0049Heartland

英国産メロハー/AORを代表するグループの一つハートランド、そのグループ名を冠し1991年に発表された1stアルバム。このバンドは昔から、人によって評価が二分しているように見えます。特にクリス・ウーズィーのボーカルの好き嫌いが極端に分かれているようです。筆者は好きか嫌いかと言えば好きです。ただし、メロディック・ロックというカテゴリーでこの歌い方はありなのか、その疑問は付きまとっています。歌メロが口ずさめないどころか、下手をすると歌メロが思い出せないような歌いまわしで、「メロディアス」とか「メロディック」とか言えるのか?これって根本問題です。メロハーは、ボーカリストの歌いグセの妙を味わうより、スコア通りのメロディの良さを楽しむというところにポイントがあるわけですから。

メロハー系では、スティーヴ・オーヴァーランドやジョン・ウェイトなどもソウルフルでブルージーですが、クリス・ウーズィーほどにはメロディを崩していない。その場のノリでメロディやリズムを崩して歌うことを「フェイク」といいますが、ジャズはもちろん、ソウルやR&B、ゴスペルなどの世界ではフェイクは当たり前だし、イギリスのロック・シンガーでも黒人音楽の影響を強く受けたいわゆるブルーアイド・ソウル系の人たちも、フェイクの巧みさは感情表現の豊かさとして評価されます。たとえば、ヴァン・モリソン、フランキー・ミラー、ジェス・ローデン、ロバート・パーマー、ミラー・アンダーソン、スティーヴ・マリオットとか。クリス・ウーズィーは、むしろこういうボーカリストの系譜に連なる人なんだろうと思います。だから、メロハーに拘らず、もっとアーシーなサウンドで勝負していたら評価はずいぶん違っていたんじゃないかな。しかし、クリスさんは頑固一徹、今に至るまでハートランドのスタイルは基本的に変わっていません。。。

筆者はハートランドを聴くとき、メロハーという言葉はとりあえず措いておきます。「こんなのメロハーじゃない」と切って捨ててしまうにはあまりにももったいない。一緒に口ずさめなくても、歌い回しが金太郎飴でも、クリス・ウーズィーのエモーショナルなボーカルはほんとに素晴らしい。特にこの1stアルバムでは、クリスの歌が躍動感に溢れています。ゲイリー・シャープのギターの浮遊感も気持ちがいい。更にリズム・セクションが異様に心地よいのも特筆すべき点です。サウンド・プロダクションも秀逸。ステレオというのは原理的には左右(横方向)に音を振り分けているだけなのですが、何故か縦方向にも、奥行き方向にも音の広がりが感じられ、音の中に自分の身を置いているような感覚になります。特にヘッドフォンで聴いたときその印象は顕著です。どうやればこういう音像になるのか技術的なことは全く分かりませんが、屋外で聴くBGMとしても最高の音だと思います。

最後に、レコーディング・メンバーについて。バンドの中心メンバーのクリス・ウーズィーとゲイリー・シャープは、元々モンロー(Monroe)というグループに在籍していましたが、クリス・ウーズィーがジェイソン・ボーナムのヴァージニア・ウルフ(Virginia Wolf)に引き抜かれ、モンローは解体。ヴァージニア・ウルフ解散後、二人が再び組んだのがハートランドというわけです。ベースは元ダーク・ハート(Dark Heart)のフィル・ブラウン。ダーク・ハートにはハートランドとの関係が深いチェンジ・オブ・ハート(Change of Heart)のアラン・クラーク、イアン・シンプソンも在籍したようです。やたら「ハート」が好きな人たちです。キーボードはペンドラゴン(Pendragon)というプログレ・バンド出身のリック・カーター。ドラムはスティーヴ・ギブソンで、このあとずっとハートランドと行動を共にします。

このアルバムは大手レーベルA&Mからリリースされましたが、商業的にはあまり成功せず、バンドはA&Mとの契約を切られる結果となります。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Teach You To Dream
02. Carrie Ann
03. Don't Cast Your Shadow
04. Real World
05. Fight Fire With Fire
06. That Thing
07. Walking On Ice
08. Paper Heart
09. Paradise
10. Promises

All songs composed by Chris Ousey & Gary Sharpe

■Personnel
Chris Ousey - vocals
Gary Sharpe - guitar
Phil Brown - bass
Steve Gibson - drums, percussion
Rik Carter - keyboards

George Deangelis - keyboards
David Hinson - keyboards
Don Snow - piano, backing vocals
Steve Ferrara - drums
Carol Kenyan - backing vocals
Sylvia Mason James  - backing vocals
Paul Moggledon  - backing vocals
Omar Dupree  - backing vocals
Stephen P. Clisby  - backing vocals
Julia Loko  - backing vocals
Jody Pijper  - backing vocals

Producer - Jimbo Barton