0057Voice Of Reason

1995年にリリースされたハーレム・スキャーレムの3rdアルバム。グランジ、オルタナの隆盛という状況の中、このアルバムはダークでヘヴィな傾向が強まり、発表当時から「問題作」として賛否両論を巻き起こしました。しかし、筆者としてはこのアルバムは2ndのMood Swings の延長線上にあると感じるので、それほどの驚きは感じませんでした。Mood SwingsVoice Of Reason の差より、1stHarem ScaremMood Swings の差のほうが大きいと思うからです。いずれにしても、サウンドは2ndより更にハードでヘヴィとなり、1stにあった親しみやすく快活なメロディはほとんど影をひそめてしまいました。客観的に出来がいいか悪いかは別として、筆者にとってはアルバムごとにつまらなくなってしまいがっかりです。

ハーレム・スキャーレムに限らず、「バンドのやりたい音楽と、ファンの求める音楽との葛藤」などということがよく言われますが、少し首をかしげたくなってしまいます。1990年代の初頭から半ばにかけて、なぜ多くのHR/HM系のバンドが「右へ倣え」したかのようにダークな方向、ヘヴィな方向に行こうとしたのか?皆が皆、本来グランジやオルタナのような音楽ががやりたかったのに、ファンのために無理してHR/HMを、メロハーやハードポップをやっていたのか?そんなことはないでしょう。流行遅れになりたくない、トレンドに乗りたい、つまり今までのリスナーを捨てるリスクを冒してでも、より多くのリスナーが獲得できると見積もって路線を調整したに過ぎないのではないでしょうか。煎じ詰めれば、「バンドのやりたい音楽」=「売れる音楽」ということになってしまう。そういう姿勢こそ、シャレでもなんでもなく「産業ロック」と揶揄されても仕方ない。レコード会社というのは文字通り産業、つまりビジネスですから売れてナンボなのは当たり前。しかし、バンドっていうのは金儲けが目的で音楽を始めたわけではないでしょう?音楽が好きだからやっているんじゃないの?経済的成功というのは後からついてくるもので、自分たちのやりたいように音楽をやるというのがロック・バンドのモチベーションなはずです。当事者にとってみれば、流行に左右されずに自分たちの内から湧き出る音楽だけを追及するというのは、「言うは易く行なうは難し」に違いないでしょう。しかしそれでも、時流に阿ってコロコロとサウンドを変えるというのは見苦しいことだと筆者は思います。ハーレム・スキャーレムの場合、この後更にサウンドが変わり、バンド名まで変えることになります。1stアルバムや、デビュー前のデモ集の音、つまり彼らの原点は、流行に合わせて服を着替えるように脱ぎ捨てられるようなものだったのか。ハーレム・スキャーレムの迷走を振り返るにつけ、複雑な心境で「バンドのやりたい音楽」ということについて考えてしまうのです。

バンド・メンバーは1st、2ndと変わらず、ハリー・ヘス、ピート・レスペランス、マイク・ジオネット、ダレン・スミスの4人です。ソング・ライティングのほとんどと、プロデュース、ミックスはハリー・ヘスとピート・レスペランス。ハリーはエンジニアとしても録音に関与しています。前作までプロデューサーとして関わっていたケヴィン・ドイルは、本作ではアソシエイト・プロダクションとミックスだけでクレジットされています。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Voice Of Reason (H. Hess, P. Lesperance)
02. Blue (H. Hess, P. Lesperance)
03. Warming A Frozen Rose (H. Hess, P. Lesperance)
04. Let It Go (H. Hess, P. Lesperance)
05. And That's All (H. Hess, P. Lesperance)
06. Breathing Sand (H. Hess)
07. Candle (H. Hess, P. Lesperance)
08. The Paint Thins (H. Hess, P. Lesperance)
09. I'll Be Brief (H. Hess, P. Lesperance)
10. Untouched (H. Hess, P. Lesperance)
11. Necessary Evil (H. Hess, P. Lesperance, C. Ward)
12. Candle (Acoustic Version) [bonus track]

■Personnel
Harry Hess - vocals, keyboards
Pete Lesperance - guitar, vocals, keyboards
Mike Gionet - bass, vocals
Darren Smith - drums, vocals

Producer - Harry Hess and Pete Lesperance