これが名曲でなくて何が名曲か。

9 曲目"Dream On"、冒頭のスペイシーなキーボードに続くティノ・トロイ得意のスパニッシュ風ギター、そして憂愁の歌メロが始まり、一気に曲の世界に導かれます。歌詞 はおそらくクリス・トロイが書いているのでしょうが、彼は物語を感じさせる詞を書く才能に長けていますね。詞の世界とメロディがピタリと一致して見事です。名曲決定!

10曲目"Journeyman"。アウトロのインスト曲"The Final Eclipse"と一体化しているので、実質この曲が最終曲。これもクリスの詞で、何十万光年も旅をして来た男が瀕死の地球に帰りつくというSF的テーマ。ドラマチックな歌メロとツイン・ギターが、これぞプレイング・マンティスと納得させてくれる締めくくりの曲です。もちろん名曲。

というわけで、初めてアルバム全曲について書いてしまいましたが、結論として全曲名曲でした!メロハー好きな方で、もしこのアルバムを聴いたことのない方がいらっしゃったら、それはとんでもなく不幸なことです。ぜひ一度聴いてみてください。

な お、"One Chance"にはバーニー・ショウがバッキング・ボーカルでクレジットされています。バーニー・ショウというとユーライア・ヒープでの活動が有名ですが、実は1981年にマンティスに参加していたという経歴があるんですね。また、マンティス解散後の83~84年にかけては、トロイ兄弟と一緒に元アイア ン・メイデンのクライヴ・バーが組んだストレイタスのボーカルも務めていました。そんな縁でこのアルバムに「友情出演」したのでしょう。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Rise Up Again (Jackson, Dangschat, Praying Mantis)
02. A Cry For The New World (Praying Mantis)
03. A Moment In Life (Troy, Troy, Peel)
04. Letting Go (Troy, Troy)
05. One Chance (Troy, Troy, Bisland)
06. Dangerous (Praying Mantis)
07. Fight To Be Free (Troy, Troy)
08. Open Your Heart (Praying Mantis)
09. Dream On (Jackson, Dangschat, Praying Mantis)
10. Journeyman (Troy, Troy, Peel)
11. The Final Eclipse (Troy, Fflounders)

■Personnel
Chris Troy - Bass, Backing Vocals
Dennis Stratton - Lead Guitar, Backing Vocals
Colin Peel - Lead & Backing Vocals
Tino Troy - Lead Guitar, Acoustic Guitar, Keyboards, Backing Vocals
Bruce Bisland - Drums, Backing Vocals

Gary Flounders - Keyboards, Brass Arrangements
Valerie Lee Cowell - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Derek Jeffrey - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Jeff Brown - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Peter Bullick - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Bernie Shaw - Backing Vocals on "One Chance"

Producer - Tino Troy & Gary Flounders
Co-Producer - Praying Mantis
Executive Producer - Neal Kay

Predator in Disguise / Praying Mantis (1991)

0014Predator in Disguise

1990年のNWOBHM10周年記念来日公演を契機に、ティノ・トロイ、クリス・トロイ、デニス・ストラットン(元アイアン・メイデン)、ブルース・ビスランド(元ウェポン)で再結成されたプレイング・マンティスの10年ぶりの2ndアルバム。カヴァー・アートは、あの1stと同じくロドニー・マシューズ (Rodney Matthews)の手によるもの。1曲目の"Can’t See The Angels"の、美しいギターハーモニー、哀愁を帯びたメロディ、ドラマティックなコーラス、そして相変わらずのっぺりしたクリス・トロイのボーカル、まぎれもない「プレイング・マンティスの音」が甦ったことにに大きな喜びを感じます。しかし、2曲目"She’s Hot"で「???・・・」と絶句。下品過ぎます。2曲目にくだらない曲をもってきてガクっとさせるところまで1stと同じです。"She’s Hot"をはじめデニス・ストラットンの書いた曲が5曲、トロイ兄弟の書いた曲が6曲、それぞれの個性が溶け合いもせずにただ配置されています。ライオンハート以来のストラットンの中途半端なアメリカン・ロック志向もいただけませんが、トロイ兄弟の曲も、ところどころに「らしさ」は感じられるものの往年の輝きを取り戻しているとは言い難い。まともに歌えるリードボーカルも相変わらず不在。伝説とまで言われた前作Time Tells No Lies 、最高傑作との呼び声も高い次作A Cry for the New World 、間に挟まれたこのアルバムとの落差はあまりにも大きいものがあります。

評価 ★★☆☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Can’t See The Angels (T.Troy, C.Troy)
02. She’s Hot (Stratton, Hart, O’shaughnessy)
03. Can’t Wait Forever (T.Troy)
04. This Time Girl (Stratton, Pearce, Hart)
05. Time Slipping Away (C.Troy, T.Troy, Bisland)
06. Listen To What Your Heart Says (Stratton, Thomas, White, Hart)
07. Still Want You (Stratton, Hart, O’shaughnessy)
08. The Horn (C.Troy, T.Troy)
09. Battle Royal (C.Troy, T.Troy)
10. Only You(Stratton, Hart, O’shaughnessy)
11. Borderline (C.Troy, T.Troy)

■Personnel
Chris Troy - Lead Vocals on 01, 03, 05, 09, 11, Bass
Dennis Stratton - Lead Vocals on 02, 04, 06, 07, 10, Guitars
Tino Troy - Guitar, Vocals, piano
Bruce Bisland - Drums, Vocals

Producer - Tino Troy & Dennis Stratton
Executive Producer - Masa Itoh, Tom Sassa

Live at Last / Praying Mantis & Paul Di’Anno and Denis Stratton (1990)

0007Live at Last

NWOBHM10周年にあたって伊藤政則氏などが企画し、プレイング・マンティスのティノ・トロイとクリス・トロイ、元アイアン・メイデンノのポール・ディアノとデニス・ストラットン、そして元ウェポンのブルース・ビスランドというラインナップで実現した日本でのコンサートのライブ。1990年4月18日中野サンプラザでの録音です。プレイング・マンティスのレパートリーから6曲、アイアン・メイデンのレパートリーから6曲、そしてデニス・ストラットンがメイデン脱退後に結成したライオンハートの曲が2曲収録されています。マンティスとメイデンは作風は対照的ですが、NWOBHMの立役者となったDJニール・ケイのバックアップで一緒にツアーをしたり、メンバー間の交流もあったようで、NWOBHM初期を代表するバンドだったと思います。そういう意味で、当時を知るファンにとってこのライブは感慨深いのは間違いないのですが、残念ながらその内容は絶賛できる水準ではありません。マンティス組もメイデン組も、元々抜きん出た演奏力があったわけではないので、演奏自体はまあ許容範囲内ですが、ポール・ディアノも含めて全員の歌唱があまりに情けない。特にディアノが歌うマンティスの曲はひどすぎます。高音部が全然歌えていないし、変なビブラートが気持ち悪くて、聴くのが苦痛になります。蛇足ですが、ライオンハートの曲はまったく面白味がなく論外です。

とは言うものの、このライブがきっかけとなって、ディアノ以外の4人でプレイング・マンティスが再結成されたのは事実です。今から考えれば、このライブがなかったとしたらトロイ兄弟は歴史に埋もれてしまっていたかも知れず、マンティスの音楽を愛する者にとっては実にありがたい出来事だったと思います。

評価 ★☆☆☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作

■Tracks
01. Panic In The Streets (S. Vermeulen, S. Carroll, T. Troy)
02. Dangerous Game (D. Stratton, R. Newton, S. Mann)
03. Children Of The Earth (C. Troy, T. Troy)
04. Lovers To The Grave (C. Troy, T. Troy)
05. Flirting With Suicide (C. Troy, D. Potts, S. Carroll, T. Troy)
06. Hot Tonight (D. Stratton, K. Stewart, R. Newton, S. Mann)
07. Running For Tomorrow (C. Troy, D. Potts, S. Carroll, T. Troy)
08. Wrathchild (S. Harris)
09. Murders In The Rue Morgue (S. Harris)
10. Remember Tomorrow (S. Harris, P. Di’anno)
11. Phantom Of The Opera (S. Harris)
12. Iron Maiden (S. Harris)
13. Cheated (S. Carroll, T. Troy)
14. Running Free (S. Harris, P. Di’anno)

■Personnel
Tino Troy - Guitar, Vocals on 1,4,5
Chris Troy - Bass, Vocals on 3
Dennis Stratton - Guitar, Vocals on 2
Bruce Bisland - Drums
Paul Di’anno - Lead Vocals on 6-14

Producer - Dennis Stratton, Tino Troy
Executive Producer - Masa Itoh, Tsuneyoshi Kamijo, Tom Sassa

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