メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

ジェイソン・サノス

Precious Ones / Gary Hughes (1998)

0386Precious Ones









UKメロハー・バンドTenのゲイリー・ヒューズの3枚目のソロ・アルバム。リリースは1998年、既にTenの活動は始まっていて、3rdThe Robeと4thSpellboundの間の時期ということになります。音的にはややソフトでAOR色が強いものの、ほとんどTenと変わりません。全曲をゲイリー・ヒューズが書き、基本トラックの録音はTenのヴィニー・バーンズ(g)とグレッグ・モーガン(ds)とゲイリー・ヒューズによって行なわれているので、当然と言えば当然です。また、追加ミュージシャンとしてMilleniumのラルフ・サントーラとトッド・プラントの名前があって「おやっ」と思いますが、どこに参加しているのかはよく分かりません。

本作のハイライトはなんと言っても#1"In Your Eyes"でしょう。哀愁に満ちたメロディとメランコリックな歌声が聴く者の胸に迫ります。ゲイリー・ヒューズの長所が100%発揮されており、ソロ作、Tenを通じてベストの部類に入る名曲だと思います。サビの部分でモータウン風にドラムが倍になるかと思いきやそのままで、一方ベースは終始トットットットッと倍で刻んでおり、これでのっぺりしたバラードにならずに躍動感が出ているのが心憎い。弾いているのはゲイリー・ヒューズ自身です。上手いですね~。その他も、不思議な浮遊感のあるアンサンブルがカッコいい#2"Don't Ever Say Goodbye"、まるっきりTen風のハードなナンバー#4" Give My Love a Try"、#5"Divided We Fall"、ヴィニー・バーンズが泣きまくるスローなブルースロック#11"Heart of a Woman"などは申し分の無い出来だと思います。その一方でバラード曲#3"The Colours of My Life"、#6"The Night the Love Died"、#12"Precious Ones"は、ベタ過ぎと言うかありがちと言うか通俗的と言うか、あまり感心できません。加えて、予算の関係もあるでしょうが、せめてバラードでは「ピアノ音」「ストリングス音」ではなく本物のピアノとストリングスを使ってほしいと思いました。

なお、本作と2ndソロ作Gary Hughesのカップリング盤が2000年に発売され、こちらにはボーナス・トラックとして#13"The Miracle Is You"、#14"Be My Fantasy Tonight"、#15"All Fall Down"の3曲が収録されています。いずれもオリジナル盤未収録で日本盤EPIn Your Eyesだけに収録されていたものです。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. In Your Eyes
02. Don't Ever Say Goodbye
03. The Colours of My Life
04. Give My Love a Try
05. Divided We Fall
06. The Night the Love Died
07. First Light (Instrumental)
08. Wrecking Machine
09. Perfect Ten
10. This Time
11. Heart of a Woman
12. Precious Ones
13. The Miracle Is You [bonus track]
14. Be My Fantasy Tonight [bonus track]
15. All Fall Down [bonus track]
All songs written by Gary Hughes

■Personnel
Gary Hughes - Vocals. Keyboards, Bass Guitars, Guitars
Vinny Burns - Guitars
Greg Morgan - Drums

Todd Plant - Backing Vocals
Jason Thanos - Backing Vocals
Mark 'Kiske' Ashton - Backing Vocals
Ray Brophy - Backing Vocals
Aziz Ibrahm - Guitars
Ralph Santolla - Guitars

Producer - Gary Hughes
Precious Ones
Gary Hughes
Frontiers

ゲイリー・ヒューズ+プレシャス・ワンズ
ゲイリー・ヒューズ
ユニバーサル インターナショナル
2000-09-27

 

Spellbound / Ten (1999)

0160Spellbound









イギリスのメロディアス・ハードロック・バンド、Tenの4th(ライブ盤を含めると5th)アルバム。1999年リリースとなっていますが、日本国内盤は先行して1998年に発売されています。メロハー・ファンにとってTenは安心のブランド、このアルバムも期待を裏切らない作品となっています。哀愁を感じさせる適度にウェットなメロディはいつも通り、ゲイリー・ヒューズの落ち着いたボーカルとヴィニー・バーンズの泣きのギターもいつも通りです。他のメンバーも前作のライブ盤Never Say Goodbyeと変わらず、ジョン・ハリウェル(gt)、ジェド・ライランズ(key)、グレッグ・モーガン(ds)、スティーヴ・マッケンナ(ba)の4人。バッキング・ボーカルにはお馴染みのジェイソン・サノスの他、Dante Foxのスー・ウィレッツ、Magnumのボブ・カトレイも加わっています。

ゲイリー・ヒューズは歴史や叙事詩が好きらしく、これまでもそんな趣味を伺わせる曲がありましたが、本作ではその傾向は一層強まっています。勇壮でシンフォニックなオープニングから#2"Fear the Force"への流れがドラマティックで印象的です。また、#5"We Rule the Night"、#6"Remembrance for the Brave"、#7"Red"と、トラッド・ミュージックの旋律を取り入れた曲が挿入されることで、より伝統だとか歴史物語といったテーマが際立ち、あたかもコンセプト・アルバムのような統一感が生まれています。その一方で過去作で垣間見られた過剰な大作志向が抑制され、長いものでも6分程度と楽曲がコンパクト化しているのも好印象。さらに筆者としては、#9"Wonderland"に1stで見られた瑞々しいポップ・フィーリングが戻っているのも嬉しかったです。また、ミックスが1st~3rdのマイク・ストーンから、GiantやFair Warningを手がけてきたレイフ・マッケンナに変わったせいか、奥行きを感じさせるサウンドに仕上がっています。総合的にとても出来の良いアルバムだと思いました。

ただ、トラディショナルなのはいいとして、ファンタジーRPGに夢中になっている中学生みたいな歌詞は興ざめ。正直勘弁してもらいたいなと。ドラゴンが滑ったの転んだの、魔法使いがどうしたこうした、復讐だ!反逆だ!なんてのがHR/HMには何故かよく出てきますけど、もうそれだけでバカっぽく見えちゃうの。

閑話休題。本作で聴けるトラッド風メロディは、アイリッシュっぽいとは思いました。ただ、この方面の知識に乏しいので正確には不明です。同じケルト系のアイルランド、スコットランド、ウェールズ、コーンウォールの音楽にどのような差異があるのか分からないのです。イングランド(アングロサクソン)系とケルト系の違いだって怪しいものです。そもそもゲイリー・ヒューズがイギリス国内のどのようなエスニック・グループに帰属意識を持っているのかさえ分かりません。カトリックかプロテスタントかも知りません。イギリスのトラッド音楽を聴くと、ブリテン島と北アイルランドに住む人々を十把一絡げに、のっぺらぼうな「イギリス人」としてしか理解出来ていないことを痛感してしまいます。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. March of the Argonauts (Instrumental)
02. Fear the Force
03. Inside the Pyramid of Light
04. Spellbound
05. We Rule the Night
06. Remembrance for the Brave (Instrumental)
07. Red
08. The Alchemist
09. Wonderland
10. Eclipse
11. The Phantom
12. Till the End of Time
All songs written by Gary Hughes,
except " Inside the Pyramid of Light" written by Gary Hughes and Vinny Burns

■Personnel
Gary Hughes – vocals
Vinny Burns – guitars
Ged Rylands – keyboards
John Halliwell – guitars
Steve McKenna – bass guitar
Greg Morgan – drums and percussion

Francis Cummings – violin
Fiona Payne – violin
Anne Morrison – viola
Anna Frazer – cello
Mike McGoldric – uilleann pipes, low whistle, bamboo flute​
Jason Thanos – additional backing vocals
Sue Willets – additional backing vocals (Track 5)
Bob Catley – additional backing vocals (Track 5)
Rafe McKenna – additional backing vocals (Track 5)

Producer - Gary Hughes 

スペルバウンド
テン
マーキー・インコーポレイティド
2016-06-29

   

The Robe / Ten (1997)

0070The Robe
哀愁メロハー一直線、ブリティッシュ・ハードロック・バンドTenの3rdアルバム。1stTen、2ndThe Name of the Roseと音楽性は基本的に変化ありません。もしデビカバが菜食主義者だったら、、、みたいなゲイリー・ヒューズの優しい歌声、もしマイケル・シェンカーが赤マムシドリンクを常飲していたら、、、みたいなヴィニー・バーンズのねちっこいギター、いつも全く同じでいいじゃないですか。この手のバンドに「マンネリ」などと言ってみたって始まりません。音楽性は変えずに、アルバムごとに手を変え品を変え、Tenならではの良質なメロハーを聴かせてくれればそれでいいんです。曲が長いのだけは勘弁してほしいけど。

このアルバムでは、2ndで後退してしまったポップ・フィーリングが戻ったり、中東風なメロディが出てきたり、荘厳なアレンジを聴かせたりとそれなりに目新しさは感じられ、似通った曲調の多かった2ndに比べて、通しで聴いても飽きるということはありません。ふんわりしたAOR的サウンドにならず、あくまでハードロックとしてのゴリッとした音像を保ち続けているのは、このバンドの路線として正解だと思います。

レコーディング・メンバーは、ゲイリー・ヒューズ、ヴィニー・バーンズの他、ジェド・ライランズ(key)、グレッグ・モーガン(ds)、ジョン・ハリウェル(gt)は前作と変わらず。ベースはアンドリュー・ウェブに交代していますが、アディショナル・ミュージシャンとしてクレジットされています。なお、前作まで制作に関わっていたマイク・ストーンはミキシングのみ担当、プロデュースはゲイリー・ヒューズ単独のクレジットとなっています。

なおオリジナル盤の他、ミニアルバムFear the Force収録曲などを収めて2枚組としたリマスター再発盤もあります。 

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基 準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。 

■Tracks
01. The Robe (Gary Hughes)
02. Bright on the Blade (Gary Hughes)
03. Virtual Reality (Gary Hughes)
04. Standing on the Edge of Time (Gary Hughes, Vinny Burns)
05. You're in My Heart (Gary Hughes)
06. Fly Like an Eagle (Gary Hughes)
07. Arcadia (Gary Hughes)
08. Ten Fathoms Deep (Gary Hughes)
09. Battlelines (Gary Hughes)
10. Someday (Gary Hughes, Vinny Burns)

■Personnel
Gary Hughes – vocals
Vinny Burns – guitars
Ged Rylands – keyboards
Greg Morgan – drums
John Halliwell – guitars

Andrew Webb – bass guitar
Ed Collins – trumpet, flugelhorn
Dru Baker – tenor and alto saxophone
Jason Thanos – backing vocals
Ray Brophy – backing vocals
Dave Chadwick – Voiceovers

Producer - Gary Hughes 

ザ・ローブ
テン
マーキー・インコーポレイティド
2016-06-29

Robe: Bonus Collection
Ten
Frontiers Italy
2006-11-27





The Name of the Rose / Ten (1996)

0029The Name of The Rose

イギリスのメロディアス・ハードロック・バンドTenの2ndアルバム。Tenのアルバムの中でも、名盤と評価する人が多いように見受けられます。筆者も、タイトル曲"The Name of the Rose"をはじめとして好きな曲が何曲も入っているのですが、評価はちと微妙です。前作と比べるとポップス的要素が減退し、よりハードロック色が強まったこと以外は、メロディアスで湿り気のあるブリティッシュ・ハードという基本路線は変わっていません。ゲイリー・ヒューズは相変わらず覇気のないカヴァー デイル状態だし、ヴィニー・バーンズも張り切りすぎのマイケル・シェンカーよろしく弾きまくっています。むしろ、その変わらなさ過ぎが微妙です。同じシンガーですから、歌いまわしが各曲似ているのは致し方ないとしても、歌メロそのものが1stと似ていて、まるで2枚組のアルバムを分割してリリースしたような印象を受けるのです。ポップさが薄くなった分曲調がますます似通った結果、通しで聴くと正直後半ダレてしまう。前作から1年も経たずに同じ年に2ndを リリースする必要があったのでしようか。それから、前作でもその兆しが見られた大作主義が、いよいよこのバンドの特徴となったようです。全13曲中、8分台の曲が2曲、7分台が2曲、6分台が2曲あります。複雑な構成で変化を持たせる訳でもなく、ただ無駄に曲が長い。筆者のようなコンパクトな楽曲を好むリ スナーにとっては、これはキツいです。

前作では正式メンバーは、ヒューズ、バーンズ、ベースのグレッグ・モーガンの3人でしたが、このアルバムではバンドメンバーとしてジョン・ハリウェル(Gt)、ジェド・ライランズ(Key)、シェリー(Ba)の3人が付け加えてクレジットされていま す。シェリー、ゲスト・キーボード奏者のブライアン・コックスは、バーンズ、モーガンとともにデアー(Dare)の元メンバーです。バック・ボーカルで1 曲参加しているジェイソン・サノスは、このアルバムの後もテンのアルバム、ゲイリー・ヒューズのソロ作品に度々登場しています。プロデュースは前作と同じ くマイク・ストーンとゲイリー・ヒューズとなっています。なお、1stと2ndにそれぞれボーナス・トラックを加えて2枚組としたものも発売されています。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. The Name of the Rose (Gary Hughes)
02. Wildest Dreams (Gary Hughes)
03. Don't Cry (Gary Hughes)
04. Turn Around (Gary Hughes)
05. Pharaoh's Prelude : Ascension to the Afterlife (Gary Hughes)
06. Wait for You (Gary Hughes)
07. The Rainbow (Gary Hughes, Zoe Hughes)
08. Through the Fire (Gary Hughes)
09. Goodnight Saigon (Gary Hughes)
10. Wings of the Storm (Gary Hughes)
11. Standing In Your Light (Gary Hughes)
12. The Quest (Gary Hughes)
13. You're My Religion (Gary Hughes)

■Personnel
Gary Hughes – vocals
Vinny Burns – guitars
John Halliwell – guitars
Ged Rylands – keyboards
Shelley – bass guitar
Greg Morgan – drums

Mark Harrison – bass guitar
Brian Cox – keyboards
Howard Smith – keyboards
Andy Thompson – keyboards
Jason Thanos – backing vocals on "Goodnight Saigon"
Jee Jacquet – backing vocals on "Standing In Your Light"
Thierey Cardinet – backing vocals on "Standing In Your Light"
Oliver Bowden – backing vocals on "Standing In Your Light"
Damien Guasp – backing vocals on "Standing In Your Light"

Producer - Gary Hughes, Mike Stone
Executive Producer - Mark Ashton, Vinny Burns

Ten/the Name of the Rose
Ten
Frontiers
2002-07-22


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