ダン・ハフ(Gt, Vo)を中心に腕利きセッション・ミュージシャンが結集した、アメリカのハードロック・バンド、ジャイアントの3rdアルバム。前作から9年も経過しており、その間バンドは活動停止状態で、それぞれスタジオ・ワークなどに専念していたようです。とりわけダン・ハフはプレイヤーとしての仕事の他、メガデスからフェイス・ヒルに至るまで幅広いジャンルのプロデュース業でも活躍しています。本作はダンの弟のデヴィッド・タフ(Ds)の呼びかけで制作されたようで、彼がエグゼクティヴ・プロデューサーとしてクレジットされています。なお、アラン・パスクァ(Key)は2ndアルバムのリリース後に脱退しており、本作の時点でバンドはハフ兄弟とマイク・ブリグナーデロ(ba)のトリオとなっています。リリースはイタリアのメロディック・ロック専門レーベルFrontiers Recordsから。信じ難いことに、メロディック・ロックに冷淡なアメリカ本国では本作はリリースされておらず、ヨーロッパ盤と日本盤しかありません。
アルバムはダン・ハフの弾くギターの掛け合いで幕を開けます。エレクトリック・ギターってのは、ほんとにいい音がするなぁと実感させてくれる素晴らしいオープニング。一発でジャイアントの世界に引きずり込まれます。1stも2ndも楽曲、演奏ともにまさに鉄壁でしたが、9年ものブランクにも関わらず、本作も同様にパーフェクト。どの曲もメロディアスでドラマチック、そしてアメリカのバンドらしい明るさが印象に残ります。共作者には、おなじみのヴァン・スティーヴンソン、マーク・スピロなどが名を連ねています。マーク・スピロはバック・ボーカルでも参加していますが、そもそも彼がジャイアントのメイン・ボーカリストになる予定だったらしく、メンバーとの関係の深さが伺えます。なお、#10"Bad Case of Loving You (Doctor, Doctor)"はアメリカのシンガー・ソングライター、ジョン・ムーン・マーティンによって書かれ、1979年にロバート・パーマーがカバーしてヒットさせた曲です。
日本盤にはボーナス・トラックが4曲収録されています。どうでもいいボーナス・トラックというのも多い中、本作のそれは貴重なライブ音源。さすがにダン・ハフのボーカルがちょっとキツそうですが、ライブの生々しさがストレートに伝わってきます。特にジェフ・ベック(オリジナルはスティーヴィー・ワンダー)の"Cause We Ended as Lovers"(「哀しみの恋人たち」)は、ベックのプレイとは全くニュアンスは異なりますがダン・ハフならではの名演です。このライブ音源は、後にLive and Acoustic - Official Bootleg というタイトルでリリースされたライブ・アルバムに収録されているのものの、これが中々入手しずらい状況なので、買うならせめて4曲だけでも聴ける日本盤でしょう。
評価 ★★★★★
★★★★★ 傑作
★★★★☆ 秀作
★★★☆☆ 佳作
★★☆☆☆ 凡作
★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。■Tracks
01. Combustion (Dann Huff)
02. You Will Be Mine (Dann Huff, David Lyndon Huff, Mike Brignardello)
03. Over You (Dann Huff, Mike Brignardello)
04. Don't Leave Me in Love (Dann Huff, Mark Spiro)
05. Love Can't Help You Now (Dann Huff, Mark Spiro)
06. The Sky Is the Limit (Dann Huff, Van Stephenson)
07. It's Not the End of the World (Dann Huff, Van Stephenson, Bob Farrell)
08. Oh Yeah (Dann Huff, David Lyndon Huff, Mike Brignardello)
09. Can't Let Go (Dann Huff, David Lyndon Huff)
10. Bad Case of Loving You (Doctor, Doctor) (John Moon Martin)
[Japanese bonus track]
[Japanese bonus track]
11. I'm a Believer (live) (Dann Huff, David Lyndon Huff, Alan Pasqua, Mark Spiro, Phil Naish)
12. Chained (live) (Dann Huff, Alan Pasqua, Michael Brignardello)
13. Big Pitch (live) (Dann Huff, Terry Thomas, Alan Pasqua)
14. Cause We Ended as Lovers (live) (Stevie Wonder)
■Personnel
Dann Huff - all guitars, keyboards, lead & backgound vocals
David Lyndon Huff - drums, percussion, backgound vocals
Mike Brignardello – bass, backgound vocals
Mark Spiro – extra backgound vocals
Robert White Johnson – extra backgound vocals
Terry Thomas – extra backgound vocals
Larry Hall - extra keyboards
Producer - Dann Huff, David Lyndon Huff, Mike Brignardello
(Tracks 2, 3, 4 produced by Terry Thomas, Dann Huff, David Lyndon Huff, Mike Brignardello)
Executive-Producer – David Lyndon Huff