メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。 メロディック・ロックのアルバムをレビューしていくブログです。

イギリス(UK)

Spark to a Flame / Burn (1995)

0483Spark To A Flame









イギリスのハードロック・バンドBurnの2ndアルバム。前作のレビューで「ベタなバンド名とダサいジャケットとは裏腹にこれは中々の好盤」と書きましたが、本作についても全く同様の感想を持ちました。しかし、バンド名は変えようが無いにしても、ジャケットはもうちょっと何とかならないものか。もしかしてわざとやってる?メンバーも1stと変更無く、ジェフ・オグデン(vo)、ラブ・デヴェニー(g)、カール・ビー(ds)、マーク(b)とバーニー(key)のスタックハウス兄弟となっています。

音のほうも相変わらずBon Jovi風の元気でアメリカンなハードロックです。知らずに聴いたらイギリスのバンドとは思わないでしょうね。マイナーなバンドなのに、思い切りアリーナ・ロックやってるのが少しばかり哀しい。ボーカルの人の声質・歌唱スタイルがBon Joviに似ているというのはありますが、いつまでもこれだと二番煎じの印象ばかり残ってしまうので、意識的にBon Joviから離れたほうが良いような気がします。歌も演奏も上手いし曲もいいのに、なんだかもったいないなぁ。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. First Time
02. Workin' Man
03. Like Only a Woman Can
04. Diamonds to Dust
05. Ain't Good for Me
06. Shotgun Justice
07. Over You
08. Down on Love
09. Wanted Man
10. Shake Some Bones
All songs Written by Stackhouse/Ogden/DeVenney/Bee

■Personnel
Jeff Ogden - Vocals
Marc Stackhouse - Bass
Karl Bee - Drums
Barney Stackhouse - Keyboards
Rab DeVenney - Guitars

Producer - Ric Peat


Sanctuary / Praying Mantis (2009)

0479Sanctuary









プレマンことPraying Mantisのオリジナル・スタジオ・アルバムとしては8枚目の作品です。前作 The Journey Goes On から6年のブランクがあり、トロイ兄弟以外のメンバーは一新されました。新メンバーは、マイク・フリーランド(Vo)、アンディ・バージェス(G)、ベンジイ・レイド(Ds)の3人。また、プロデューサーにはFMやSkinなどのアルバム・プロデュースの実績を持つアンディ・ライリーが起用されています。

嬉しいことに、The Journey Goes On に漂っていた行き詰まり感は完全に払拭されて、3rd A Cry for the New World、4th Forever in Time に迫る久々の傑作アルバムとなっています。叙情的なマンティスの持ち味はそのままに、1st Time Tells No Lies を髣髴とさせる若々しく硬質な音が蘇っているのは、トロイ兄弟よりかなり年下であろう新メンバーの参加が効を奏したということでしょう。特にボーカルのマイク・フリーランドがいいですね。ソリッド感のある声質、よく伸びる高域が特徴的で、マンティスのボーカリストとしては今までにないタイプで、とても新鮮に感じます。ドラムのベンジイ・レイドはブルース・ビスランドよりずっとキビキビした叩きっぷりでこれまた好印象です。ギターのアンディ・バージェスは、、、基本ツインリード(懐かしい言葉)でハモりのフレーズを弾いているのでよく分かりません。

"Fly Again!"という叫びから始まる#1"In Time"は、まさに復活の狼煙にふさわしいオープニング曲。ファンにとっては特別な感慨を呼び起こされる名曲でしょう。この曲などに顕著ですが、他のメロディック・ロックのバンドと比べて、Praying Mantisの最も特徴的な点は曲の余韻が残ることだと思っています。他の曲もマンティス節全開で嬉しい限りですが、とりわけ高揚感に満ちた#4"So High"、もの哀しいメロディが心に残る#5"Turn the Tide"などは出色の出来。更に、新メンバーだけで書かれた#7"Threshold of a Dream"はマンティスに新しい魅力を付け加えているし、今までになくポップでAOR風の#10"Highway"も音楽性の幅を広げることに成功しています。音楽性を激変させたり、バラード・バンドになってしまったりして、がっかりさせられるバンドも多い中で、Praying Mantisはアルバムによって多少の出来・不出来はありますが、基本路線はしっかり維持しつつマンネリを回避するという、実は最も難しいことをやっているんじゃないかと思います。いつまでも応援したいバンドです。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. In Time (C. Troy, Freeland)
02. Restless Heart (Freeland, C. & T. Troy, Burgess)
03. Tears in the Rain (C. & T. Troy, Freeland, Burgess)
04. So High (C. & T. Troy, Freeland)
05. Turn the Tide (C. & T. Troy, Burgess, Freeland)
06. Touch the Rainbow (C. Troy)
07. Threshold of a Dream (Burgess, Freeland)
08. Playing God (C. & T. Troy, Burgess)
09. Broken Chains [Bonus Track]  (C. Troy)
10. Highway (Burgess, Freeland, T. Troy)
11. Sanctuary (C. & T. Troy, Burgess)

■Personnel
Mike Freeland - Lead Vocals
Chris Troy - Bass, Vocals, Keyboards
Benjy Reid - Drums, Verse
Andy Burgess - Guitars, Vocals, Keyboards
Tino Troy - Guitars, Vocals, Keyboards

Producer - Andy Reilly, Praying Mantis

サンクチュアリ
プレイング・マンティス
キングレコード
2009-07-23

 

Power / Atlantic (1994)

0478Power









イギリスのメロハー/AORバンドAtlanticの唯一作です。メンバーは8人がクレジットされていますがジャケ写には6人しかいないし、ちょっと調べてみると、演奏陣はスタジオ・ミュージシャン、プロデューサー、ソングライターだったり、ボーカリストはあちこちのバンドで歌ったりソロ・アルバムも出していたりするので、バンドというより本作レコーディングのための一時的なプロジェクトなのかもしれません。何故かトニー・ミルズ(SHY)がバック・ボーカルで参加しているものの詳細は不明です。

さて、ジャケットは悪趣味だし、メンツはどこの誰ともよく分からないにも関わらず、このアルバムはまごうことなき大傑作!いくつかの曲は哀愁メロハー/AORの理想形と言えるような出来栄えです。ボーカルはちょっとハスキーな声でブルージーな歌いまわしをするけど、クドさや泥臭さは無し。演奏も手堅い。そして何より曲がいい。ほぼ全曲を書いた天才的メロディ・メーカーのサイモン・ハリソンという人はいったいどこへ消えてしまったのでしょうか。

全曲が名曲・佳曲レベルですが、特にお気に入りの曲をピックアップしてみます。

01. It's Only Love
1曲目から哀愁度100%のミディアム・バラードの名曲です。ヴァースもサビも大サビもとにかくメロディが素晴らしい。

02. Power Over Me
これだけボーカルのフィル・ベイツが作曲しています。アップ・テンポでやや明るめの曲ですが、サビ・メロはそこはかとない哀愁を感じさせ、これはこれで良い曲だと思います。

05. Can't Hold On
メジャー・キーでアップ・テンポ。スプリングスティーン風な曲をやっている時のボン・ジョビ風な曲。

06. Hands of Fate
これも#1に似通ったミディアム・バラード。サビのメロディが特に良いです。

07. Every Beat of My Heart
これはメジャー・キーのミディアム・バラード。ヴァースもサビも素晴らしい。まさに珠玉のメロディ!

09. Nothing to Lose
またまたミディアム・バラード。ヴァース~サビ~大サビと盛り上がっていくメロディ展開が最高です。

10. Hard to Believe
#1と同路線の哀愁バラード。一度聴いただけで、むせび泣くようなサビメロが心に残ります。#1と並ぶ名曲でしょう。

 評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. It's Only Love (Music : Simon Jewell-Harrison / Lyrics : Phil Bates)
02. Power Over Me (Music & Lyrics : Phil Bates)
03. When the War Is Over (Music & Lyrics : Simon Jewell-Harrison)
04. Bad Blood (Music : Simon Jewell-Harrison / Lyrics : Phil Bates)
05. Can't Hold On (Music : Simon Jewell-Harrison / Lyrics : Jules Benjamin)
06. Hands of Fate (Music : Simon Jewell-Harrison / Lyrics : Phil Bates)
07. Every Beat of My Heart (Music : Simon Jewell-Harrison / Lyrics : Phil Bates)
08. Dangerous Games (Music : Simon Jewell-Harrison / Lyrics : Phil Bates)
09. Nothing to Lose (Music : Simon Jewell-Harrison / Lyrics : Phil Bates)
10. Hard to Believe (Music : Simon Jewell-Harrison / Lyrics : Phil Bates)
[Bonus Track]
11. Heart's on Fire (Music : Simon Jewell-Harrison / Lyrics : Phil Bates)

■Personnel
Simon Harrison - Guitars, Keyboards
Phil Bates - Lead & Backing Vocals, Guitars, Keyboards
Paul Hoare - Bass Guitar
Andy Duncan - Drums
Chris Taylor - Keyboards
Glen Williams - Keyboards
Andy Van Evans - Guitars
Phil Ridden - Live Drums

Tony Mills - Backing Vocals
David Saylor - Backing Vocals
Pete Green - Backing Vocals
Jo Bates - Backing Vocals

Producer - Simon Harrison, Paul Hoare
Co-Producer - Colin Thurston, Phil Bates

POWER
ATLANTIC
ESCAPE MUSIC
2008-08-22


Moving Target / Terraplane (1987)

0472Moving Target









ブリティッシュ・ロック・バンドThunderの前身となるTerraplaneの2ndtアルバム。メンバーは前作と同じくダニー・ボウズ(Vo)、ルーク・モーリー(G)、ハリー・ジェイムズ(Ds)、ニック・リンデン(B)の4人です。

前作は痛快&豪快なロックン・ロール、ハード・ポップ中心のサウンドを聴かせる中々の好アルバムで、2ndもその延長線上の音を期待していたのに、ガックリしてしまいました。ぐっとR&Bよりの楽曲になったのはいいのです。というか、ソウルやR&Bはもともと大好きなんです。ただ、このシンセ・ポップみたいなサウンドが気に入らない。大体メンバーに鍵盤奏者いないじゃないの。シンセ・ポップもテクノ・ポップもYMOも打ち込みリズムもシンセドラムもとにかく嫌い。音の輪郭をぼやけさせる深い残響音もいただけない。いくら流行りの音作りだからといって、それに安直に乗っかりすぎのアルバムです。カルチャー・クラブの曲を書いたりしているフィル・ピケットというプロデューサーがいけなかったのか?繰り返しですが曲はいいのです。同じ曲をアレンジしなおして、チープなシンセサイザーと過剰なリバーブを排除して再録音したら名盤になるかもしれません。当時もアルバムの評判は芳しくなく、結局バンドは解散、より方向性のはっきりしたThunder結成へと繋がっていくことになります。

評価は、曲は★★★★、サウンドは★、間をとって★★★ということにしておきます。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. If That's What It Takes (Morley)
02. Good Thing Going (Morley, Pickett)
03. Promised Land (Morley, Pickett)
04. Moving Target (Morley, Pickett)
05. Hostage to Fortune (Pickett)
06. Heartburn (Hodge, Morley, Pickett)
07. Hearts on Fire (Robertson, Pickett)
08. I Will Come Out Fighting (Morley)
09. Nothing On but the Radio (Robertson, Rutherford)
※オリジナル盤は全9曲収録ですが、1stと2ndをカップリングしたコンピ盤 We Survive: The Anthology では本編は8曲、"If That's What It Takes"はミックス違いの音源がボーナス・トラックとして収録されています。
[We Survive: The Anthology Bonus Tracks]
09. If You Could See Yourself
10. I'm The One (Live)
11. When You're Hot (Live)
12. Living After Dark
13. If That's What It Takes (19th Nervous Breakdance Mix)
14. Drugs
15. A Night of Madness
16. The Good Life

■Personnel
Luke Morley - Guitars
Daniel Bowes - Vocals
Gary James - Drums
Nick Linden - Bass Guitar

Rudy Riviere - Guitars

Producer - Phil Pickett

Moving Target
Terraplane
Epic
1987T

We Survive
Terraplane
Castle
2005-01-24






Phenomena / Phenomena (1985)

0464Phenomena









元Trapeze、Whitesnakeのギタリストのメル・ギャレーの兄弟のトム・ギャレーの主宰するハードロック・プロジェクトの第1作。なんか「天璋院様の御祐筆の妹のお嫁にいった先の~」みたい。それはさておきこのプロジェクト、参加メンバーがとにかく凄いです。いずれもメル・ギャレーと関わりのあるプレイヤー達ですが、ブリティッシュ・ロックの大御所がずらっと揃っています。ボーカルとベースにグレン・ヒューズ、キーボードにリチャード・ベイリー、この二人はTrapezeつながりですね。もう一人のベースはニール・マーレイ、ドラムはコージー・パウエル、こちらはWhitesnakeつながり。他にはBudgieのジョン・トーマス(G)、Colosseum II、Rainbowのドン・エイリー(Key)、MSGのテッド・マッケンナ(Ds)などもクレジットされています。もちろんメル・ギャレー自身もギターを弾いています。

中身のほうは、メンツを見ただけで想像がつくように、伝統的なブリティシュ・ロックそのもの。陰りと湿り気が特徴の曇り空のようなサウンド、爽快感や高揚感とは真逆のすっきりしないメロディが印象的です。そしてグレン・ヒューズの表現力豊かな歌唱はさすがとしか言い様がありません。その一方、ギター・リフでガンガン攻めてくるスタイルではなく、柔らかく包み込むようなキーボードが全面的にフィーチャーされていて、ハードロックとしてはやや物足りなさがあります。コージー・パウエルのプレイも意外におとなしいし、スロー~ミドル・テンポの曲ばかりだし、全体にちょっとマッタリし過ぎかなと感じてしまいました。

なお、この作品はオリジナルLPは全9曲収録ですが、その後各国各レーベルから様々なバージョンのCDが発売されており、ボーナス・トラックの収録が微妙に異なっているのがややこしいところ。2006年英国Escape盤と2017年Wasabiレーベルの日本国内盤には、"Still the Night"の新録音バージョンや1982年当時のリハーサル音源など計5曲がボーナスとして追加収録されていています。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. Kiss of Fire (Lyrics : Tom Galley / Music : Tom Galley, Richard Bailey)
02. Still the Night (Lyrics & Music : Glenn Hughes, Paul Delph, Pat Thrall)
03. Dance With the Devil (Lyrics : Tom Galley / Music : Tom Galley, Richard Bailey, Mel Galley)
04. Phoenix Rising (Lyrics : Tom Galley / Music : Tom Galley, Richard Bailey, Mel Galley)
05. Believe (Lyrics : Tom Galley / Music : Richard Bailey)
06. Who's Watching You (Lyrics : Tom Galley / Music : Tom Galley, Mel Galley)
07. Hell on Wings (Lyrics : Tom Galley / Music : Tom Galley, Richard Bailey, Mel Galley)
08. Twilight Zone (Lyrics : Tom Galley / Music : Tom Galley, Richard Bailey)
09. Phenomena (Lyrics : Tom Galley / Music : Tom Galley, Paul Robbins)
[Bonus Tracks]
10. Still the Night
11. Karma
12. Coming Back Strong
13. Assassins of the Night
14. Phoenix Rising

■Personnel
Glenn Hughes - Lead & Backing Vocals on #1~8, Bass on #2, 6
Neil Willars - Vocals on #5, 9
John Thomas - Guitars on #1, 2, 3, 5, 8
Mel Galley - Guitars on #2, 3, 4, 6, 7, 8
Richard Bailey - Keyboards on #1, 4, 5, 7, 8, 9
Robin Smith -  Keyboards on #2
Don Airey - Keyboards on #6
Neil Murray - Bass on #1, 3, 4, 5, 7, 8
Cozy Powell - Drums on #1, 3, 4, 5, 7, 8
Ted McKenna - Drums on #2, 6

Producer - Tom Galley

フェノメナ
フェノメナ
WASABI RECORDS
2017-05-17





20th Century / Sykes (1997)

0457Twentyth Century









1997年にリリースされたジョン・サイクスのアルバム。Blue Murderから名前を変えたバンドSykesの2ndに相当しますが、実質的にはジョン・サイクスのソロ・アルバムです。Blue Murderの2ndから端緒が見え、前作Out of My Treeで顕著となった60年代ブリティッシュ・ロックへの傾倒は本作でも続いています。ゲイリー・ムーアのブリティッシュ・ブルースや、ジョン・ノーラムの70年代ハードロックもそうですが、何故かある程度の年齢になると、ガキの頃に聴いていた音楽への原点回帰みたいな欲求が高まるのでしょうか。うーん、The WhoやSmall Facesみたいなのも悪くはないんだけれど、できることならBlue Murderの1stの路線で、しかもあれを凌ぐような大傑作を作ってもらいたいというのが本音のところです。

もちろん、ソングライターとしても超一流のジョン・サイクスですから、本作でも駄曲というようなものは1曲もありません。それぞれにメロディも良いし、ロックンロールだけではなくてファンキーだったりジミヘン風だったり曲調のバリエーションも豊かです。加えて、演奏がまた無茶苦茶カッコいい!ジョン・サイクスのソロはフレージングの幅が広がっているような気がするし、マルコ・メンドーサのベースは相変わらず凄すぎます。ドラムは4人が参加していて、メインのサイモン・フィリップスが6曲、ボニー・ボナパートが2曲、トミー・オスティーンとトミー・アルドリッジがそれぞれ1曲叩いています。個人的には、大好きなサイモン・フィリップスのプレイが聴けて大満足です。この人はフュージョン分野でももちろんカッコいいのですが、ハードロックでのドラミングも独特の感覚で素晴らしいです。とりわけラストの#10"Touched by Evil"は、Blue Murderの1stを思わせる重厚なハードロックで、ここでのジョン・サイクス、マルコ・メンドーサ、サイモン・フィリップス、3人のプレイはまさに圧巻。鳥肌が立ちます!

 評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. Look in His Eyes
02. 20th Century Heartache
03. I Get Around
04. 2 Counts
05. Defcon 1
06. System Ain't Workin'
07. The Way You Kiss Me
08. Found What I Needed
09. Cautionary Warning
10. Touched by Evil
All songs written by John Sykes

■Personnel
John Sykes - Guitars, Vocals, Bass on #4
Marco Mendoza - Bass
Simon Phillips - Drums

Tommy O'Steen - Drums on #4
Tommy Aldridge - Drums on #1
Bonnie Bonapart - Drums on #6, #8
Mars Lasar - Keyboards

Producer - John Sykes

20センチュリー
ジョン・サイクス
マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
1997-12-26

 

Black and White / Terraplane (1985)

0453Black And White









ブリティッシュ・ブルースロック・バンドThunderの前身となるTerraplaneの1stアルバムです。Thunderの中核メンバーであるダニー・ボウズ(Vo)、ルーク・モーリー(G)、ハリー・ジェイムズ(Ds)の3人と、ニック・リンデン(B)というラインナップとなっています。

さてこのTerraplaneは後年のThunderとは方向性が違い、ロックン・ロール・スタイルを中心にしたハード・ポップをやっています。ハード・ポップとは言っても、ダニー・ボウズのボーカルは最初から老成しているし、ルーク・モーリーのギターもこれまたいぶし銀の味。なんともブルージーで渋いハード・ポップなんです。インナースリーヴのバンド写真を見ると、髪型も服装もモロ80年代で小っ恥ずかしい限りですが、これは若気の至りということで。楽曲はどれも出来が良く、特にシングル・カットもされた#6"I Survive"はメロディも秀逸、バンド一体となった演奏に勢いがあってさすがの佳曲だと思います。他にも#1"Don't Walk Away"、#2"When You're Hot"、#3"I Can't Live Without Your Love"、#5"You Can't Hurt Me Anymore"、#8"Black and White"、#10"Get Your Face Out of My Dream"といった曲は、エネルギッシュでストレートなサウンドが非常に気持ち良く、聴いているとスカッとします。こういうアップテンポの曲でのハリー・ジェイムズのドラムがまた魅力的。タテノリのビートは躍動感に満ちているし、スネア叩きっぱなしになるフィル・インが思いっきりワクワク感を高めてくれます。また、女性シンガーとのツイン・ボーカルが聴ける#11"Couldn't Handle the Tears"は、ブルージーかつソウルフルな味がThunderを思わせます。それにしても収録曲全部を書いたルーク・モーリーの才能は凄いですね。

アルバムは当初LPでのリリースでしたが、後にボーナス・トラック入りでCD化・再発されています。再発盤もいくつかあって、収録されたボーナス・トラックにも違いがあるようです。また、Terraplaneの残した2枚のアルバムをカップリング、シングルB面などのボーナス・トラックを収録した2枚組コンピ盤We Survive: The Anthologyというのもあって、筆者はこれを入手して聴いています。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. Don't Walk Away
02. When You're Hot
03. I Can't Live Without Your Love
04. Talking to Myself
05. You Can't Hurt Me Anymore
06. I Survive
07. Right Between the Eyes
08. Black and White
09. I'm the One
10. Get Your Face Out of My Dream
11. Couldn't Handle the Tears
[We Survive: The Anthology Bonus Tracks]
12. I Survive (Original Single Version)
13. Gimme the Money
14. Beginning of the End
15. Let the Wheels Go Round
16. All Night & Day (Live)
17. I Survive (You C Factor Mix)
18. Tough Kind of Love
All tracks written by Luke Morley

■Personnel
Luke Morley - Lead and other Guitars
Daniel Bowes - Vocals
Gary James - Drums, Percussion
Nick Linden - Bass Guitar, Piano

Rudy Riviere - Guitar on #4
The Bagel Section - Backing Vocals
Jools Holland - Organ on #9
Luis Jardim - Percussion on #4
Scott Davidson - Piano on #4
Ruby Turner - Additional Vocals on #11

Producer - Liam Henshall

Black & White
Terraplane
Sony
1998-01-23

 

Second Skin / Snakecharmer (2017)

0442Second Skin









ブリティッシュ・ロック歴戦のツワモノ達が結集したバンドSnakecharmerの2ndアルバムです。メンバーは、クリス・ウーズィー(Vo)、ローリー・ワイズフィールド(G)、ニール・マーレイ(B)、アダム・ウェイクマン(Key)、ハリー・ジェイムズ(Ds)は前作と同じ、そしてミッキー・ムーディが抜けて替わりに北アイルランド出身のギタリスト、サイモン・マクブライドが参加しています。

さてこの2ndアルバムも、やはり1st同様にFree、Bad Company、初期Whitesnake、あるいはFM、Thunderといった伝統的なブリティッシュ・ブルース・ロックの系譜に連なるものとなっています。ただ、ミッキー・ムーディがいない影響なのか、1stより若干渋みが抜けてよりメロディアスさが増した印象を受けました。ソングライティングのクレジットを見ても、相対的にローリー・ワイズフィールドの存在感が強まっているようです。考えてみれば彼は英国メロディック・ロックの源流の一つたるWishbone Ash出身なわけで、メロディアス度増強は当然と言えば当然かも知れません。派手さもケレン味もありませんが歌唱も演奏もパーフェクト。ブルージーなメロディアスハード、あるいはメロディアスなブルース・ロックを好む向きには最高の一枚だと思います。

楽曲はどれも素晴らしいのですが、とりわけスロー・ナンバー#7"Fade Away"は鳥肌もの。Freeの"Be My Friend"やBad Company(オリジナルはMott the Hoople)の"Ready for Love"タイプの哀愁溢れるメロディが胸に沁みます。終盤に差し掛かって、クリス・ウーズィーの搾り出すようなボーカルとローリー・ワイズフィールドの泣きのギターが絡み合い響き合う様は、まさしくロックの醍醐味でしょう。Heartlandでは、クリス・ウーズィーとスティーヴ・モリスの間に結局こういう共振は起きなかったんだよなぁ。クリスさん、もうHeartlandやらなくていいからSnakecharmer続けてください!

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. Sounds Like a Plan (Ousey, Wisefield, Wakeman, Murray)
02. That Kind of Love (Ousey, Wisefield)
03. Are You Ready to Fly (Ousey, McBride, Wisefield)
04. Follow Me Under (Ousey, Wisefield)
05. I'll Take You As You Are (Ousey, Wisefield)
06. Hell of a Way to Live (Ousey, Wisefield)
07. Fade Away (Ousey, Wisefield)
08. Dress It Up (Ousey, Wisefield)
09. Punching Above My Weight (Ousey, James)
10. Forgive & Forget (Ousey, Wisefield)
11. Where Do We Go From Here (Ousey, James)
[Bonus Track]
12. On My Way (Ousey, Wisefield)

■Personnel
Chris Ousey - Vocals
Laurie Wisefield - Electric, Acoustic & 12-String Guitars
Simon McBride - Electric Guitar
Adam Wakeman - Hammond Organ, Keyboards
Neil Murray - Bass Guitar
Harry James - Drums

Producer - Gary Stevenson 
セカンド・スキン
スネイク・チャーマー
マーキー・インコーポレイティド
2017-05-24

Far Beyond the World / Ten (2001)

0436Far Beyond The World









ブリティッシュ・ハードロック・バンドTenの6thアルバム。ゲイリー・ヒューズ(vo)、ヴィニー・バーンズ(g)、ジョン・ハリウェル(g)、スティーヴ・マッケンナ(b)、グレッグ・モーガン(ds)という前作と同じメンバーに、新たにポール・ホドソン(key)を加えたラインナップとなっています。

ライナー・ノーツによれば、前作Babylonは欧州ではこれまで以上に売れたものの、日本においてはセールス不振だったようです。やはりパクリ過ぎが影響したのかもしれません。あれを聴いてTenも行き詰まりかと思いましたが、本作は見事な逆転ホームランとも言うべき傑作となりました。ブルージーでありながら泥臭さとは無縁でメロディアスな楽曲、抑え気味の歌唱が逆に内なる憂愁を感じさせるゲイリー・ヒューズのボーカル、対照的にリミッターを外したかのように弾きまくり泣きまくるヴィニー・バーンズのギター、こうしたTenの個性が十二分に発揮されています。不必要な楽曲の長尺化、露骨なパクリという悪癖も封印され、名曲・佳曲が目白押しという極めて高水準のアルバムだと思います。日本盤にはゲイリー・ヒューズ自身による各曲の解説がついており、曲作り・音作りのポイントなども記されていて中々に面白いので、それなども参考にして各曲の感想を書いてみます。

01. Scarlet and the Grey
「モダン」な響きのギターから始まり、明るいのか暗いのかよく分からないヴァース、この上なく爽やかなコーラスと、印象が目まぐるしく変化します。Tenには珍しい曲調で、マンネリ打破のための意欲を感じます。

02. Strange Land
一転してTenサウンドの王道を行く哀愁メロディアスハード。コーラス部分のメロディが特に素晴らしく、本作のハイライトとなる名曲だと思います。

03. What About Me?
Tenお得意のセンチメンタルでロマンチックなバラード。解説でゲイリー・ヒューズ自身が「センチメンタル」という言葉を使っているのが興味深く、こういう曲作りは自覚的なんだと確認できました。

04. Glimmer of Evil
ブルージー&メランコリックなハードロック・ナンバー。これもTenの典型的な曲調ですが、過去の名曲と比べても遜色のない出来です。

05. Last of the Lovers
前曲と同じくブルージーな曲ですが、こちらはぐっと粘っこくヘヴィに仕上がっています。

06. Heart Like a Lion
ヴァース部分はしっとりAOR風で、コーラスはグッとハードになります。憂いを帯びたメロディがゲイリー・ヒューズの歌唱とぴったり。

07. Black Shadows
本作としてはハードなスピード・チューン。コーラスのメロディが非常にキャッチーで印象に残ります。

08. High Tide
畳み掛けるようにタイトなスピード・チューンが続きます。こちらもかなりハードでやはりコーラス部分が素晴らしいです。

09. Far Beyond the World
タイトル・トラックはドラマチックなバラードです。歌詞はずいぶんクサイけれど、ゲイリー・ヒューズが歌うと不思議に嫌味がありません。

10. Who Do You Want to Love?
本作の中ではやや異質なポップ色の強い曲。これも新たな境地を開こうとしている表れと感じました。

11. Outlawed and Notorious
サビのドラマチックなメロディが印象的なスピード・チューン。少しばかりトラッド的なメロディなので、Dareをハードにしてテンポを速くしたような感じもします。

12. The Soldier
日本盤ボーナス・トラック。トラッド風というのか、クラシカルというのか、いかにも英国のバンドらしい陰りとウェットな感性に溢れた曲です。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Personnel
Gary Hughes - vocals
Vinny Burns - guitars
John Halliwell - guitars
Steve McKenna - bass guitar
Paul Hodson - keyboards
Greg Morgan - drums

Producer - Gary Hughes 
All songs written by Gary Hughes

ファー・ビヨンド・ザ・ワールド
テン
マーキー・インコーポレイティド
2016-07-13

 

Walk in the Fire / Strangeways (1989)

0435Walk In The Fire









英国(スコットランド)のメロディアス・ハードロック・バンドStrangewaysの3rdアルバム。ラインナップは前作と同じで、イアン・J・スチュワート(G)とデイヴ・スチュワート(B)兄弟、ジム・ドラモンド(Ds)、テリー・ブロック(Vo)、サポート・メンバーのデイヴ・ムーア(Key)となっています。

アメリカ志向のAORハード路線、煌びやかなキーボード、ソウルフルなボーカル、これらの特徴は前作を踏襲しています。考えてみれば、同時期に世に出た同じブリティッシュ・バンドFMの初期作と共通する要素が多いですね。FMの2ndTough It Outにはテリー・ブロックがバック・ボーカルで参加したりしてますし。しかし、メロディの親しみやすさや曲調のバリエーションの豊富さではFMに軍配を上げざるを得ません。特に本作では、全曲がミディアム・テンポでリズム・パターンも似たり寄ったり、メロディも各曲ごとの個性が乏しく、3~4曲聴くともう飽きてしまいます。おまけに相も変わらず風呂場で録音したようなサウンド・プロダクションなのはいただけません。1st、2ndはともかく、この3rdが出たのは1989年ですよ。「80年代風ゴージャス・サウンド」を好む人には良い音に聴こえるのでしょうが、いい加減勘弁してもらいたいです。一曲一曲はそれなりに佳曲だし、歌唱・演奏もハイ・レベル、なのにアルバム全体の印象はどうにもパッとしません。もったいないです。

なお、筆者の聴いているのは、英国Majestic Rockの2006年リマスター再発盤で、ボーナス・トラックとして2曲のライブ音源が追加収録されています。また、同じく英国Rock Candyの2011年リマスター再発盤のボーナス・トラックは、ライブ音源ではなくデモ音源4曲となっています。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Where are They Now
02. Danger in Your Eyes
03. Love Lies Dying
04. Every Time You Cry
05. Talk to Me
06. Living in the Danger Zone
07. Modern World
08. Into the Night
09. Walk in the Fire
10. After the Hurt Is Gone
[Bonus Tracks]
11. So Far Away (Live)
12. Where Do We Go From Here (Live)
All songs by Ian J. Stewart & Terry Brock
except #4 & #8 by Ian J. Stewart, David Stewart & Terry Brock

■Personnel
Terry Brock - Vocals
Jim Drummond - Drums
David Stewart - Bass
Ian J. Stewart - Guitars

David "Munch" Moore - All Keyboards

Producer - Ian J. Stewart & John Lee

Walk in the Fire
Strangeways
RCA
1990-10-25

 
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