0050Survivor

映画「ロッキー3」のテーマ曲"Eye of the Tiger"の大ヒットで世界的に知られることになる、アメリカン・ハードロック・バンド、サヴァイヴァーの1stアルバム。レコーディング・メンバーは、フランキー・サリヴァン(Gt)、デイヴ・ビックラー(Vo, Key)、ジム・ピートリック(Gt, Vo)、ゲイリー・スミス(Ds)、デニス・ジョンソン(Ba)。この段階では、メロディにキラリと光るものはあるものの、全体としてはアメリカに掃いて捨てるほどいるバンドの一つという印象しか持てません。はい、終わり。

というわけにもいかないので、以前から気になっている「伝説」について少し書いてみます。「サヴァイヴァー」というバンド名についてネットなどでよく見かける記述は、一部に細かい差異はありますが、「チェイスというブラス・ロック・バンドの乗った飛行機が墜落しメンバーのほとんどが死亡したが、バス移動をしていたメンバーはたまたま難を逃れ、サヴァイヴァー(生存者)というグループを結成した」というものです。

チェイス(Chase)は1970年代初頭に活動したブラス・ロック・バンドで、3枚のアルバムを残しています。大ヒットした"Get It On" は「黒い炎」という邦題で日本でも有名な曲で、トランペット4本の印象的なフレーズがいまだにテレビなどで使われるのを耳にすることがあります。1974年に飛行機事故でリーダーでトランペット奏者のビル・チェイス(Bill Chase)、キーボードのWally Yohn、ドラムのWalter Clark、ギターのJohn Emmaの4名が亡くなっています。チェイスのボーカルはアルバムごとにチェンジしていますが、ジム・ピートリックは3枚目のアルバムPure Music のうち歌入りの2曲の作曲に関わりボーカルも担当しています。ただし、パーマネントなメンバーだったかどうかは不明です。彼は元々は、1960~70年代にやはりブラスを取り入れたバンドで、"Vehicle"というヒット曲を持つアイズ・オブ・マーチ(Ides of March)のリーダーでした。チェイスとアイズ・オブ・マーチのアルバムのプロデュースは、Bob DestockiとFrank Randという同じ人物が行っているし、同じブラス・ロックというジャンルということもあり、おそらくPure Music のレコーディング以前からの交流があったものと想像できます。筆者は両バンドともリアルタイムで聴いていて、アイズ・オブ・マーチのボーカルがサヴァイヴァーの中心メンバーだと後から知って驚いた記憶があります。

ゲイリー・スミスとデニス・ジョンソンもチェイスのメンバーだった時期があります。Wounded Bird Recordsから再発されたチェイスの3枚のアルバムをまとめたCDによると、1stのChase にジョンソン、2ndのEnnea にはジョンソンとスミスがクレジットされています。ただし、ジム・ピートリックの参加している1974年リリースの3rdPure Music には2人ともクレジットされていません。1974年の時点でジョンソンとスミスはチェイスのメンバーだったのかどうか。事故死したメンバーにドラマーがいることからも、少なくともゲイリー・スミスはこの時点ではバンド・メンバーではなかった可能性が高いと思います。サヴァイヴァー結成以前の1976年のピートリックのソロ・アルバムDon't Fight the Feeling にジョンソンとスミスも参加していることから、チェイスを媒介としてこの3人の交流は早くからあったのではないかと考えるのが自然です。バス移動で飛行機事故死を免れたチェイスのメンバー3人が、奇跡的に生き残ったことにちなんでサヴァイヴァーという名前のバンドを結成したという「伝説」は、ウソとは言わないまでも不正確なのではないかと筆者は考えます。そもそも、一部のメンバーがバス移動していたということ、ピートリック、ジョンソン、スミスの3人が同じバスに乗っていたということに関する確かなソースは今のところ見つけられませんでした。ただし、このアルバムの裏ジャケに飛行機事故を思わせる黒煙の前に立つメンバーの写真があしらわれていることから、チェイスとの関わりが深かったピートリックが、飛行機事故と関連付けてバンド名を決めたのではないかという推測は十分成り立つとは思っています。

最後に、どうでもいい話ですが、ジャケットの軍服姿の女性は、有名になる前のキム・ベイシンガーだそうです。

評価 ★★★☆☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Somewhere in America (Jim Peterik)
02. Can't Getcha Offa My Mind (Jim Peterik, Frankie Sullivan)
03. Let It Be Now (Jim Peterik, Frankie Sullivan)
04. As Soon as Love Finds Me (Jim Peterik, Gary Smith, Dennis Keith Johnson, Frankie Sullivan)
05. Youngblood (Dennis Keith Johnson, Jim Peterik, Frankie Sullivan)
06. Rebel Girl (Jim Peterik, Gary Smith)
07. Love Has Got Me (Jim Peterik)
08. Whole Town's Talkin' (Jim Peterik, Gary Smith, Dennis Keith Johnson, Frankie Sullivan)
09. 20/20 (Jim Peterik, Gary Smith, Dennis Keith Johnson, Frankie Sullivan)
10. Freelance (Dennis Keith Johnson, Jim Peterik, Frankie Sullivan)
11. Nothing Can Shake Me (From Your Love) (Jim Peterik)
12. Whatever It Takes (Jim Peterik, Gary Smith, Dennis Keith Johnson, Frankie Sullivan)

■Personnel
Frankie Sullivan – lead guitar, vocals
Dave Bickler – lead vocals, keyboards
Jim Peterik – guitar, lead vocal on 7
Gary Smith – drums, percussion
Dennis Keith Johnson – bass, moog pedals

Producer - Ron Nevison, Barry Mraz