メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

ジョン・ノーラム

Above & Beyond / Midnight Sun (1998)

0117Above & Beyond
スウェーデンのメロディアス・ハードロック・バンド、ミッドナイト・サンの2ndアルバム。ラインナップは、ピート・サンドベリ(vo)、ヨナス・レインゴールド(ba)、クリス・パルム(gt)の3人は前作と同じですが、ドラムはアンダース・テオ・ティアンデルから、ヘンポ・ヒルデン(ex-Mandrake Root, John Norum, Don Dokken)に交代しています。アンダース・テオ・ティアンデルはスタジオ経営、プロデュース業のほうを本職に選んだようで、本作も彼のRoastinghouse Studioで録音、彼自身はエグゼクティヴ・プロデューサーとしてクレジットされています。

ネオクラ風の疾走曲を頭に持ってきてド肝を抜いてから、悲哀に満ちたミッドナイト・サンの世界になだれ込むというのは前作と同じ趣向ですが、前作と違うのはピート・サンドベリお得意のAOR風味の曲がないことです。徹頭徹尾ミディアム~スロー・テンポのメロディアスなハードロックが詰まっています。インストを除いて全てヨナス・レインゴールドの作曲。この人ベース・プレイも凄まじいのですが、作曲家としても実に素晴らしいメロディ書きますね。それをハスキーで繊細なピート・サンドベリの声で歌い上げられると、ほんとに切なくなってきます。全曲にそれぞれのドラマがあり、北欧的哀愁メロハーを代表するような傑作だと思います。

特筆すべきはギターのクリス・パルム。どのトラックでもその曲の表情に合った情感豊かなメロディを紡ぎ出しています。緩急をわきまえたフレーズの組み立てに秀でていて、一本調子な速弾きばかりで退屈させるようなことがありません。本作にはギター・インスト曲#12"Eye of the Beholder"も収録されており、ここでも彼のギタリストとしての才能が遺憾なく発揮されています。さらに、スペシャルなゲストとしてヨーロッパのジョン・ノーラムが参加しているのも嬉しいポイントです。#10"Bad Blood"では全面的にリード・ギターを担当、ここぞとばかりに弾きまくり倒しています。#11"Endlessly"ではクリス・パルムとのギター・バトルを展開。元々クリス・パルムはジョン・ノーラムに似たタイプのギタリストだし、お互いを煽り立てるような激しい応酬にもう嬉しい悲鳴を上げるしかありません。このクリス・パルム、本作を最後にミッドナイト・サンを脱退、その後の活動がよく分からなくなってしまったのがなんとも残念です。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Above & Beyond (intro)
02. Reality
03. Keep on Pushing
04. Deception of Evil
05. I Believe
06. Don't Get Me Wrong
07. Tears in my Eyes
08. Kissed by an Angel
09. Scream & Shout [bonus]
10. Bad Blood
11. Endlessly
12. Eye of the Beholder
13. Hey
All music by Jonas Reingold and words by Pete Sandberg
except "Eye of the Beholder" by Chris Palm

■Personnel
Pete Sandberg - Lead Vocal
Chris Palm - Guitar, Keyboard
Jonas Reingold - Bass
Hempo Hildén - Drums

John Norum - Guitar war on "Endlessly", guitar solo on "Bad Blood"
Mike Dee - Keyboard
Anders "Theo" Theander - Drums on "Eye of the Beholder"
Thomas Wallèn - Backing vocals
Inger Ohlén - Backing vocals
Sara Hurlin - Backing vocals

Producer - Jonas Reingold
Executive Producer -  Anders "Theo" Theander 

Above and Beyond
Midnight Sun
Aor

 

The Final Countdown / Europe (1986)

0098The Final Countdown
1986年にリリースされヨーロッパの出世作となった3枚目のアルバムThe Final Countdown です。今にして思えば、このアルバムとシングルカットされた曲が爆発的に売れたことで、良くも悪くもこのバンドの行く末を決定づけることになりました。ど頭のタイトル曲"The Final Countdown"を聴いただけで、1st、2ndからのサウンドの変化はすぐに分かります。曲を引っ張るのはギター・リフではなくキーボードのキャッチーなフレーズ。また、歌メロからクラシカルな旋律はほとんど消えました。ジョーイ・テンペストの歌唱もメタル的な力みが取れ、よりスムーズなものになっています。アメリカ市場を狙ってポップ化を進めたたのは明らかです。果たしてこの曲は全米チャート8位を記録しただけでなく、フランス、ドイツ、アイルランド、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、イタリアで1位を獲得する大ヒットとなりました。このアルバムからは他に4曲がシングル・カットされています。アルバムはアメリカだけで300万枚以上を売り上げてチャート最高8位、スウェーデン、スイス、フランスで1位、カナダ、イタリアで2位、ノルウェー4位、オーストラリア5位、ドイツ6位、イギリス9位と、まさに世界的な成功を収めることとなりました。

専任キーボード奏者を加入させてサウンドの装飾性を強め、楽曲もよりキャッチーさを追求して工夫を凝らし、一部の好事家だけにしか受け入れられない北欧メタルから、一般受けするアメリカナイズされたハードロックへ。この変身が大成功をもたらしたわけですが、かといってこのバンドが、よくあるアメリカのバンドのようにギラギラしたり、あっけらかんとしたサウンドになったわけではありません。ヨーロッパの特色だったリリシズムや気品、愛すべきイモ臭さはまだ残っています。ジョーイ・テンペストと並ぶ看板であるジョン・ノーラムのギターも、1st、2ndと遜色ないほど流麗に歌いまくっています。しかし、彼はサウンドの変化に不満を募らせ、このアルバムを最後にヨーロッパを脱退。そしてジョン・ノーラムが去った後、バンドのポップ化には一段と拍車がかかることとなります。

バンド・メンバーは、ジョーイ・テンペスト(vo)、ジョン・ノーラム(gt)、ジョン・レヴィン(ba)の3人は、1st、2ndと変わらず。ドラムはトニー・レノからイアン・ホーグランドに交代、それから前述したようにキーボードのミック・ミカエリが新メンバーとして加わっています。プロデューサーには、80年代黄金期ジャーニーの作品群を手がけてきたケヴィン・エルソンが迎えられています。なおボーナス・トラック3曲は、1987年ロンドンのハマースミス・オデオンでのライブを収録したビデオからのものです。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. The Final Countdown
02. Rock the Night
03. Carrie
04. Danger on the Track
05. Ninja
06. Cherokee
07. Time Has Come
08. Heart of Stone
09. On the Loose
10. Love Chaser
11. The Final Countdown (Live) [bonus]
12. Danger on the Track (Live) [bonus]
13. Carrie (Live) [bonus]
All songs written by Joey Tempest except "Carrie" written by Joey Tempest and Mic Michaeli

■Personnel
Joey Tempest – vocals
John Norum – guitars, backing vocals
John Levén – bass guitar.
Mic Michaeli – keyboards, backing vocals
Ian Haugland – drums, backing vocals

Producer - Kevin Elson 

Final Countdown -Deluxe-
Europe
Rock Candy
2019-08-16


 

Wings of Tomorrow / Europe (1984)

0083Wings of Tomorrow
1984年にリリースされたヨーロッパの2ndアルバム。1stの延長線上の透明感と気品に満ちた、北欧メロディック・メタルの典型的サウンドを聴くことができます。1stでは正直言ってヘタくそだったジョーイ・テンペストのボーカルもずいぶんマシになり、サウンド・プロダクションも向上、楽曲もより練り込まれたものが多くなるなど、全般的なレベル・アップが感じられる仕上がりです。また、1stに比べいわゆる様式美的な要素が薄くなり、よりストレートなサウンドとなっています。次作の3rdアルバムFinal Countdownは、サウンド、楽曲ともにメロハー色、ポップ色が強くなるので、メタリックな初期ヨーロッパを締めくくるアルバムでもあります。

マルセル・ヤコブとの共作曲#2"Scream of Anger"と、ジョン・ノーラムのインスト曲#5"Aphasia"を除いて、収録されている楽曲は今回も全てジョーイ・テンペストのペンによるものです。ヨーロッパが持つ気品や叙情性は、やはりジョーイ・テンペスト抜きでは有り得ないものなのだと再認識せざる得ません。それから、特筆すべきは前作以上にジョン・ノーラムのギター・ソロが充実していること。リッチー・ブラックモア、マイケル・シェンカー、レズリー・ウェストといった名前が思い浮かぶ、テクニカルでありながらメロディアスに歌うフレージングが実に見事です。また、当時おそらく全面的に使っていたであろうストラトキャスターの硬質な響きも、繊細かつ生硬な初期ヨーロッパのサウンド・イメージに決定的な影響を与えていると感じます。

この2ndアルバムのレコーディング・メンバーは前作と変わらず、ジョーイ・テンペスト(vo)、ジョン・ノーラム(gt)、ジョン・レヴィン(ba)、トニー・レノ(ds)の4人。プロデュースはレイフ・マーセス。スウェーデン出身のビッグネームABBA所有のポーラー・スタジオ(2004年閉鎖)所属で、本作のレコーディングはこのスタジオで行われました。過去に同スタジオで録音されたレッド・ツェッペリンのIn Through the Out Door(1979)でエンジニアを務めるなどの実績を持つ人です。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Stormwind (Joey Tempest)
02. Scream of Anger (Joey Tempest, Marcel Jacob)
03. Open Your Hear (Joey Tempest)
04. Treated Bad Again (Joey Tempest)
05. Aphasia (John Norum) 
06. Wings of Tomorrow (Joey Tempest)
07. Wasted Time (Joey Tempest)
08. Lyin' Eyes (Joey Tempest)
09. Dreamer (Joey Tempest)
10. Dance the Night Away (Joey Tempest)

■Personnel
Joey Tempest – vocals, acoustic guitars, keyboards
John Norum – guitars, background vocals
John Levén – bass
Tony Reno – drums

Producer - Leif Mases 

明日への翼
ヨーロッパ
SMJ
2013-10-09

 

Europe / Europe (1983)

0062Europe
スウェーデンのHR/HMを代表するバンド、ヨーロッパの1983年のデビュー作。このアルバムの時点でのメンバーは、ジョーイ・テンペスト(vo)、ジョン・ノーラム(gt)、ジョン・レヴィン(ba)、トニー・レノ(ds)の4人。ブルースやソウルからの直接的な影響を感じさせず、クラシック音楽的な様式美を備え、適度の湿り気と哀愁、透明感と垢抜けないイモ臭さが同居しているといった、「北欧メタル」という言葉から連想するイメージは、このアルバムで刷り込まれたような気がします。ヨーロッパというバンドのみならず、北欧HR/HMの出発点として非常に重要なアルバムでしょう。また、ワールド・ワイドなビッグ・ネームになる前に、日本での人気、評価が先行したのも印象に残ります。ボン・ジョビなども同様ですが、日本のHR/HMファンが発見・発掘したバンドが大きく成長することがしばしばあるのは興味深いことです。ま、日本だけの人気で終わってしまうということも、またしばしばあるわけですが。

どの曲もクリスタルのような透明感と気品あるメロディが印象的です。特に#3"Seven Doors Hotel"は名曲中の名曲です。ジャケットのイメージそのままに、いわくありげな古城のようなホテル、寒々とした夜の湖を渡る風、黒々とした果てしない森などが目に浮かぶようです。ジョーイ・テンペストの歌唱はややツラいものがありますが、ジョン・ノーラムの華麗でスリリングなギターは今でも十分にかっこいい名演です。ヨーロッパというと、大ヒットした"The Final Countdown"をすぐに連想しますが、初期の代表曲はなんと言っても"Seven Doors Hotel"でしょう。筆者はこちらのほうが好きです。しかし、あらためてクレジットを見ると、このアルバムほとんど全曲ジョーイ・テンペスト一人で書いているんですね。大したものだと思います。


評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. In the Future to Come
02. Farewell
03. Seven Doors Hotel
04. The King Will Return
05. Boyazont
06. Children of This Time
07. Words of Wisdom
08. Paradize Bay
09. Memories
All songs were written by Joey Tempest, except "Boyazont"(John Norum, Eddie Meduza)


■Personnel
Joey Tempest – vocals, acoustic guitars, keyboards
John Norum – guitars, background vocals
John Levén – bass
Tony Reno – drums

Producer - Europe, Erik Videgård, Thomas Erdtman

Europe
Europe ヨーロッパ
Music on CD
2013-07-02

 

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