メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。

クリス・オーヴァーランド

Tough It Out / FM (1989)

0053Tough It Out

イギリスのメロディアスハード・バンドFMの1989年リリースの2作目。1stアルバムIndiscreet の延長線上のサウンドで、いかにも80年代らしい都会的なメロハー/AORに仕上がっています。プロデューサーには、ホール&オーツやドッケンなど数多くのアルバム制作で実績のあるニール・カーノン(Neil Kernon)を起用。また、数々のヒット曲を生み出してきたデスモンド・チャイルド(Desmond Child)を曲作りに関与させるなど、レーベルのやる気(売る気)満々な様子が窺えます。その甲斐あって、1st以上に充実した楽曲と演奏は、何度聴いても飽きるということがありません。スティーヴ・オーヴァーランドのソウルフルな歌唱はますます旨味を増し、マーヴ・ゴールズワーシー&ピート・ジャップのコンビは相変わらず心地よいグルーヴを生み出しています。クリス・オーヴァーランドの歌心を感じさせるギターも健在です。ディジ・ディジタルのキーボードも、出しゃばり過ぎず曲に彩りを添えていて好感が持てます。初期FMの中では文句なく最高の出来ではないでしょうか。バッキング・ボーカルに、ストレンジウェイズ、ジャイアントなどで知られるテリー・ブロックと、女性メロハー・ボーカリストの第一人者ロビン・ベックが参加しているのもうれしいです。

#4"Someday (You'll Come Running)"は、ジュディス・ランドールとロビン・ ランドール (Judithe & Robin Randall)という珍しい母娘ライターコンビと、"Island Nights"で有名なAOR系シンガー・ソングライター、トニー・シュート(Tony Sciuto)の作品。アメリカのメロハー・バンドAirkraftのアルバムIn The Red (1991)や、元King Kobra、Signal、現Unruly Childのマーク・フーリー(Mark Free)のソロアルバムLong Way from Love (1993)でも取り上げられています(このアルバムは全曲 ランドール 母娘が書いています)。さらに、ロビン・ ランドール が、自身のグループVenus & MarsのGrand Trine (1994)でセルフカバーしています。それから、#5"Everytime I Think of You"は、Mr. Bigのエリック・マーティン(Eric Martin)のソロ・アルバムI'm Only Fooling Myself (1987)に収録されていた曲。同一曲を複数のアーティストのバージョンで聴き比べると、アレンジや歌唱の違いにそれぞれの個性が感じられて楽しいものです。

なお、2012年にイギリスの再発レーベルRock Candyより、ボーナス・トラック5曲が追加されたリマスター盤も発売されています。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Tough It Out (S. Overland, C. Overland, J. Harms)
02. Don't Stop (M. Goldsworthy, P. Jupp, D. Digital)
03. Bad Luck (S. Overland, C. Overland, D. Child)
04. Someday (You'll Come Running) (J. Randall, R. Randall, T. Sciuto)
05. Everytime I Think of You (S. Mullen, J. Cesario, G. Jones)
06. Burning My Heart Down (S. Overland, C. Overland, D. Child)
07. The Dream That Died (S. Overland, C. Overland)
08. Obsession (M. Goldsworthy, P. Jupp, D. Digital)
09. Can You Hear Me Calling? (S. Overland, C. Overland)
10. Does It Feel Like Love (S. Overland, C. Overland)
11. Feels So Good (S. Overland, C. Overland)

■Personnel
Steve Overland - Lead & backing vocals, guitar
Merv Goldsworthy - Bass, backing vocals
Pete Jupp - Drums, backing vocals
Chris Overland - Lead guitar
Didge Digital - Keyboards

Terry Brock - Backing vocals
Robin Beck - Backing vocals

Producer - Neil Kernon


Indiscreet / FM (1986)

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イギリスのメロディアス・ハードロック・バンド、FMの1986年リリースの1stアルバム。後年、FMはよりブルージーな方向にシフトしますが、デビュー当時は、多分にアメリカ市場を意識したポップでソウルフルなハードAORともいうべきサウンドを志向しています。結局は路線変更してからのほうがむしろ売れたという皮肉な結果となるわけですが。動画を見ても、音もさることながら、髪型といい服装といい、気恥ずかしくなるほど80年代モロ出しです。まあ、当時流行のありきたりなサウンドと言ってしまえばそれまでですが、スティーヴ・オーヴァーランドの歌の異常な上手さ、リズム隊のセンスの良さ、メロディ・ラインの秀逸さという3つの点で、他の似たようなバンドを遥かに凌駕しています。サウンドの変遷とメンバーチェンジはあっても、スティーヴ・オーヴァーランドとリズム隊のマーヴ・ゴールズワーシー&ピート・ジャップの3人は、不動のラインナップで現在まで続いているのも頷けます。このアルバムもコマーシャルに過ぎるかなという印象はありますが、四半世紀以上過ぎた今でも色褪せず、十分に楽しめる優れた作品であることは間違いありません。

FMの結成の経緯を整理しておくと、元々クリス・オーヴァーランドと弟のスティーヴ・オーヴァーランド、そしてピート・ジャップの3人はWildlifeというバンドのメンバーでした。このWildlifeはChrysalis Recordsと契約し、1980年にアルバムとシングルをリリースしたようですが、泣かず飛ばずでいったん解散します。そしてFree/Bad Companyのドラマーだったサイモン・カークを加えてバンドは組み直され、新生WildlifeはLed ZeppelinのSwansongから1983年にアルバムを1枚リリースしますが結局解散。一方、ピート・ジャップはSamson(Iron Maidenのブルース・ディッキンソンやクライヴ・バーが在籍していたバンド)のメンバーとして活動していましたが、このSamsonも1984年にいったん解散。そして、オーヴァーランド兄弟とピート・ジャップが再合流してFMの結成へと至ります。この新バンド結成にはSamsonのマネージャー、デイヴ・キングが関与しているようで、Samsonのベーシストだったマーヴ・ゴールズワーシーがピート・ジャップとともに参加していること、デイヴ・キングが本アルバムのプロデュースを担当していることからも、その辺りの事情が窺えます。もう一人のメンバー、ディジ・ディジタルことフィル・マンチェスターのキャリアは不明です。

なお、本アルバムの#1"That Girl"の共作者の一人としてクレジットされているアンディ・バーネットはFMの最初期のメンバーで、クリス・オーヴァーランドが脱退した後、ギタリストとしてバンドに再加入することになります。このアンディ・バーネットは、Iron Maidenのエイドリアン・スミスやデイヴ・マーレイが1970年代に在籍したUrchinというバンドにいたことがあり、80年代に入ってからはThe Entire Population of HackneyプロジェクトでIron Maidenのメンバーと共演したり、ASAPでもエイドリアン・スミスと一緒にプレイするなど、何かとIron Maiden人脈に縁のある人です。そんな繋がりからか、"That Girl"はIron Maidenにカバーされています。これがまた、ボーカルがブルース・ディッキンソンだし、モロに「ヘビメタ」で別の曲のようにも聴こえますが、意外にいい感じ。当時のイメージで言えば、軟派なFMの曲を、硬派のIron Maidenがカバーするというのもなんだか面白いです。また、FM、Samson、Iron Maidenという3つのバンドの関係者が様々に絡み合ってきた歴史には興味深いものがあります。

なお、2012年にイギリスの再発レーベルRock Candyより、ボーナス・トラックが追加された2枚組リマスター盤も発売されています。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. That Girl (M. Goldsworthy, P. Jupp, A. Barnett)
02. Other Side of Midnight (M. Goldsworthy, P. Jupp)
03. Love Lies Dying (M. Goldsworthy, S. Overland, P. Jupp, C. Overland, D. Digital)
04. I Belong to the Night (S. Overland, C. Overland)
05. American Girls (S. Overland, C. Overland)
06. Hot Wired (M. Goldsworthy)
07. Face to Face (S. Overland, C. Overland, P. Jupp)
08. Frozen Heart (M. Goldsworthy, S. Overland, P. Jupp, C. Overland, D. Digital)
09. Heart of the Matter (S. Overland, C. Overland)

■Personnel
Steve Overland - Lead vocals, guitar
Merv Goldsworthy - Bass, backing vocals
Pete Jupp - Drums, backing vocals
Chris Overland - Lead guitar
Didge Digital - Keyboards

Producer - FM, Dave King



Wildlife / Wildlife (1983)

0031Wildlife

元フリー、バッド・カンパニーのサイモン・カーク(Dr)が、後にFMを結成するスティーヴ・オーヴァーランド(Vo)とクリス・オーヴァーランド (Gt)、さらにフィル・スーサン(Ba)、マーク・ブーティ(Key)と組んだワイルドライフの唯一のアルバム。プロデュースはバドカンのミック・ラルフス、リリースはレッド・ツェッペリンのSwan Songレーベルからです。フリー、バドカン好きの筆者はサイモン・カークの新バンドと聞いて当時LPを買ったクチですが、これが中々の好盤です。

音のほうは明らかにオーヴァーランド兄弟が主導しているので、バドカンよりFMに近い、メロハー寄りの音です。ボトムの重いFMというイメージでしょうか。 ロックの基本は8ビートですが、サイモン・カークは変な言い方ですがその「基本」の名手です。派手なことは一切せず、やや後ノリ気味に、どっしりしたシンプルな8ビートを叩き続ける。このアルバムでも、シンプルだからこそ、頭でなく体で感じるロック・ミュージックならではグルーヴが生々しく伝わってきます。

スティーヴ・オーヴァーランドのボーカルは、この時点で既に出来上がっています。最初から上手すぎます。ブルースやR&Bからの影響が濃厚な、ソウルフルで渋い歌いまわしは、やややマイルドなポール・ロジャースという感じ。おそらくサイモン・カークがスティーヴ・オーヴァーラ ンドと組んだ理由は、彼がポール・ロジャース・スタイルのシンガーだからでしょう。クリス・オーヴァーランドのギターも、もしかしたら少しポール・コゾフ やミック・ラルフスを意識したのかもしれないと思わせるような、非常にシンプルながら味のあるプレイです。全体として、ゴテゴテしたデコレーションやギミックのない、80年代のハードロックとしては貴重なほど飾り気のないサウンドだと思います。シンプル・イズ・ベスト!

このアルバム1枚を残してバンドは解散、サイモン・カークはポール・ロジャース抜きでのバドカン再開、オーヴァーランド兄弟はFM結成、このころまだ駆け出しだったフィ ル・スーサンは、オジー・オズボーンなど数多くのアーティストとのセッションの仕事へと、メンバーはそれぞれの道を歩んでいくことになります。


評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Somewhere in the Night (Steve Overland, Chris Overland)
02. Just a Friend (Steve Overland, Chris Overland)
03. Surrender (Steve Overland, Chris Overland)
04. Charity (Simon Kirke)
05. One Last Chance (Steve Overland, Chris Overland)
06. Taking a Chance (Steve Overland, Chris Overland)
07. Haven't You Heard the News (Steve Overland, Chris Overland)
08. Midnight Stranger (Steve Overland, Chris Overland)
09. Rock and Roll Dreams (Steve Overland, Chris Overland)
10. Downtown Heartbreak (Steve Overland, Chris Overland)

■Personnel
Simon Kirke - drums, percussion, sax on "Charity"
Chris Overland - lead guitar
Phil Soussan - bass, backing vocals
Mark Booty - keyboards, backing vocals
Steve Overland - lead and backing vocals, guitar

Producer - Mick Ralphs

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