メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

ダレン・ウォートン

Belief / Dare (2001)

0410Belief









元Thin Lizzyのダレン・ウォートン率いる叙情派ブリティッシュ・メロハー・バンドDareの4thアルバム。前作Calm Before the Stormで確立された音楽性を踏まえ、メロディック・ロックにケルト音楽のエッセンスを入れ込んだ一種のヒーリング・ミュージックを今回も聴かせてくれます。荒野や森林や湖といった景色が目の前に浮かんでくるような、冷涼で湿った空気を感じさせるような音像は相変わらず素晴らしく、このバンドの唯一無二の個性と言えるところまで来ました。このアルバムもCalm Before the Stormに勝るとも劣らない傑作だと思います。前作との比較で言えば、更にケルト色が強くなり、アコースティカルになっています。また、前作で印象的だった雰囲気抜群のギター・ソロは本作でも聴くことができるものの、その出番が少なくなっているのは若干残念です。クレジットを見ると3人にリード・ギターの表記がありますが、おそらく前作同様アンドリュー・ムーアがメインで弾いていると思われます。そもそも、クレジットにベースの担当が記されていなかったり、前作でもドラムが2人いたりして、バンドは実質ダレン・ウォートンのソロ・プロジェクトで、メンバーの扱いがバック・ミュージシャン的に軽いのかもしれません。

さて、冒頭で「ケルト音楽」と書きましたが、白状すると実は「ケルト音楽」のことは詳しく知りません。アイリッシュ・トラッド(民謡、民俗音楽、伝統音楽)のメロディと共通点があるので、知ったかぶりをして「ケルト音楽」と言っているだけです。TenのSpellboundのレビューでも少し触れましたが、様々な民族の侵入と征服が繰り返されたブリテン島とアイルランド島の歴史・文化について、自分が知っていることはあまりにも少ないと言わざるをえません。残存するケルト文化圏とされるアイルランド、スコットランド、ウェールズ、コーンウォール、マン島、フランスのブルターニュ(ブリタニア)、スペインのガリシアなど、それぞれの音楽がどう同じでどう違うのか。ケルト系のトラッド音楽とアングロ・サクソン系のトラッド音楽がどう違うのか。全然分かりません。そもそもダレン・ウォートンはケルトにルーツがあるのでしょうか?まあ日本でも、自分のルーツやアイデンティティに関係なく琉球音楽をやる人もいたりするし。あー、よく分からない。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Silent Thunder
02. Dreams on Fire
03. White Horses (Lions Heart)
04. Belief
05. Run Wild Run Free
06. We Were Friends
07. Falling
08. Where Will You Run To
09. Take Me Away
10. Promised Land
11. Phoenix
All words & music by Darren Wharton
except #7 words by Darren Wharton, music by Darren Wharton & Richard Dews
#11 words & music by Darren Wharton & Richard Dews

■Personnel
Darren Wharton - Lead Vocals, Keyboards
Richie Dews - Acoustic Guitar, Lead Guitar
Andrew Moore - Electric Guitar, Lead Guitar
Julien Gardner - Drums, Percussion

Steve Ricard - Lead Guitar
Tricia Hutton - Violin
Sue Quin - Vocals
Tommy Martin - Whistle, Pipe

Producer - Darren Wharton

Belief
Dare
Wea UK Generic
2001-09-06

 

Calm Before the Storm / Dare (1998)

0308Calm Before The Storm









元Thin Lizzyのキーボード奏者ダレン・ウォートンが率いる叙情派メロハーバンドDare、その7年ぶりの復活作となった3rdアルバムです。以前の作品は大手のA&Mから出ていましたが、今回はドイツのメロハー/AORレーベルMTMからのリリースです。ちょっと変な方向に行きかけた2ndアルバムと打って変わって、本作ではバンドの原点である1stの路線に回帰し更に徹底させて、まごうことなき傑作に仕上げていると感じました。Calm Before the Storm=「嵐の前の静けさ」というタイトル通り、緊張感を孕んだ静寂といったものを感じさせる楽曲と演奏が実に見事。冷涼でウエットな空気感、仄かに漂うケルト・ミュージックの香り、ちょっと映画音楽のような曲展開、まさにジャケットのイメージ通りの音です。これこれ、これを待っていたんだよ。全体を通してスロー~ミドル・テンポで曲調も似通っており、普通ならもっとバリエーションが欲しいと感じるところですが、本作に関してはこれが正解だと思います。いや~素晴らしい。名盤決定です!

バンドはダレン・ウォートン以外は全て新メンバーで、アンドリュー・ムーア(G)、ジュリアン・ガードナー(Ds)、マーティン・ワイルディング(B)がメンバーとしてクレジットされています。新ギタリストのアンドリュー・ムーア、この人がまた素晴らしい。透明感があって柔らかなトーンがとても魅力的。そして、むせび泣くようなフレーズがダレン・ウォートンのウィスパー・ボイスに絡みつき、聴き手の涙腺を刺激するのです。このバンドの音世界にピッタリ合うギタリストをよく見つけてきましたね~。他にadditional musicianとしてボーカルにスー・クイン、アコースティック・ギターとバック・ボーカルにリチャード・デュース、ドラムスにケヴィン・ホワイトヘッドがクレジットされています。

#9"Still in Love With You"はThin Lizzyの1974年のアルバムNightlifeに収録曲されていた名曲です。もちろん当時のThin Lizzyにダレン・ウォートンは在籍していませんが、古巣のThin Lizzyとフィル・リノットへの敬意と愛情を込めたカバーでしょう。オリジナルはフィル・リノットとフランキー・ミラーのデュエットで、リード・ギターはゲスト扱いのゲイリー・ムーア。思えばフィル・リノットとゲイリー・ムーアは既に鬼籍に入り、フランキー・ミラーは長きに渡る闘病生活を続けています。時の流れを感じてしまいますね。。。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Walk on Water (Lyrics & Music: D. Wharton)
02. Someday (Lyrics & Music: D. Wharton/R. Dews)
03. Calm Before the Storm (Lyrics & Music: D. Wharton)
04. Ashes (Lyrics: D. Wharton  Music: D. Wharton/R. Dews)
05. Crown of Thorns (Lyrics: D. Wharton  Music: D. Wharton/R. Dews)
06. Silence of Your Head (Lyrics & Music: D. Wharton)
07. Rising Sun (Lyrics & Music: D. Wharton)
08. Rescue Me (Lyrics: D. Wharton  Music: D. Wharton/R. Dews)
09. Still in Love With You (Lyrics & Music: P. Lynott)
10. Deliverance (Lyrics & Music: D. Wharton)
11. Run to Me [Bonnus Track] (Lyrics & Music: D. Wharton)

■Personnel
Darren Wharton - Vocals, Keyboards
Andrew Moore - Guitars
Julien Gardner - Drums
Martin Wilding - Bass

Sue Quinn - Vocals
Richie Dews - Acoustic Guitar, Backing Vocals
Kevin Whitehead - Drums

Producer - Darren Wharton

Calm Before the Storm
Dare
Mtm Music & Publish
2006-11-27

 

Blood From Stone / Dare (1991)

0623Blood From Stone









イギリスのメロハー・バンドDare(デアー)の1991年にリリースされた2ndアルバムです。Dareはハードロックと呼ぶにはいささか静かでふんわりしたサウンドが特徴なわけですが、どういうわけかこのアルバムだけはギンギンのハードロックをやってます。それが災いしたのかどうか、本作リリース後DareはA&Mから切られて解散(活動休止?)となり、数年後に独立系レーベルで復活作を発表と、多くのHR/HM系バンドと同じ道を歩むことになります。

さてこのアルバムは、心に響くケルト風メロディと劇的な曲展開が印象的な#1"Wings of Fire"、#2"We Don't Need A Reason"で、まずガツンとやられます。続く、哀愁メロハーと言うには力強すぎる#3"Surrender"では、ヴィニー・バーンズのギターもマイケル・シェンカーばりに歌いまくり、泣きまくりです。ここまでハードなサウンドだと、ダレン・ウォートンのか細いボーカルではちょっとツライものがありますが、とにかく出だしの3曲は上出来です。ところが、ところが。。。その後はずっとヴァン・ヘイレン+ボン・ジョビ状態になります。アメリカン・ロック風のメロディと乾いたサウンドだったり、妙に明るく燥いだ感じだったりしてがっかりです。Dareにこういう音は求めていないんだよなぁ。なんか無理してる感じがつきまとってるし。頭3曲と残り7曲の差が有り過ぎです。

バンドのメンバーは、リーダーのダレン・ウォートン(Vo)、ヴィニー・バーンズ(Gt)、ブライアン・コックス(Key)の3人は1stと変わらず。ベースはナイジェル・クラッターバックに、ドラムはグレッグ・モーガンにチェンジしています。また、Additional musicianとして、ドラムにジェイムス・コタック、ベースにジェフ・ピルソン、バック・ボーカルにトミー・ファンダーバークとジョン・レヴェックがクレジットされています。プロデューサーはキース・オルセン、エンジニアはシャイ・ベイビー。ダレン・ウォートンは1991年Wild Horsesというバンドで、コタック、ピルソン、レヴェックと共にアルバムを1枚出しており、こちらもプロデューサーはオルセン、エンジニアはシャイ・ベイビー。まんま横すべりのメンツです。

蛇足ながら、このブログ記事を書くに当たって初めてyoutubeにある当時のビデオを見たのですが、ナリもフリもまるでヘア・メタル・バンドのようではありませんか!Dareってこうだったの?気恥ずかしいことこの上ない。今はウォートン氏をはじめ皆さんデブっちょのオッサンと化しているので、この落差に軽く眩暈がします。。。
 
評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Wings of Fire (Darren Wharton)
02. We Don't Need a Reason (Darren Wharton)
03. Surrender (Darren Wharton)
04. Chains (Darren Wharton/Vinny Burns)
05. Lies (Darren Wharton/Vinny Burns)
06. Live to Fight Another Day (Darren Wharton/Vinny Burns)
07. Cry Wolf (Darren Wharton/Vinny Burns)
08. Break Out (Darren Wharton/Vinny Burns)
09. Wild Heart (Darren Wharton/Vinny Burns)
10. Real Love (Darren Wharton)

■Personnel
Darren Wharton - Vocals
Vinny Burns - Guitars
Brian Cox - Keyboards
Nigel Clutterbuck - Bass
Greg Morgan - Drums

James Kottak - Drums
Jeff Pilson - Bass
Tommy Funderburk
John Levesque

Producer - Keith Olsen

Blood From Stone
Dare
Universal
2005-03-21


Out of the Silence / Dare (1988)

0228Out of the Silence









末期Thin Lizzyでキーボードを弾いていたダレン・ウォートンが率いるDareの1stアルバムです。メンバーは、後にTenのギタリストとなるヴィニー・バーンズ、同じくTenのThe Name of the Rose に参加するベースのシェリー(マーティン・シェルトン)とキーボードのブライアン・コックス、それから前後の経歴は不明ですがドラムにジェイムス・ロス。プロデュースは、エンジニア、ミキサー、プロデューサーとして数多くのメジャー・アーティストを手がけたマイク・シプリーと、自身もミュージシャンでありジャズ系のプロデュースが多いラリー・クラインが担当しています。

本作で聴ける音楽は、ジャケットのイメージそのままの、いかにもイギリスのバンドらしいウェットで叙情的なもの。ヒースやムーアといったイギリス的な荒地、霧に包まれた森、あるいは小雨に濡れたレンガ造りの家並み、そんな情景が目に浮かぶようなサウンドです。同じメロハーでも、FireHouseやTykettoのようなカラっと乾いたアメリカン・ロックの対極にある音だと思います。モノトーンを思わせるサウンド、憂いを帯びたメロディ、ダレン・ウォートンのささやくような歌唱、それらが一体化してバンドの個性となっているのが見事。時折顔をのぞかせるケルティック・メロディも、やり過ぎない程度で実にいい塩梅です。Tenではやや過剰なまでに叫び泣きまくるヴィニー・バーンズのギターも、コンパクトかつ程よく抑制されたフレーズでこれまた好印象。全体に淡白でさらっとした楽曲が多い本作の中で、割と強烈な哀愁を放つ#8"Heartbreaker"が一番耳に残るかな。いずれにしても、血湧き肉躍るようなアルバムではありませんが、聴き飽きることの無い好盤であることは間違いありません。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Abandon (Lyrics : D. Wharton / Music : D. Wharton, V. Burns)
02. Into the Fire (Lyrics & Music : D. Wharton)
03. Nothing Is Stronger Than Love (Lyrics : D. Wharton / Music : D. Wharton, V. Burns)
04. Runaway (Lyrics & Music : D. Wharton)
05. Under the Sun (Lyrics & Music : D. Wharton)
06. The Raindance (Lyrics & Music : D. Wharton)
07. King of Spades (Lyrics & Music : D. Wharton)
08. Heartbreaker (Lyrics : D. Wharton / Music : D. Wharton, V. Burns)
09. Return the Heart (Lyrics & Music : D. Wharton)
10. Don't Let It Go (Lyrics : D. Wharton / Music : D. Wharton, V. Burns)

■Personnel
Darren Wharton - Vocals, Keyboards
Vinny Burns - Guitars
Shelley - Bass
James Ross - Drums
Brian Cox - Keyboards

Producer – Mike Shipley, Larry Klein

Out of Silence
Dare
Universal Import
2004-08-09


 

Please Don't Leave Me / John Sykes (1982/1992)

142Please Don't Leave Me









ジョン・サイクスがタイガース・オブ・パンタン脱退後に、シン・リジィーのフィル・リノットの協力を得て録音した1982年ソロ・シングル"Please Don't Leave Me"に、同曲のショート・バージョン、インスト・バージョン、さらにタイガース・オブ・パンタンのシングル曲やライブをオマケにつけて1992年にリリースされたアルバム。タイガース・オブ・パンタンの粗い演奏は、今となってはNWOBHMの勢いを伝える資料的価値しかありませんが、プリティ・メイズもカヴァーした珠玉の名曲"Please Don't Leave Me"1曲だけで手放せない1枚です。この曲のメロディの美しさ、フィル・リノットの哀しみを湛えたボーカル、ジョン・サイクスの情感溢れる泣きのギター、何度聴いても胸に迫るものがあります。シン・リジィーのブライアン・ダウニー(ds)とダレン・ウォートン(key)もレコーディングに参加しており、この後すぐにジョン・サイクスはシン・リジィーに加入するので、新生シン・リジィーの先駆け的な位置づけの1曲です。(星3つはアルバムとしての評価であって、"Please Don't Leave Me"そのものはもちろん星5つです)

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Please Don't Leave Me (Original Version) (J. Sykes/P. Lynott)
02. Don't Take Nothing (Tygers of Pan Tang)
03. Bad Times (Tygers of Pan Tang)
04. All or Nothing (Tygers of Pan Tang)
05. Don't Give a Damn (Tygers of Pan Tang)
06. Please Don't Leave Me (Short Version) (J. Sykes/P. Lynott)
07. Slave to Freedom (Live) (Tygers of Pan Tang)
08. Raised on Rock (Live) (Tygers of Pan Tang)
09. Paradise Drive (Tygers of Pan Tang)
10. Love Potion No.9 (Tygers of Pan Tang)
11. Please Don't Leave Me (Instrumental Version) (J. Sykes/P. Lynott)

■Personnel
John Sykes – guitars
Philip Lynott – vocals, bass guitar
Brian Downey – drums
Darren Wharton – keyboards 

プリーズ・ドント・リーヴ・ミー
フィル・ライノット
ユニバーサル ミュージック
2016-05-18

 
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