メロディアス・ハードロック名盤探訪 別館

哀愁・叙情・爽快...メロハー、AOR、ハード・ポップ、メロディック・メタルの傑作との出会いを求めて。

Clockwise

Naive / Clockwise (1998)

0254Naive










スウェーデンのボーカリスト、ベニー・セーデルベリが主宰するクロックワイズ(Clockwise)の2ndアルバムです。前作Nostalgiaで、「北欧メロディック・メタルの理想像」ともいうべき、リリシズムと透明感に満ちた名曲の数々を披露してファンを泣いて喜ばせたベニー・セーデルベリ。彼がまたまたやってくれました。以前率いていたFortuneが音楽性を急変化させて躓いた、その同じ轍を見事に踏んでいます。このClockwiseでも唐突な路線転換を断行し、そしてズッこけました。2度目の躓きでメゲたのか、ベニーさんは以降シーンから姿を消してしまったようです。

ベニー・セーデルベリについて書くのはこれで最後と思われますので、彼がこれまでに残したアルバムを簡単に振り返っておきます。1992年にリリースされたFortuneのデビュー・アルバムMaking Goldは、愛すべきイモ臭さと瑞々しい叙情性が同居する北欧メタルの典型的サウンドで、日本のメロハー・リスナーに好意的に受け止められました。ところが、1994年の2ndアルバムCalling Spiritsは、(ベニー・セーデルベリの言によれば)プロデュースを担当したブルース・ゴウディのアドバイスによって、当時流行していたダークなグランジ風のサウンドとなり、ファンをドン引きさせてしまいます。第3作目にしてラスト・アルバムとなったLord of Fliesは(ベニー・セーデルベリの言によれば)メロディ重視の路線に戻ったはずでしたが、実際には1stとも2ndとも異なる70年代ハードロックにインスパイアーされたかのような音楽性を示していました。Deep Purple(1期・2期)、Captain Beyond、Hard Stuff、Strayといったバンドを想起させるソリッドでドライなサウンドはそれなりに魅力的でしたが、Making Goldで刷り込まれたバンド・イメージとはかけ離れたものだったため、ファンの支持を取り戻すことはできず、結果としてFortuneは活動停止状態となります。そして心機一転、曲作りからプロデュースまで全てベニー・セーデルベリ自身で手がけ、実質的なソロ作であるClockwise名義の1stアルバムNostalgiaを1997年に発表します。この作品は、Making Goldの叙情的メロディにさらに磨きをかけつつ野暮ったさも残すという、ファンにはまさに堪えられない傑作となりました。そして、本作です。

全面的にフィーチャーされたエレクトーンじみたオルガン音に象徴的ですが、本作は1960年代ロック、特にサイケデリック・ロックを意識したサウンドとなっています。サウンド面だけでなく、メロディ・ラインやハーモニーにもサイケの香りが濃厚です。しかし全体に「なんちゃってサイケ」感が拭えない。同じ人間が作曲し歌っているので、過去作と類似している面は当然ありますが、どう聴いてもMaking GoldNostalgiaの延長線上の音楽ではありません。本作もNostalgia同様、ベニー・セーデルベリが作曲・アレンジ・プロデュースを単独でやりたいようにやっているわけで、それなのにどうしてこうも違う音楽になるのか。せめて、バンド名義とソロ名義に分けて別々の路線でやっていこうと考えないのか。同じ失敗をなんで繰り返すのか。北欧メタルの貴公子ならぬ奇行師と呼びたくなるよ、ベニーさん。

ただし、貶しておいて持ち上げるのも何ですが、ベニー・セーデルベリの意欲というかチャレンジ精神は高く評価したいと思っています。創成期以来すでに数十年が経過したロック・ミュージックにおける、ある時点での特徴的な音楽的イディオムを借用しつつ、独自の音楽を創造していこうとする姿勢は素晴らしいと思うのです。今流行っているもの、1年前に流行ったものに安直に便乗してコロコロ指向を変え、猫も杓子も同じような音楽を漫然とやっているよりよっぽどいい。Fortune時代のLord of Fliesも、出てきた音は異なるものの、本作と共通した企図があったように思います。更に10年、20年と時間が経過した後、未来のリスナーがこのアルバムを「発掘」してどんな評価を下すのか、また、ついに発表されることのなかった"The Tales Of King Solitude"の3:3を想像しながら、ベニーさんにお別れを言うことにしましょう。

※これまで国内盤ライナーノーツに従って、Benny Söderbergを「ベニー・スドベリ」と表記してきましたが、スウェーデン人名Söderbergの一般的カタカナ表記にならって「ベニー・セーデルベリ」に改めます。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Millennium Kick Off
02. Scenario From A Beach
03. Supernatural
04. Castle In The Clouds
05. Missing The Walrus
06. Too Late For Love
07. Forever Blue
08. Number One
09. The Tales Of King Solitude 2:3
All songs written and arranged by Benny Söderberg

■Personnel
Benny Söderberg - vocals, synthesizers
Fredrik Åkesson - electric and acoustic guitars
John Levén - bass
Ian Haugland - drums

Producer – Benny Söderberg

Nostalgia / Clockwise (1997)

0216Nostalgia










スウェーデンのHR/HMバンド、フォーチュンのボーカリストだったベニー・セーデルベリが結成したプロジェクト、クロックワイズのデビュー作です。フォーチュンと言えば、その1stアルバムMaking Gold で日本の北欧メロディック・メタル・ファンの心をがっちり掴んだものの、2ndで音楽性をグランジ風に変化させて失速、いつのまにかシーンから消えたバンドでした。ベニー・セーデルベリはこのクロックワイズで、再びMaking Gold のような叙情的でメロディアスな路線に回帰しています。わざわざ別バンドにせずに、フォーチュンのままでやればいいのにと思いますが、フォーチュン名義では意地でも元の音楽性に戻したくなかったのでしょう。バンドのメンバーはベニー・セーデルベリの他、ギターにグローリーのヤン・グランウィック、リズム・セクションはヨーロッパのジョン・レヴィン(ba)、イアン・ホーグランド(ds)と強力な布陣。特に、ヤン・グランウィックのアグレッシヴでテクニカルなギターは、このアルバムに大きな魅力を付け加えています。なおソング・ライティングは全曲ベニー・セーデルベリで、プロデュースも彼自身が行なっています。

Making Gold の路線に戻ったと書きましたが、本作の楽曲・演奏面での充実振りはそれを更に上回ります。マイナー・キーの曲はクサいほど哀愁たっぷりに、メジャー・キーの曲はあくまで清清しく、そしてアルバム全体に清潔感と透明感が満ち満ちています。やればできるじゃん!これを待ってたんだよ、これを!タイトルも麗しいNostalgia 、邦題に至っては『北欧のノスタルジア』と来たもんだ。美しく神秘的なジャケもサウンドにピッタリ。もしかして、日本のレコード会社が「日本人の考える北欧メタルの理想像」を入れ知恵したのかと勘ぐりたくなるほど、一から十まで絵に描いたような北欧的叙情メタルです。少し上手くなっていたベニーさんのボーカルまで元に戻っているのが笑えます。でも、この野暮ったいボーカルこそ値千金なんですよ、好事家には。

■01. Wings of Joy
煌くキーボードに導かれてスタートする哀愁メロハー。モタモタしたボーカルとドラマチックなギター・ソロの対比が堪りません。
■02. This Blue World
クラシカルで気品溢れる北欧美旋律。本作の中でもトップクラスの楽曲です。ここでもヤン・グランウィックの切れ味鋭いギター・ソロが秀逸。
■03. Traveler
#2に続いての名曲連発です。フォーチュン、クロックワイズを通して、ベニー・セーデルベリのベストの作品の一つでしょう。美しくメランコリックなメロディにただただ溜め息です。
■04. Higher Ground
またまた名曲です。ヘヴィなヴァース部分から解き放たれるように、爽快で高揚感に満ちたコーラスへ、この展開が素晴らしい。
■05. Run the Race
本作中ではメタル色の強いスピード・チューン。クラシカルなギターとキーボードとは対照的に、歌メロはほとんど歌謡曲。日本人直撃だな、こりゃ。
■06. Angel Eyes
「ノスタルジー」という言葉がぴったりなクラシカルなバラードです。やけに暑苦しかったり、大げさだったりし過ぎるアメリカン・ロックのバラードとは全く異なる、冷たく透き通った感覚は北欧ならではのものだと思います。
■07. Changes
これは中森明菜か工藤静香のカバーですか?ってくらいに歌謡曲的。いや~堪りません。絶対日本の歌謡曲研究したでしょ、ベニーさん。ギターはジミヘン+リッチー+ジョージ・リンチって感じで凶暴。
■08. Looking for Love
珍しくハネものです。ややアメリカンで一時期のヨーロッパみたいですが、アルバム中のバリエーションとしては効果的です。
■09. Paradize
ロマンチックなインスト・テーマ、哀愁に満ちた歌メロが印象的。噴出するようなギターのパッセージがものすごくカッコいい。
■10. The Tales of King Solitude 1:3
トラッド・ミュージック的な味わいのある旋律が素晴らしい、エンディングにふさわしいバラード。ベニーさん、ほんとうにいいアルバム残しましたね。ありがとう。

★追記2017年2月
これまで国内盤ライナーノーツに従って、Benny Söderbergを「ベニー・スドベリ」と表記してきましたが、スウェーデン人名Söderbergの一般的カタカナ表記にならって「ベニー・セーデルベリ」に改めます。 

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Personnel
Benny Söderberg - vocals, backing vocals, strings, keyboards
Jan Granwick - electric and acoustic guitars
John Levén -  bass
Ian Haugland - drums

Producer – Benny Söderberg

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