メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

ディジ・ディジタル

Takin' It to the Streets / FM (1991)

0078Takin' It to the Streets
イギリスのハードロック・バンドFMの3rdアルバム。前作がレーベル側の思惑ほどには売れなかったためかメジャー契約を切られ、マイナー・レーベルからのリリースとなっています。前二作のハードAORとも言うべきサウンドから一転して、かなりブルージーでソウルフルなハードロックとなりました。この路線変更に関しては、1stと2ndのキャッチーな曲調はレーベル側から要求されたもので、3rdからは本来自分たちがやりたかった音を出せるようになったから、というように言われています。しかし、マーヴ・ゴールズワーシーとピート・ジャップがSamson解散~FM結成にあたって「コマーシャル色の強いロック」を目指したという事情を考え合わせると、初期FMのサウンドが一方的にメジャー・レーベルから強要されたものとも考えにくいのではないでしょうか。もっとも、バンドの目指した「コマーシャル色」とレーベル側の考えるそれが一致していたのかどうかは分かりませんが。いずれにしても、メジャー・レーベルを離れ、リード・ギターもクリス・オーヴァーランドから最初期に在籍したアンディ・バーネットにチェンジし、セルフ・プロデュースによるストレートなサウンドで心機一転を図った、まさにバンドにとって節目のアルバムとなっています。この手のアーシーで骨太なサウンドだと、1stと2ndで見られた「キラキラ・シンセ」による80年代的装飾は不要となり、ディジ・ディジタルはオルガンを白玉で流すことくらいしか出番がなくなりました。そのせいかどうか、彼はこのアルバムを最後にバンドを脱退することになります。

1曲目の"I'm Ready"からAC/DCを思わせるヘヴィでブルージーなロックン・ロール。新生FMの志向性が明確に示されています。続く2曲目はなんとホーン・セクション入りで、ソウルの名曲「悲しいうわさ」("I Heard It Through the Grapevine")をファンキーかつハードにブチかましてくれます。言わずと知れたグラディス・ナイト&ザ・ピップス(1967)、マーヴィン・ゲイ(1968)の大ヒット・ナンバー、このカッコよすぎるカヴァー曲が本作のハイライトだと思います。それにしても、スティーヴ・オーヴァーランドの歌の上手さには脱帽です。水を得た魚のようにコブシをぐるんぐるん回わしまくりたおしています。スティーヴ・オーヴァーランドは元々ポール・ロジャース系統のボーカリストなので、こういうサウンドがしっくり来るのは当然としても、リズム隊も出戻りギタリストもメタル畑でキャリアを積んできたにも関わらず、昔っからこんな音を演っていたかのような手馴れた演奏振りなのが驚き。曲作りに関しても、前二作より更にリズム隊の二人の重みが増し、マーヴ・ゴールズワーシーに至ってはスティーヴ・オーヴァーランドより関与した曲の数が多くなっています。このアルバム収録曲で比較的前作までの雰囲気を残している2曲、#8"Crack Alley"と#11"The Thrill of It All"を彼単独で書いているというのも興味深いです。

さて、筆者としては前二作のようなメロハーはもちろん好き、本作もまた大好きということで、路線変更そのものに否定的ではありませんが、ポップなメロディを渋く歌うという点にスティーヴ・オーヴァーランドとFMならではの魅力があったと思っているので、若干の寂しさと言うか物足りなさを感じたのも確かです。なお、本作にはゲストとしてクレイグ・ジョイナーというギタリストが参加しています。当時FMと同じMusic for Nationsレーベルに所属していたRomeo's Daughterのメンバーで、このバンドのアルバムDelectable (1993)にはマーヴ・ゴールズワーシーがゲスト参加しているようですが、筆者は未聴ですので詳しいことは分かりません。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作 
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. I'm Ready (S. Overland)
02. I Heard It Through the Grapevine (N. Whitfield/B. Strong)
03. Only the Strong Survive (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland/A. Barnett)
04. Just Can't Leave Her Alone (M. Goldsworthy)
05. She's No Angel (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland/D. Digital)
06. Dangerous Ground (M. Goldsworthy/P. Jupp)
07. Bad Blood (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland)
08. Crack Alley (M. Goldsworthy)
09. If It Feels Good (Do It) (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland)
10. The Girl's Gone Bad (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland/A. Barnett)
11. The Thrill of It All (M. Goldsworthy)
12. Hot Love (M. Goldsworthy/P. Jupp/S. Overland) [bouns]
13. Fuel to the Fire (S. Overland) [bouns]

■Personnel
Steve Overland - Lead vocals, guitar, acoustic guitar
Merv Goldsworthy - Bass, vocals
Pete Jupp - Drums, vocals
Didge Digital - Keyboards
Andy Barnett - Lead guitar, slide guitar, vocals

Backing vocals - Steve Overland, Andy Barnett, Pete Jupp, Leigh Matty, Craig Joiner, Sonia Jones
Guitar Solos - Andy Barnett, Steve Overland, Craig Joiner

The 'Raging' Horns - Martin Shaw, Dennis Rollins, 'Baps' McMillan, Kenny Wellington
Horn Arrangement - Augustus Gowalski

Producer - FM 

Tough It Out / FM (1989)

0053Tough It Out

イギリスのメロディアスハード・バンドFMの1989年リリースの2作目。1stアルバムIndiscreet の延長線上のサウンドで、いかにも80年代らしい都会的なメロハー/AORに仕上がっています。プロデューサーには、ホール&オーツやドッケンなど数多くのアルバム制作で実績のあるニール・カーノン(Neil Kernon)を起用。また、数々のヒット曲を生み出してきたデスモンド・チャイルド(Desmond Child)を曲作りに関与させるなど、レーベルのやる気(売る気)満々な様子が窺えます。その甲斐あって、1st以上に充実した楽曲と演奏は、何度聴いても飽きるということがありません。スティーヴ・オーヴァーランドのソウルフルな歌唱はますます旨味を増し、マーヴ・ゴールズワーシー&ピート・ジャップのコンビは相変わらず心地よいグルーヴを生み出しています。クリス・オーヴァーランドの歌心を感じさせるギターも健在です。ディジ・ディジタルのキーボードも、出しゃばり過ぎず曲に彩りを添えていて好感が持てます。初期FMの中では文句なく最高の出来ではないでしょうか。バッキング・ボーカルに、ストレンジウェイズ、ジャイアントなどで知られるテリー・ブロックと、女性メロハー・ボーカリストの第一人者ロビン・ベックが参加しているのもうれしいです。

#4"Someday (You'll Come Running)"は、ジュディス・ランドールとロビン・ ランドール (Judithe & Robin Randall)という珍しい母娘ライターコンビと、"Island Nights"で有名なAOR系シンガー・ソングライター、トニー・シュート(Tony Sciuto)の作品。アメリカのメロハー・バンドAirkraftのアルバムIn the Red (1991)や、元King Kobra、Signal、現Unruly Childのマーク・フーリー(Mark Free)のソロアルバムLong Way From Love (1993)でも取り上げられています(このアルバムは全曲 ランドール 母娘が書いています)。さらに、ロビン・ ランドール が、自身のグループVenus & MarsのGrand Trine (1994)でセルフカバーしています。それから、#5"Everytime I Think of You"は、Mr. Bigのエリック・マーティン(Eric Martin)のソロ・アルバムI'm Only Fooling Myself (1987)に収録されていた曲。同一曲を複数のアーティストのバージョンで聴き比べると、アレンジや歌唱の違いにそれぞれの個性が感じられて楽しいものです。

なお、2012年にイギリスの再発レーベルRock Candyより、ボーナス・トラック5曲が追加されたリマスター盤も発売されています。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Tough It Out (S. Overland, C. Overland, J. Harms)
02. Don't Stop (M. Goldsworthy, P. Jupp, D. Digital)
03. Bad Luck (S. Overland, C. Overland, D. Child)
04. Someday (You'll Come Running) (J. Randall, R. Randall, T. Sciuto)
05. Everytime I Think of You (S. Mullen, J. Cesario, G. Jones)
06. Burning My Heart Down (S. Overland, C. Overland, D. Child)
07. The Dream That Died (S. Overland, C. Overland)
08. Obsession (M. Goldsworthy, P. Jupp, D. Digital)
09. Can You Hear Me Calling? (S. Overland, C. Overland)
10. Does It Feel Like Love (S. Overland, C. Overland)
11. Feels So Good (S. Overland, C. Overland)

■Personnel
Steve Overland - Lead & backing vocals, guitar
Merv Goldsworthy - Bass, backing vocals
Pete Jupp - Drums, backing vocals
Chris Overland - Lead guitar
Didge Digital - Keyboards

Terry Brock - Backing vocals
Robin Beck - Backing vocals

Producer - Neil Kernon


Indiscreet / FM (1986)

0048Indiscreet

イギリスのメロディアス・ハードロック・バンド、FMの1986年リリースの1stアルバム。後年、FMはよりブルージーな方向にシフトしますが、デビュー当時は、多分にアメリカ市場を意識したポップでソウルフルなハードAORともいうべきサウンドを志向しています。結局は路線変更してからのほうがむしろ売れたという皮肉な結果となるわけですが。動画を見ても、音もさることながら、髪型といい服装といい、気恥ずかしくなるほど80年代モロ出しです。まあ、当時流行のありきたりなサウンドと言ってしまえばそれまでですが、スティーヴ・オーヴァーランドの歌の異常な上手さ、リズム隊のセンスの良さ、メロディ・ラインの秀逸さという3つの点で、他の似たようなバンドを遥かに凌駕しています。サウンドの変遷とメンバーチェンジはあっても、スティーヴ・オーヴァーランドとリズム隊のマーヴ・ゴールズワーシー&ピート・ジャップの3人は、不動のラインナップで現在まで続いているのも頷けます。このアルバムもコマーシャルに過ぎるかなという印象はありますが、四半世紀以上過ぎた今でも色褪せず、十分に楽しめる優れた作品であることは間違いありません。

FMの結成の経緯を整理しておくと、元々クリス・オーヴァーランドと弟のスティーヴ・オーヴァーランド、そしてピート・ジャップの3人はWildlifeというバンドのメンバーでした。このWildlifeはChrysalis Recordsと契約し、1980年にアルバムとシングルをリリースしたようですが、泣かず飛ばずでいったん解散します。そしてFree/Bad Companyのドラマーだったサイモン・カークを加えてバンドは組み直され、新生WildlifeはLed ZeppelinのSwansongから1983年にアルバムを1枚リリースしますが結局解散。一方、ピート・ジャップはSamson(Iron Maidenのブルース・ディッキンソンやクライヴ・バーが在籍していたバンド)のメンバーとして活動していましたが、このSamsonも1984年にいったん解散。そして、オーヴァーランド兄弟とピート・ジャップが再合流してFMの結成へと至ります。この新バンド結成にはSamsonのマネージャー、デイヴ・キングが関与しているようで、Samsonのベーシストだったマーヴ・ゴールズワーシーがピート・ジャップとともに参加していること、デイヴ・キングが本アルバムのプロデュースを担当していることからも、その辺りの事情が窺えます。もう一人のメンバー、ディジ・ディジタルことフィル・マンチェスターのキャリアは不明です。

なお、本アルバムの#1"That Girl"の共作者の一人としてクレジットされているアンディ・バーネットはFMの最初期のメンバーで、クリス・オーヴァーランドが脱退した後、ギタリストとしてバンドに再加入することになります。このアンディ・バーネットは、Iron Maidenのエイドリアン・スミスやデイヴ・マーレイが1970年代に在籍したUrchinというバンドにいたことがあり、80年代に入ってからはThe Entire Population of HackneyプロジェクトでIron Maidenのメンバーと共演したり、ASAPでもエイドリアン・スミスと一緒にプレイするなど、何かとIron Maiden人脈に縁のある人です。そんな繋がりからか、"That Girl"はIron Maidenにカバーされています。これがまた、ボーカルがブルース・ディッキンソンだし、モロに「ヘビメタ」で別の曲のようにも聴こえますが、意外にいい感じ。当時のイメージで言えば、軟派なFMの曲を、硬派のIron Maidenがカバーするというのもなんだか面白いです。また、FM、Samson、Iron Maidenという3つのバンドの関係者が様々に絡み合ってきた歴史には興味深いものがあります。

なお、2012年にイギリスの再発レーベルRock Candyより、ボーナス・トラックが追加された2枚組リマスター盤も発売されています。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. That Girl (M. Goldsworthy, P. Jupp, A. Barnett)
02. Other Side of Midnight (M. Goldsworthy, P. Jupp)
03. Love Lies Dying (M. Goldsworthy, S. Overland, P. Jupp, C. Overland, D. Digital)
04. I Belong to the Night (S. Overland, C. Overland)
05. American Girls (S. Overland, C. Overland)
06. Hot Wired (M. Goldsworthy)
07. Face to Face (S. Overland, C. Overland, P. Jupp)
08. Frozen Heart (M. Goldsworthy, S. Overland, P. Jupp, C. Overland, D. Digital)
09. Heart of the Matter (S. Overland, C. Overland)

■Personnel
Steve Overland - Lead vocals, guitar
Merv Goldsworthy - Bass, backing vocals
Pete Jupp - Drums, backing vocals
Chris Overland - Lead guitar
Didge Digital - Keyboards

Producer - FM, Dave King



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