0031Wildlife

元フリー、バッド・カンパニーのサイモン・カーク(Ds)が、後にFMを結成するスティーヴ・オーヴァーランド(Vo)とクリス・オーヴァーランド (Gt)、さらにフィル・スーサン(Ba)、マーク・ブーティ(Key)と組んだワイルドライフの唯一のアルバム。プロデュースはバドカンのミック・ラルフス、リリースはレッド・ツェッペリンのSwan Songレーベルからです。フリー、バドカン好きの筆者はサイモン・カークの新バンドと聞いて当時LPを買ったクチですが、これが中々の好盤です。

音のほうは明らかにオーヴァーランド兄弟が主導しているので、バドカンよりFMに近い、メロハー寄りの音です。ボトムの重いFMというイメージでしょうか。 ロックの基本は8ビートですが、サイモン・カークは変な言い方ですがその「基本」の名手です。派手なことは一切せず、やや後ノリ気味に、どっしりしたシンプルな8ビートを叩き続ける。このアルバムでも、シンプルだからこそ、頭でなく体で感じるロック・ミュージックならではグルーヴが生々しく伝わってきます。

スティーヴ・オーヴァーランドのボーカルは、この時点で既に出来上がっています。最初から上手すぎます。ブルースやR&Bからの影響が濃厚な、ソウルフルで渋い歌いまわしは、やややマイルドなポール・ロジャースという感じ。おそらくサイモン・カークがスティーヴ・オーヴァーラ ンドと組んだ理由は、彼がポール・ロジャース・スタイルのシンガーだからでしょう。クリス・オーヴァーランドのギターも、もしかしたら少しポール・コゾフ やミック・ラルフスを意識したのかもしれないと思わせるような、非常にシンプルながら味のあるプレイです。全体として、ゴテゴテしたデコレーションやギミックのない、80年代のハードロックとしては貴重なほど飾り気のないサウンドだと思います。シンプル・イズ・ベスト!

このアルバム1枚を残してバンドは解散、サイモン・カークはポール・ロジャース抜きでのバドカン再開、オーヴァーランド兄弟はFM結成、このころまだ駆け出しだったフィ ル・スーサンは、オジー・オズボーンなど数多くのアーティストとのセッションの仕事へと、メンバーはそれぞれの道を歩んでいくことになります。


評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
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■Tracks
01. Somewhere in the Night (Steve Overland, Chris Overland)
02. Just a Friend (Steve Overland, Chris Overland)
03. Surrender (Steve Overland, Chris Overland)
04. Charity (Simon Kirke)
05. One Last Chance (Steve Overland, Chris Overland)
06. Taking a Chance (Steve Overland, Chris Overland)
07. Haven't You Heard the News (Steve Overland, Chris Overland)
08. Midnight Stranger (Steve Overland, Chris Overland)
09. Rock and Roll Dreams (Steve Overland, Chris Overland)
10. Downtown Heartbreak (Steve Overland, Chris Overland)

■Personnel
Simon Kirke - drums, percussion, sax on "Charity"
Chris Overland - lead guitar
Phil Soussan - bass, backing vocals
Mark Booty - keyboards, backing vocals
Steve Overland - lead and backing vocals, guitar

Producer - Mick Ralphs