メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

グレッグ・ジェフリア

Silk + Steel / Giuffria (1986)

0433Silk + Steel









House of Lordsの前身バンドGiuffriaの2ndにしてラスト・アルバム。リーダーのグレッグ・ジェフリア(Key)、デヴィッド・グレン・アイズレー(Vo)、アラン・クリガー(Ds)は前作と変わらず、ギターはクレイグ・ゴールディからラニー・コードラに、ベースはチャック・ライトからデヴィッド・サイクスにチェンジしています。また、プロデューサーには同じMCAレーベルでNight Rangerを成功に導いたパット・グラッサーが起用されています。

グレッグ・ジェフリアの壮麗なキーボードと、デヴィッド・グレン・アイズレーの野生的なボーカルという対照的な要素が面白かった前作を引き継いで、本作でも同様のキャッチーなアメリカン・ハードロックをやっています。ただし、前作以上にJourneyっぽくなってしまいました。おまけに、前作からのシングル・カット"Call to the Heart"がそこそこヒットしたためか、2匹目、3匹目のドジョウをねらって収録曲の半分ほどがバラードになっています。これはいかがなものか。ハードロック・バンドが変な色気を出してバラードを連発するとロクなことになりません。スピード・チューンの2曲、#6"Radio"と#7"Heartache"はリフもメロディも無茶苦茶カッコいいのですが、アルバム全体の印象はなんともヌル過ぎます。ちなみにリリース当時はLPで、A面がSilk Side、B面がSteel Side、バンドの硬軟両面を聴かせるという趣向で、Silk + Steelというタイトルもそれを示しているようですが、それほどくっきりとサウンドに違いがあるようには思えません。結果として、アルバムはチャート60位、シングル"I Must Be Dreaming"は52位、"Love You Forever"は100位以内に入ることもなく、商業的には前作に遠く及ばず失敗作と見做されることになります。

その後、MCAに見放されたGiuffriaはリズム・セクションをチャック・ライト(B)とケン・メリー(Ds)にチェンジして、なおも3枚目のアルバム制作に取り掛かりますが、結局この3作目は正式には陽の目を見ることなくお蔵入りとなってしまいます。そして、Kissのジーン・シモンズの設立したレーベルの下で、ボーカルをジェイムズ・クリスチャンに入れ替えバンド名もHouse of Lordsと変更、より純度の高いハードロック・バンドして再出発することになります。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. No Escape (G. Giuffria, D. G. Eisley)
02. Love You Forever (G. Giuffria, D. G. Eisley)
03. I Must Be Dreaming (W. Deville)
04. Girl (G. Giuffria, D. G. Eisley)
05. Change of Heart (G. Giuffria, D. G. Eisley)
06. Radio (G. Giuffria, D. G. Eisley, L. Cordola)
07. Heartache (G. Giuffria, D. G. Eisley)
08. Lethal Lover (G. Giuffria, D. G. Eisley, L. Cordola)
09. Tell It Like It Is (G. Giuffria, D. G. Eisley)
10. Dirty Secrets (G. Giuffria, D. G. Eisley)
[Bonus Track]
11. Say It Ain'T True (G. Giuffria, D. G. Eisley)

■Personnel
Gregg Giuffria - Keyboards, Vocoder
David Glen Eisley - Lead & Backing Vocals, Harmonica
Lanny Cordola - Lead Guitar, Backing Vocals
Alan Krigger - Drums
David Sikes - Bass Guitar, Backing Vocals

Producer - Pat Glasser (#1~2, #4~6, #8~10)
Gregg Giuffria & David Glen Eisley (#3, #7), Gregg Giuffria (#11)

Silk & Steel
Giuffria
Music on CD
2023-10-13

 

Giuffria / Giuffria (1984)

0396Giuffria









元Angelのキーボード奏者グレッグ・ジェフリアの名を冠した、アメリカのハードロック・バンドGiuffriaの1stアルバム。後にHouse of Lordsと改名することになるバンドです。この1stアルバムの時点でのグレッグ・ジェフリア以外のメンバーは、リード・ボーカルにデヴィッド・グレン・アイズレー(ex-Sorcery)、ギターにクレイグ・ゴールディ(ex-Rough Cutt)、ベースにチャック・ライト(ex-Quiet Riot)、ドラムは後にLondonに加入するアラン・クリガー。

このバンドのサウンドの最大の特徴は、グレッグ・ジェフリアのキーボードがアンサンブルの中心になっていることでしょう。時にシンフォニックに、時にキース・エマーソン風に、華麗で大袈裟なプレイが全面的にフィーチャーされています。一方、デヴィッド・グレン・アイズレーのボーカル・スタイルは、#3"Don't Tear Me Down"や#4"Dance"に顕著なようにソウルフルで野性的なものです。オーティス・レディングとかウィルソン・ピケット大好きみたいな。グレッグ・ジェフリアが何故ボーカリストとしてデヴィッド・グレン・アイズレーを選んだのかは謎ですが、このミスマッチ感が面白い。ギターのクレイグ・ゴールディも自由奔放に弾きまくっていて、なんだかてんでバラバラな感じ。でも結果として、類型的なアメリカン・ハードロックとは違うサウンドになっていて、それがこのバンドの魅力かなと思いました。

本作からシングル・カットされた#2"Call to the Heart"は全米チャートで15位を記録、アルバム自体26位とそこそこのヒットとなったようです。しかし後が続かず、2ndアルバムのセールス不振でバンドは分解、バンド名をHouse of Lordsに変えて再出発。その際デヴィッド・グレン・アイズレーは追い出されて、代わりにジェイムズ・クリスチャンがボーカリストの座に着きます。ジェイムズ・クリスチャンは大好きなシンガーなのですが、デヴィッド・グレン・アイズレーも捨て難い魅力があるのに。なんて思っていたら、近年デヴィッド・グレン・アイズレーとクレイグ・ゴールディを中心にバンドが再結成されたようです。2017年にアルバムもリリースしたようですが、本人不在でGiuffriaを名乗るのはさすがに憚られたのか、Eisley / Goldyという名義となっています。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Do Me Right (G. Giuffria, D. G. Eisley)
02. Call to the Heart (G. Giuffria, D. G. Eisley)
03. Don't Tear Me Down (G. Giuffria, D. G. Eisley, C. Goldy)
04. Dance (G. Giuffria, D. G. Eisley, C. Goldy)
05. Lonely in Love (G. Giuffria, D. G. Eisley)
06. Trouble Again (G. Giuffria, D. G. Eisley)
07. Turn Me On (G. Giuffria, D. G. Eisley, C. Goldy)
08. Line of Fire (G. Giuffria, D. G. Eisley)
09. The Awakening (G. Giuffria, D. G. Eisley)
10. Out of Blue (G. Giuffria, D. G. Eisley)

■Personnel
Gregg Giuffria - Keyboards, Vocals on #9
David Glen Eisley - Vocals
Craig Goldy - Guitar
Alan Krigger - Drums
Chuck Wright - Bass, Vocals

Producer - Gregg Giuffria

美伝説
ジェフリア
ユニバーサル ミュージック
2016-05-18

 

Demons Down / House of Lords (1992)

0304Demons Down









アメリカのハードロック・バンドHouse of Lordsの3rdアルバム。またまたメンバー・チェンジが行なわれ、グレッグ・ジェフリア(key)とジェイムズ・クリスチャン(vo)以外は総入れ替えとなっています。リズム・セクションは元Whitesnakeのトミー・アルドリッジ(ds)と元Quiet Riotのショーン・マクナブ(b)、ギターは元V.V.S.IのChick(デニス・チック)という布陣です。他にもティム・ピアースとダニー・ジェイコブスの2人のギタリストと、Kissのポール・スタンレー、前身バンドGiuffriaのボーカリストだったデヴィッド・グレン・アイズレー、女性ボーカリストのフィオナ、アイナがバック・ボーカルでクレジットされています。プロデューサーはこれまでのアンディ・ジョンズから、前作でミックスを担当していたデヴィッド・ソナーに交代。また、レーベルもRCA, Simmons Recordsを離れてVictoryからのリリースとなっています。

さて本作は、ジェフリア&クリスチャンに加えて外部ライターを数多く起用したせいか、楽曲の充実度は前2作を上回り、文句の付けようのない傑作ハードロック・アルバムとなりました。まさに名曲のすし詰め状態。ツワモノ揃いのメンバーによるどっしりとしてスケールの大きなサウンドが素晴らしすぎます。しかしながら商業的には成功を収めることができず、2000年代に復活するまでバンドは活動停止(解散?)に追い込まれてしまいます。なんとも不運というか残念な結末です。

01. O Father (J. Christian, G. Giuffria, M. Baker, B. Marlett)
荘重なキーボードに導かれてスタートするミドル・テンポのナンバー。最高のオープニング曲です。曲作りにはマーク・ベイカーとボブ・マーレットという2人のソング・ライターが参加しています。マーク・ベイカーはSignalなどへの曲提供でも知られています。ボブ・マーレットの方はThe Stormなどに曲提供しています。

02. Demons Down (J. Christian, G. Giuffria, M. Baker)
タイトル・トラックです。乾いたアコギが印象的に残るブルージーな曲で、ギター・ソロもメチャクチャカッコいいです。これもマーク・ベイカーとの共作曲。彼は本作収録曲中8曲でクレジットされています。

03. What's Forever For (,M. Baker, J. Christian, G. Giuffria)
哀感漂うメロディとゴスペル風のコーラスが印象的なバラード。ジェイムズ・クリスチャンの上手さが光る名曲です。この曲もマーク・ベイカーとの共作となっています。

04. Talkin' 'Bout Love (G. Giuffria, J. Christian, S. Johnstad, T. Aldridge, M. Baker)
ツェッペリンの影響を感じさせるヘヴィでドラマチックなナンバー。共作者の一人スティーヴ・ジョンスタッドは1stでも"I Wanna Be Loved"を書いています。

05. Spirit of Love (M. Spiro, G. Giuffria, J. Christian, T. Pierce)
ハウス・オブ・ローズには珍しく洗練されたAORっぽい雰囲気のバラード。著名なソング・ライターであるマーク・スピロと、ゲスト・ギタリストのティム・ピアースがクレジットされています。リード・ギターはティム・ピアースかもしれませんね。

06. Down, Down, Down (J. Christian, M. Baker, G. Giuffria, B. Marlett)
ヘヴィでワイルドなロックン・ロール。ちょっとAerosmith風かな。マーク・ベイカー&ボブ・マーレットとの共作曲。

07. Metallic Blue (G. Giuffria, J. Christian, M. Baker, M. Slamer)
これもハウス・オブ・ローズには珍しいポップでちょっとオシャレなスピード・チューン。文句なしにカッコいいです。ギター・ソロも出色の出来。マーク・ベイカーとマイク・スラマーが作者としてクレジットされていますが、後にマイク・スラマーは自身のバンドSteelhouse LaneのアルバムMetallic Blueでセルフ・カバーしています。本作と同じ時期にリリースされたHardlineの1st収録曲"Dr. Love"はやはりマイク・スラマーとマーク・ベイカーの共作曲で、これも同じくMetallic Blueでカバーされています。

08. Inside You (M. Spiro, A. Pasqua, G. Giuffria, J. Christian)
ストリングスをバックに切々と歌われるバラード曲。並みのシンガーだったら冗長に感じられそうですが、さすがはジェイムズ・クリスチャンです。マーク・スピロと共に、ジャズ・ピアニストでGiantのメンバーだったアラン・パスクアが共作者に名前を連ねているのが目を引きます。そう言えばGiantのLast of the Runawaysでもこの2人の共作曲が何曲もありました。

09. Johnny's Got a Mind of His Own (J. Christian, M. Baker, G. Giuffria)
一転してシンプルでタイトなロックン・ロール。こういう曲だとトミー・アルドリッジのドラムの凄さがよく分かりますね。

10. Can't Fight Love (M. Baker, M. Slamer, J. Christian, G. Giuffria)
ラストはいかにもこのバンドらしい、グッとテンポを落としたハードロック・ナンバーです。タメにタメたリズムがゾクゾクするほどカッコいい。マーク・ベイカーとマイク・スラマーとの共作曲です。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Personnel
James Christian - lead vocals
Gregg Giuffria - keyboards, background vocals
Tommy Aldridge - drums, background vocals
Sean McNabb - bass guitars, background vocals
Chick - guitars, background vocals

Tim Pierce - guest guitars
Danny Jacobs - guest guitars
Paul Stanley - guest background vocals
Fiona - guest background vocals
Aina - guest background vocals
David Glen Eisley - guest background vocals
Billy Trudel - guest background vocals

Producer – David Thoener, House of Lords

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Demons Down / House of Lords
 

Sahara / House of Lords (1990)

0237Sahara









1990年リリースされたHouse of Lordsの2ndアルバム。1stで素晴らしいギターを弾いていたラニー・コードラが抜けて、新ギタリストとして元Shark Islandのマイケル・ガイがクレジットされています。しかし、実際のレコーディングではほとんどダグ・アルドリッジがプレイしているらしい。また、#4"Heart on the Line" では作曲者であるCheap Trickのリック・ニールセンが、#6"Sahara" では「高速ギタリスト」クリス・インペリテリが弾いているようです。その他にギターにマンディ・メイヤー(Cobra、Asia、Gotthard etc)、バック・ボーカルにロビン・ザンダー(Cheap Trick)、マイク・トランプ(White Lion)他多くのミュージシャンがクレジットされています。

アメリカのバンドながら、かつてのブリティッシュ・ハードロックの王道を行くようなサウンド、メロディアスな曲調は1stと変わりません。どっしり感とスリル感が両立したリズム隊、荘厳さを醸し出すキーボード、デヴィッド・カヴァーデイル+ロバート・プラントといった風情のジェイムズ・クリスチャンの歌唱、全て安定していてハードロックの醍醐味を堪能させてくれます。#1"Shoot"、#2"Chains of Love"、#5"Laydown Staydown"、#6"Sahara"、#7"It Ain't Love"、#9"American Babylon"とミドル・テンポの曲が多く、こういった曲調でこのバンドの魅力が最大に発揮されていると感じます。Blind Faithのカヴァー#3"Can't Find My Way Home"もちょっとアーシーで良い雰囲気だし、ラストの#10"Kiss of Fire"は凄まじいスピードとパワーで一部の隙無しです。全体として1stより曲の出来はさらに良くなっていると思いました。ただ筆者としては、Cheap Trick風の#4"Heart on the Line"、変に明るく冗長な#8"Remember My Name"は、あんまり面白くなかったなぁ。まあ、ひたすら重め、暗めで攻めると、通しで聴くと飽きちゃうのかもしれませんが。

プロデューサーは前作と同じく重鎮アンディ・ジョンズとバンド自身。前作はイマイチ音が良くなかったけど、今回はメジャー感が際立つサウンド・プロダクションに言うこと無し。なおエグゼクティヴ・プロデューサーに前作と同じくレーベルのオーナーであるジーン・シモンズがクレジットされています。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Shoot (K. Mary/J. Christian/C. Wright/G. Giuffria)
02. Chains of Love (J. Christian/L. Cordola/J. Purdell/C. Wright/K. Mary/G. Giuffria)
03. Can't Find My Way Home (S. Winwood)
04. Heart on the Line (R. Nielsen)
05. Laydown Staydown (K. Mary/J. Christian/C. Wright/G. Giuffria)
06. Sahara (G. Giuffria/J. Christian/K. Mary/C. Wright)
07. It Ain't Love (G. Giuffria/J. Christian/K. Mary/C. Wright)
08. Remember My Name (N. Graham/B. Mitchell)
09. American Babylon (C. Wright/L. Cordola/J. Christian/K. Mary/G. Giuffria)
10. Kiss of Fire (C. Wright/J. Christian/K. Mary/G. Giuffria)

■Personnel
James Christian - lead vocals, additional guitars
Gregg Giuffria - keyboards, background vocals
Chuck Wright - 4, 8, and fretless basses, background vocals
Ken Mary - acoustic and electronic drums, background vocals
Michael Guy - guitars, background vocals

Rick Nielsen - additional guitars, additional background vocals
Chris Impellitteri - additional guitars
Doug Aldrich - additional guitars
Mandy Meyer - additional guitars
Robin Zander - additional background vocals
Mike Tramp - additional background vocals
David Glen Eisley - additional background vocals
Steve Plunkett - additional background vocals
Steve Isham - additional background vocals
Ron Keel - additional background vocals
S.S. Priest - additional background vocals
Billy Dior - additional background vocals
Robbie Snow - additional background vocals
Cheri Martin - additional background vocals
Melony Barnet - additional background vocals
Bruce Flohr - additional background vocals
David Sluts - additional background vocals
Shannon Wolak - additional background vocals
Margie Rist - additional background vocals
Erin Perry - additional background vocals
Kimberly Gold - additional background vocals
Aina Olson - additional background vocals
Breta Troyer - additional background vocals

Producer – Andy Johns, House of Lords
Executive Producer – Gene Simmons

Sahara
House of Lords
RCA
1990-08-21

House of Lords / House of Lords (1988)

0152House of Lords









アメリカのハードロック・グループHouse of Lords(ハウス・オブ・ローズ)が1988年にリリースした1stアルバムです。このバンドの前身は、元Angelのキーボード奏者グレッグ・ジェフリア率いるGiuffria。1stは売れたものの2ndがコケてレコード会社から切られたGiuffriaは、Angel時代に縁のあったKissのジーン・シモンズと接触します。ジーン・シモンズは自身が立ち上げたレーベルSimmons Recordsとの契約に同意したものの、バンド名とリード・ボーカルを変えることを指示。新ボーカルには、ジェフ・カンタナのバンドJasper Wrathや、Jasper Wrathの残党が結成したEyesで歌っていたジェイムズ・クリスチャンが決定。また、Giuffriaを離れQuiet Riotでプレイしていたベーシストのチャック・ライトも再合流。ギターのラニー・コードラ、ドラムのケン・メリーはそのままGiuffriaから横すべり。こうしてGiuffriaはHouse of Lordsとして再出発することになります。録音が始まっていたGiuffriaの3rdアルバムのデモ音源は、デヴィッド・グレン・アイズレー(お払い箱になったGiuffriaのボーカリスト)が2001年にリリースしたThe Lost Tapesで聴くことができます。そこには本作収録曲"Pleasure Palace"、"Slip of the Tongue"、"Jealous Heart"のオリジナル・バージョンも含まれています。余談ですが、このデヴィッド・グレン・アイズレーという人はミュージシャンになる前はサンフランシスコ・ジャイアンツ所属の野球選手で、近年では俳優としても活躍しているらしい。それから奥さんはあのオリビア・ハッセーらしい。いや、まったく余談でした。

さて音のほうですが、いたってオーソドックスなハードロックです。威風堂々として重厚なサウンドと、デヴィッド・カヴァーデイルやロバート・プラントを思わせるジェイムズ・クリスチャンのブルージーな歌唱が相まって、まるっきりブリティッシュ・ハードロック。とてもアメリカのバンドとは思えません。そしてバンドの実力は超一流。アルバムの中では異色の曲ですが、Deep Purple風シャッフル#4"Lookin' for Strange"を聴けば一発で並のバンドではないことが分かります。ドラムとベースはパワー感とスリリングさが尋常でなく、ハードロックのリズム隊としてまさにパーフェクト。ギターはテクニカルかつエモーショナル。このラニー・コードラというギタリストは、時にジャズっぽいフレーズを交えるなど巧者でありながら、延々とテク見せびらかしに走らないのが好ましい。グレッグ・ジェフリアのキーボードも必要以上に前に出すぎず、それでいてサウンドを格調高くするのに役立っています。いや~ベタほめです。しかし、1曲だけまったくもってつまらない#8"Under Blue Skies"、これで興をそがれるのがなんとも残念です。

本作のプロデュースはアンディ・ジョンズ。2013年に亡くなっていますが、ロック・ミュージック分野のプロデューサー/エンジニアとしては最も著名な人物の一人でしょう。Humble Pie、Free、Cinderella、Van Halen、L.A. Guns、Chickenfootと枚挙に暇が無いほど多くのアルバム制作に携わっています。また、バック・ボーカルにジェフ・スコット・ソートがクレジットされているのが意外です。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Pleasure Palace (Gregg Giuffria/David Glen Eisley)
02. I Wanna be Loved (Mandy Meyer, Steve Johnstad)
03. Edge of Your Life (Lanny Cordola/Chuck Wright/Brett Alstadt)
04. Lookin' for Strange (Lanny Cordola/Chuck Wright/James Christian/Gregg Giuffria)
05. Love Don't Lie (Stan Bush)
06. Slip of the Tongue (Gregg Giuffria/David Glen Eisley/Rick Nielsen)
07. Hearts of the World (Gregg Giuffria/Lanny Cordola/Chuck Wright)
08. Under Blue Skies (Gregg Giuffria/David Glen Eisley/Johnny Warman)
09. Call My Name (Gregg Giuffria/Chuck Wright/James Christian/Lanny Cordola)
10. Jealous Heart (Gregg Giuffria/David Glen Eisley/David Roberts)

■Personnel
James Christian - lead vocals
Gregg Giuffria - keyboards
Lanny Cordola - guitars
Chuck Wright - bass
Ken Mary - drums

Jeff Scott Soto - backing vocals

Producer – Andy Johns, Gregg Giuffria
Executive Producer – Gene Simmons

House of Lords
House of Lords
Music on CD
2013-04-25

 

Los Angeles / Los Angeles (2008)

0012Los Angeles

ロサンゼルス(Los Angeles)は、Vision DivineやKilling Touchでの活動で注目されるイタリア出身のボーカリスト、ミケーレ・ルッピ(Michele Luppi)と、スウェーデン出身のメロハー/AOR界の仕事師トミー・デナンダー(Tommy Denander)が組んだAORプロジェクトです。このアルバムで初めてルッピの歌を聴いたのですが、その驚異的な声と歌唱力に一発で参りました!ベルベットのように柔らかで力強い声質、圧倒的な声量、細くならずにどこまでも伸びるハイトーンは、HR/HMの世界で文句なく最高クラスのものだと思います。このアルバムはリチャード・マークス(Richard Marx)をはじめとしたAORのカバーという企画物ですので、バラード中心で曲調やテンポのバリエーションが乏しいのはいたし方ありません。それが苦にならない方であれば、表現力豊かな歌い手が心地良い旋律を歌うのを聴くという、当たり前の音楽の快楽を、心行くまで味わうことができると思います。

トミー・デナンダー以外の参加ミュージシャンでは、Angel、Giuffria、House of Lordsのグレッグ・ジェフリア(Gregg Giuffria)が目を引きます。プロデューサー兼ベースのファブリツィオ・グロッシ(Fabrizio Grossi)、この人もメロハー/AOR界隈ではよく見かける仕事人です。たとえばIndigo Dyingの1stアルバムではベースを担当。このアルバムには、本作に参加しているトミー・デナンダー、ジェイミー・テラモ(Jamie Teramo)、モルディ・ハウザー(Mordi Hauser)もクレジットされています。また、Ambitionの1stアルバムにもトミー・デナンダーと共に関わっています。ジョン・サイクスと間違えそうなジョーイ・サイクス(Joey Sykes)ですが、この人はHugoのTime on Earthでもギターを弾いています。

ライナーを見ると、レコーディングはアメリカ、スウェーデン、イタリア三ヶ国(ニューヨーク、ストックホルム、ロサンゼルス、モデナ)で行われています。おそらくこういったプロジェクトは、ミュージシャンがそろってセッションを行うのではなく、パートごとに録音されたものをミックスしているのでしょうね。マスターはDennis Wardとクレジットされていますが、おそらくPink Cream 69のあのデニス・ワードだと思われます。リリースはイタリアのメロハー/AOR専門レーベルFrontiers Recordsで、このアルバムのエグゼクティブ・プロデューサーのセラフィーノ・ペルジーノ(Serafino Perugino)はFrontiersの社長さんです。この人の仕掛けで、ファブリツィオ・グロッシがレコーディング実務を取り仕切ってオケを作り、ミケーレ・ルッピに歌わせるという、Frontiersお得意の企画ものの一つということになります。

以下、自分自身の備忘録を兼ねて、カバー曲の概要をまとめて記しておきます。雰囲気がそれぞれ違うオリジナル曲が、本作では見事にルッピのレパートリーとして統一感ある仕上がりになっているのにはつくづく感心します。

01. I Will Carry You
TV番組「アメリカン・アイドル」出身の歌手Clay Aikenのデビュー・アルバム、Measure of a Man (2003)より。プロの作家チームの手による曲。なお、このアルバムはビルボードのチャート1位、トリプル・プラチナを獲得している。
 youtubeのClay Aikenオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=AJVvnQXhHpI&feature=related
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=Afy9fbfQYhU
02. I Must Be Blind
その筋では有名なセッション・ドラマーJohn RobinsonとAOR系ボーカリストMark Williamsonによるユニット、Bridge 2 FarのアルバムBridge 2 Far (1989)より。
 youtubeのBridge 2 Farオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=8fzWe1oeWHM
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=ELSWDIYwu5Q&feature=related
03. Thanks to You
AOR系シンガー・ソングライターとして著名なRichard Marxの作品。1999年に日本向けに再編集されたGreatest Hits にのみ収録されている曲。
 youtubeのRichard Marxオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=-1F2_YyoEpY
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=mMPTiQM4WYE
04. Edge of Forever
Richard MarxのアルバムDays in Avalon (2000)より。オリジナルは共作者のRichell "Chely" Wrightとのデュエット。
 youtubeのRichard Marxオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=KPZLTu6brHc
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=CcWXCQc_oEs
05. Last Chance
Night RangerのアルバムFeeding off the Mojo (1995)より。
 youtubeのNight Rangerオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=5rXWAEsnFNM
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=jJQ5ontz1jc
06. Run
クリスチャン・ロック・グループSelahのボーカリストTodd Smithのソロ・アルバムAlive (2004)より。
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=k5KHj3q5U8g
07. When You Think of Me
カントリー・シンガーMark Willsのシングル曲(2003)。
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=p7ulPGItAbQ
08. One More Try
Richard MarxのアルバムPaid Vacation (1994)より。
 youtubeのRichard Marxオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=ZvFUKkuuMEM
09. The Other Side
Richard MarxのアルバムMy Own Best Enemy (2004)より。
 youtubeのRichard Marxオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=6mm8imUgwYs
10. Caroline
クリスチャン・ロック・グループSeventh Day SlumberのアルバムOnce Upon a Shattered Life (2005)より。
 youtubeのSeventh Day Slumberオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=mCMgUtE56dw
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=WgoH7asfbVo&feature=related
11. Measure of Man
1曲目と同じくClay AikenのMeasure of a Man (2003)より。イギリスのシンガー・ソングライターCathy Dennisの作品。
 youtubeのClay Aikenオリジナル・バージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=DSzQIOSnUtA&feature=related
 youtubeのLos Angelesバージョン
  http://www.youtube.com/watch?v=2n8NjsaRPxY

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. I Will Carry You (Lindy Robbins, Dennis Matkosky, Jess Cates)
02. I Must Be Blind (Mark Williamson, Chris Eaton)
03. Thanks to You (Richard Marx)
04. Edge of Forever (Richard Marx, Richell Wright)
05. Last Chance (Brad Gillis, Kelly Keagy, Gary Moon, Jeff Paris)
06. Run (Chris Eaton, Todd Smith)
07. When You Think of Me (Brett James, Thomas Verges)
08. One More Try (Richard Marx, Bruce Gaitsch)
09. The Other Side (Richard Marx)
10. Caroline (Joseph Rojas)
11. Measure of Man (Steve Morales, Cathy Dennis, David Siege)

■Personnel
Michele Luppi – vocals
Frankie De Grasso – drums
Fabrizio Grossi – bass
Tommy Denander – guitars
Gregg Giuffria – keyboards
Jamie Teramo – keyboards

Mordi Hauser – Additional guitars
Joey Sykes – Additional guitars

Producer - Fabrizio Grossi
Executive Producer - Serafino Perugino
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