ブリティッシュ・ハードロック・バンドTenの6thアルバム。ゲイリー・ヒューズ(vo)、ヴィニー・バーンズ(g)、ジョン・ハリウェル(g)、スティーヴ・マッケンナ(b)、グレッグ・モーガン(ds)という前作と同じメンバーに、新たにポール・ホドソン(key)を加えたラインナップとなっています。
ライナー・ノーツによれば、前作Babylonは欧州ではこれまで以上に売れたものの、日本においてはセールス不振だったようです。やはりパクリ過ぎが影響したのかもしれません。あれを聴いてTenも行き詰まりかと思いましたが、本作は見事な逆転ホームランとも言うべき傑作となりました。ブルージーでありながら泥臭さとは無縁でメロディアスな楽曲、抑え気味の歌唱が逆に内なる憂愁を感じさせるゲイリー・ヒューズのボーカル、対照的にリミッターを外したかのように弾きまくり泣きまくるヴィニー・バーンズのギター、こうしたTenの個性が十二分に発揮されています。不必要な楽曲の長尺化、露骨なパクリという悪癖も封印され、名曲・佳曲が目白押しという極めて高水準のアルバムだと思います。日本盤にはゲイリー・ヒューズ自身による各曲の解説がついており、曲作り・音作りのポイントなども記されていて中々に面白いので、それなども参考にして各曲の感想を書いてみます。
01. Scarlet and the Grey
「モダン」な響きのギターから始まり、明るいのか暗いのかよく分からないヴァース、この上なく爽やかなコーラスと、印象が目まぐるしく変化します。Tenには珍しい曲調で、マンネリ打破のための意欲を感じます。
02. Strange Land
一転してTenサウンドの王道を行く哀愁メロディアスハード。コーラス部分のメロディが特に素晴らしく、本作のハイライトとなる名曲だと思います。
03. What About Me?
Tenお得意のセンチメンタルでロマンチックなバラード。解説でゲイリー・ヒューズ自身が「センチメンタル」という言葉を使っているのが興味深く、こういう曲作りは自覚的なんだと確認できました。
04. Glimmer of Evil
ブルージー&メランコリックなハードロック・ナンバー。これもTenの典型的な曲調ですが、過去の名曲と比べても遜色のない出来です。
05. Last of the Lovers
前曲と同じくブルージーな曲ですが、こちらはぐっと粘っこくヘヴィに仕上がっています。
06. Heart Like a Lion
ヴァース部分はしっとりAOR風で、コーラスはグッとハードになります。憂いを帯びたメロディがゲイリー・ヒューズの歌唱とぴったり。
07. Black Shadows
本作としてはハードなスピード・チューン。コーラスのメロディが非常にキャッチーで印象に残ります。
08. High Tide
畳み掛けるようにタイトなスピード・チューンが続きます。こちらもかなりハードでやはりコーラス部分が素晴らしいです。
09. Far Beyond the World
タイトル・トラックはドラマチックなバラードです。歌詞はずいぶんクサイけれど、ゲイリー・ヒューズが歌うと不思議に嫌味がありません。
10. Who Do You Want to Love?
本作の中ではやや異質なポップ色の強い曲。これも新たな境地を開こうとしている表れと感じました。
11. Outlawed and Notorious
サビのドラマチックなメロディが印象的なスピード・チューン。少しばかりトラッド的なメロディなので、Dareをハードにしてテンポを速くしたような感じもします。
12. The Soldier
日本盤ボーナス・トラック。トラッド風というのか、クラシカルというのか、いかにも英国のバンドらしい陰りとウェットな感性に溢れた曲です。
評価 ★★★★★
★★★★★ 傑作
★★★★☆ 秀作
★★★☆☆ 佳作
★★☆☆☆ 凡作
★☆☆☆☆ 駄作評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。
■Personnel
Gary Hughes - vocals
Vinny Burns - guitars
John Halliwell - guitars
Steve McKenna - bass guitar
Paul Hodson - keyboards
Greg Morgan - drums
John Halliwell - guitars
Steve McKenna - bass guitar
Paul Hodson - keyboards
Greg Morgan - drums
Producer - Gary Hughes
All songs written by Gary Hughes