0035A Cry for the New World

NWOBHM時代から叙情的サウンドで異彩を放っていたプレイング・マンティスの通算3作目、復活後2作目のスタジオ・オリジナル・アルバム。筆者は、このアルバムからメロハーにのめり込みました。メロハーではいまだにこれを超えるアルバムにめぐり合っていません。とにかく好き過ぎて冷静ではいられない。プレイング・マンティスとしての大傑作であると同時に、メロディアス・ハードロックという分野の中でも名盤中の名盤だと思っています。「メロハーとはメロディなり」。不肖筆者の格言です。失礼。

前作Predator in Disguiseでの失敗をバンド自身も感じたのか、デニス・ストラットン主導のアメリカン・ハードもどきの曲が一掃され、クリス・トロイとティノ・トロイのメロディ、つまりあの伝説のTime Tells No Liesと同じプレイング・マンティス本来のメロディの輝きが甦っています。そしてこのアルバムでは、初めてコリン・ピールという専任ボーカリストがレコーディングに参加しているのが大きな変化でしょう。この人は特別に上手いボーカリストではありませんが、声に透明感・清潔感があり、歌唱にもおかしなクセがないため、マンティスの楽曲にはうってつけです。

1曲目の"Rise Up Again"からいきなり名曲。疾走するメロディに急ブレーキがかかって、サビの"One day, I will rise up again~"というコーラスとともに青空に向かって飛び出す感じが最高です!ブルース・ビスランドのドラムがイマイチな気はしますが、そんなのは小さな こと。歌詞もサウンドもポジティブで、どんなときでも気持ちを明るくしてくれます。マンティスの曲の中で筆者が最も好きな曲です。

2曲目はタイトル曲"A Cry For The New World"、社会的なメッセージが込められた曲ですね。メロディは哀しみを湛えていますが、その底流に希望を感じる。これも名曲です。

3曲目"A Moment In Life"、憂いを帯びたヒラウタと、対照的にポジティブなサビ。コリン・ピールの切ない歌唱がメロディの美しさを際立たせます。今までのようにトロイ兄弟やデニス・ストラットンが歌ったら、こうはいかなかったでしょう。うーん、名曲!

4 曲目"Letting Go"、印象的なツイン・リードによるオープニング、続くヒラウタもいいのですが、いやがうえにも高揚感を盛り上げるブリッジとサビのメロディが特に素晴らしい。トロイ兄弟はコーラスを組み立てるのがほんとに上手いです。ギターソロも極上。曲の中で浮かず、曲を活かすギター・アンサンブル。マンティスには曲芸的ソロはいらないのです。これまた名曲です。

5曲目"One Chance"、この曲も転調がありますが、これがまた上手い。ヘタなバンドは転調が多いと違和感を感じさせることもありますが、マンティスのメロディは流れるように自然です。またまた名曲。

6曲目"Dangerous"、曲を引っ張るギターのリード・メロディが堪りません。サビはメロハー的哀愁を通り越して、「歌謡曲」的ですらありますが、マンティスにかかると名曲と化してしまいます。

7 曲目"Fight To Be Free"、オープニングと中間での、天空に駆け上がっていくようなギター・メロディが素晴らしい!この曲もヒラウタとサビの対比が利いています。とにかくサビのメロディが美し過ぎます。どうしてこんなに魅力的なメロディが書けるんでしょう。間違いなく名曲。

8曲目"Open Your Heart"、哀愁系メロディアス・ハードロック最高峰の一曲。コリン・ピールのボーカルとティノ・トロイのギターが切なく絡み合う終盤は何度聴いても鳥肌が立ってしまいます。これが名曲でなくて何が名曲か。

9 曲目"Dream On"、冒頭のスペイシーなキーボードに続くティノ・トロイ得意のスパニッシュ風ギター、そして憂愁の歌メロが始まり、一気に曲の世界に導かれます。歌詞 はおそらくクリス・トロイが書いているのでしょうが、彼は物語を感じさせる詞を書く才能に長けていますね。詞の世界とメロディがピタリと一致して見事です。名曲決定!

10曲目"Journeyman"。アウトロのインスト曲"The Final Eclipse"と一体化しているので、実質この曲が最終曲。これもクリスの詞で、何十万光年も旅をして来た男が瀕死の地球に帰りつくというSF的テーマ。ドラマチックな歌メロとツイン・ギターが、これぞプレイング・マンティスと納得させてくれる締めくくりの曲です。もちろん名曲。

というわけで、初めてアルバム全曲について書いてしまいましたが、結論として全曲名曲でした!メロハー好きな方で、もしこのアルバムを聴いたことのない方がいらっしゃったら、それはとんでもなく不幸なことです。ぜひ一度聴いてみてください。

な お、"One Chance"にはバーニー・ショウがバッキング・ボーカルでクレジットされています。バーニー・ショウというとユーライア・ヒープでの活動が有名ですが、実は1981年にマンティスに参加していたという経歴があるんですね。また、マンティス解散後の83~84年にかけては、トロイ兄弟と一緒に元アイア ン・メイデンのクライヴ・バーが組んだストレイタスのボーカルも務めていました。そんな縁でこのアルバムに「友情出演」したのでしょう。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Rise Up Again (Jackson, Dangschat, Praying Mantis)
02. A Cry For The New World (Praying Mantis)
03. A Moment In Life (Troy, Troy, Peel)
04. Letting Go (Troy, Troy)
05. One Chance (Troy, Troy, Bisland)
06. Dangerous (Praying Mantis)
07. Fight To Be Free (Troy, Troy)
08. Open Your Heart (Praying Mantis)
09. Dream On (Jackson, Dangschat, Praying Mantis)
10. Journeyman (Troy, Troy, Peel)
11. The Final Eclipse (Troy, Fflounders)

■Personnel
Chris Troy - Bass, Backing Vocals
Dennis Stratton - Lead Guitar, Backing Vocals
Colin Peel - Lead & Backing Vocals
Tino Troy - Lead Guitar, Acoustic Guitar, Keyboards, Backing Vocals
Bruce Bisland - Drums, Backing Vocals

Gary Flounders - Keyboards, Brass Arrangements
Valerie Lee Cowell - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Derek Jeffrey - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Jeff Brown - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Peter Bullick - Backing Vocals on "A Moment In Life"
Bernie Shaw - Backing Vocals on "One Chance"

Producer - Tino Troy & Gary Flounders
Co-Producer - Praying Mantis
Executive Producer - Neal Kay